第3話 笑顔の為に

マズイと思う。

何がマズイって言えば.....今の状況。

神様。アンタという奴は。

俺は思いつつ赤くなりながら汗を吹き出しつつ。

目の前の憂ちゃんを見る。


「.....どうしたんですか?おにーさん?」


「.....いや.....何でもないよ.....うん」


「おにーさん。もしかしてイケナイ事を考えていませんか?うふふ」


「.....」


俺は汗を流しながら憂ちゃんを見る。

そうしていると唇に指を立てて、まあそうですよねぇ。えっちな事を考えてそうですしねぇ。なんたってお姉ちゃんと極秘裏にイチャイチャしていたしぃ?、とニヤッとする憂ちゃん。

その姿を見ながら.....俺はまたかなり赤面する。


「そ、そんなつもりじゃないぞ。俺は」


「どうかなぁ?うふふ。おにーさんの事ですから」


「.....」


俺は苦笑いで憂ちゃんを見る。

ニコッとしながら俺に迫ってくる。

実際これかなりマズイと思うんだけど.....。


結衣が大丈夫って言っていたけど.....だ。

だってこんなに憂ちゃん迫って来ているんだが.....?

すると憂ちゃんがニヤニヤしながら引いた。


「でも安心ですね」


「.....な、何が?」


「結衣の事を見守れますから。こういう感じでいつもです」


「.....そ、そうだね.....」


憂ちゃんはそのまま柔和になる。

食事をとる手が完全に止まる。

そして苦笑いを浮かべながら憂ちゃんを見てみる。

憂ちゃんは食事をとりながらニコッとする。

全く困った子だな.....。


「おにーさん。冷めちゃいますよ。夕食」


「.....冷めちゃいますよ夕食って.....ゴメン。憂ちゃん.....かなり胃痛が.....」


「?.....何故そんな事が起こっているのですか?」


「何故ですかって.....それは.....」


それは分からないんだな。

俺は考えながら額に手を添える。

そして、うーぬ、と悩む。


それから.....静かに箸を置いた。

そうしてから憂ちゃんを真剣な眼差しで見る。

すると憂ちゃんはハッとして胸を隠す様な仕草をした。


「おにーさん.....まさか.....私を襲う気ですか.....?いやーん!!!!!」


「誤解だ!!!!!違う!!!!!」


「じゃあ何ですか?」


「.....憂ちゃん。俺としては君との距離が近すぎる気がする」


「.....?.....それは兄妹として良いんじゃないですか?」


「良くないと思うんだが.....まあそうだな.....うん」


俺としての理想の兄妹図はな。

近過ぎず遠過ぎず、なんだ。

と説明する。

すると?を浮かべていた憂ちゃんが、ニマー、とした。

それから、こんなに近くに襲いやすい少女がいるのに処女を奪う気はないんですね?、と聞いてく.....うぉい!!!!!


「何でいきなりそんなにぶっ飛ぶ!?」


「まあまあ。.....これでも安心しているんですよ」


「.....どういう意味だ?」


「.....私.....前の再婚相手には暴力を受けました。.....だから安心しているんですよ」


「.....え?」


「私、2回目なんです。.....こういう生活。.....だからおにーさんの言葉を聞いて.....心底安心したんです」


俺は!と思ってしまった。

そして複雑そうな顔をする.....憂ちゃん。

俺はその姿を見てから頬を掻いた。

それから味噌汁も生姜焼きもご飯も食事を一気にかきこむ。

そうしてから口をへの字にしてまるでリスの様にした。


「お、おにーさん?!」


「もったいねぇ野郎だな!ソイツ!こんなにも良い義妹なのにな!」


「.....!」


「.....俺が貰いたいぐらいだぞ。何で暴力なんか.....だな」


「.....おにーさん.....」


赤くなる憂ちゃん。

そして喉に詰まらせる俺。

その事に慌てた憂ちゃんがお茶を持ってくる。

それから、クスクス、と憂ちゃんは笑う。

俺はその姿を見てから笑みを浮かべた。


「.....まっっっっったく意味が分からないです。.....でも本当に説得力があった。.....本当におにーさんは面白いですね。.....私のおにーさんに相応しいです」


「.....そうだろ。滅茶苦茶だけどな。すまない」


「.....いえ。.....だから結衣が会いたくなるのかな.....」


「?.....後ろの部分が聞こえないぞ?.....何て言った?」


「聞こえちゃマズイです。.....良いんです。乙女の秘密です」


「えー.....」


何だかはぐらかされた。

曖昧に、うーぬ?、と思いながらクスクスと笑う憂ちゃんを見る。

そしてそのまま、じゃあ食器片付けますね、と憂ちゃんは運び出す。

俺は、あ。手伝うよ、と憂ちゃんを手伝う。

すると憂ちゃんが?を浮かべた。


「.....え?.....おにーさん?手伝ってくれるんですか?」


「?.....それはそうだろ。さっきは忙しかったけど」


「.....前の人はそんな事をしてくれませんでした」


「え?最低だな.....」


「.....おにーさんはやっぱり不思議な人ですね。うふふ」


それから口元に手を添えながら笑う憂ちゃん。

俺はその姿を見ながら頬を掻いた。

そしてふと思う。

そんなのも珍しいとは.....。

再婚相手は最悪な相手だったんだな、と思いながら。

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