第17話
「そんなことしなくてもいいわよ」
「諦めないでください。お嬢様は何もしていないのでしょう? いつか真実が明らかになりますから」
「真実もなにも、カミリアの暗殺を依頼したのは本当だもの。自業自得で捕まっただけだわ」
そう言うと、今度はサイラスのほうが驚いた顔をした。
目をぱちくりして、理解できないというようにこちらを見ている。
「私のこと信じてくれていたのね。でも、ごめんなさい。私、あなたが思っているよりずっとあさましい人間なの」
サイラスは何も言葉を発しない。これだけはっきり言っても、まだ私の罪を信じきってはいない様子だった。どうしてそんなに私を信用するのだろうと不思議になる。
けれど、やはり理解したら呆れたのだろう。いつも面会時間いっぱいまでいるサイラスは、その日は早めに部屋を後にした。
もう彼が来ることもないだろうなと思った。きっとそのほうがいいのだろう。
投獄された元お嬢様のところになんて頻繁にやって来たら、サイラスまで悪い噂を立てられるかもしれない。これでよかったのだ。
しかし、呆れて面会に来なくなると思ったサイラスは、次の面会日にも時間通りやって来た。
「お嬢様、お久しぶりです。体調はいかがですか?」
「どうして……、もう来ないと思ったのに」
そう言うと、サイラスは寂しげな顔をする。
「やはりご迷惑でしょうか? 毎週お時間を使わせてしまって申し訳ありません」
「私は閉じ込められているだけだから時間を使うも何もないけど、あなたはもっとほかにすることがあるでしょう?」
困惑しながら尋ねると、サイラスは首を横に振る。
「以前も言いましたが、私が来たくて来ているのです。お嬢様が迷惑だと言うのならば控えますが……」
サイラスはそう言いかけ、言葉を止める。そしてかすれた声で言った。
「いいえ、お嬢様が迷惑だと言っても、私があなたに会いたいのです。どうかここに来ることをお許しください」
サイラスの目は真剣だった。私は言葉を返せなくなる。
私が犯人だと言っているのに。私はもう幼い頃のように無邪気で純粋な子ではないのに。誰からも見捨てられた私に、なぜそんな言葉をかけてくれるのだろう。
「……迷惑ではないわ。サイラスの好きにしてちょうだい」
「……! ありがとうございます、お嬢様……!」
素っ気なく言ったのにサイラスは嬉しそうな顔をする。私にはサイラスがそんな反応する意味がわからかった。
けれど心のどこかでは安心していた。
心の底では、私の醜い部分を知られてサイラスにまで見捨てられるのが怖かったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます