第35話 146cmの暴徒
不出の誓い『犯行は146cmの暴徒』
店内に蛍の光が流れるタイミングで、まばらに客足が伸びる店内。
気に留めていなかったが、全体的な客層の身長が低目。
カウンター内で事務処理をしていた店員の英子は「ギョッ!」とする。
ショルダーバッグを抱えた子供達が、防毒マスクを装着して近づいて来るのだ。
摺り足の防毒マスク群は、ショルダーバッグに無作為に書籍を詰め込んで行く。
窃盗目的だと判った途端、なんとかしないと……
店を護る気持ちが芽生えるが、彼等が防毒マスクを装着しているのが
面割れ防止だけでは無いとすると、彼等自身が何かを防ごうとしている?
考える間も無く、顔面に飛んで来る(丸い)何か。
ぶつかると両の眼球に強い刺激を感じた。……催涙ガスだ……。
書籍回収に使用していたショルダーバッグから
何かを取り出す防毒マスク集団。実際、英子は目視出来ていない。
喚き声一つ上げない英子に対して、もう一人の店員の英雄は狼狽し切ってた。
なんなんだこの状況は? 英子ちゃんは何かをぶつけられて目を押さえている。
ここは漢気を出す場面だが、数の暴力になす術無し。
彼も催涙ボールをぶつけられて、視界が滲んだ。
防毒MASK’Sは二人の店員の視界が塞がれたことを受けて、行動の分業。
便利なポケットのように機能するショルダーバッグから
黒いガムテープを取り出して店員の手足をグルグル巻きに。
視界と四肢の自由を奪われた「英子と英雄」=書店員。
おそらく、盗みを働く小さきギャング達は
この時間帯の警備の薄さ、人手の足りなさを理解しての犯行だったのだろう。
彼等は未だ催涙ボール二発と、ガムテープ数メートルしか失っていない。
代わりに店は甚大な被害を被った。
無作為にショルダーバッグに詰めて行ったとしても、
彼等は売ることを主眼としてはいないだろう。
しかしながら、下調べの段階で、欲しい冊子がどの場所にあるか
当たりを付けていたのなら、摺り足しながら品定めする余裕も
リトルギャングの構成員の中には存在し得たかも知れない。
辞書の棚はがらんどうだった。人気コミックスの棚よりも顕著に。
現在、ギャング達の身元を洗っている最中だが、消えた辞書群を見て
進学校に通う男子小学生では? との見方が有力だ。
まさか、この時点(=犯行翌日)で
女子小学生が絡んでいることは誰の考察からも挙がって来なかった。
更に視野を拡げると、中学生の関与と言うことも、
この時は全くのスルーだった。
抜けている、と言うよりは拡大解釈だと言って欲しい。
これからしらみつぶしに事件の細部に当たって行くのだ。
明明書店襲撃事件は大きく採り上げられはしなかったが
小さい町だ。店舗が臨時休業を取ることに多くの疑問がざわついた。
本屋の利益は我々が取り戻す。
しかし、容疑者は全員揃って未成年の確率も。
どうするどうなる、明日の開店、明日の営業。
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