遭遇

 ──どうしてこうなった?


 インクブス発見のテレパシーを受信した私は、深夜にも関わらず旧首都圏へと出向いていた。

 発見したインクブスはライカンスロープが14体。

 発見者のカマキリが反射的に捕食した結果、近場のショッピングモールへ逃げ込んだ。

 恐慌に陥って群れが散り散りにならなかっただけ良しとし、私はショッピングモールへと向かった。


 向かったのだが──その道中で思わぬ先客と遭遇したのだ。


「シルバーロータス様とご一緒できるなんて!」


 つい先日、出会ったばかりの蒼いウィッチが私の隣で目を輝かせて歩いている。

 彼女の名は、アズールノヴァ。

 パートナー不在という例外中の例外であり、シルバーロータスこと私のファンというウィッチだ。


「様付けはやめてくれ」

「では、なんとお呼びすれば……」

「そのまま呼べば──」

「それはできません!」


 様付けされるようなウィッチじゃないぞ、私は。

 肩書はナンバー13だが、自信があるのはインクブスを屠った数くらいだ。

 ネームドと呼ばれる強力なインクブスは仕留めたことがない。


〈ウィッチと肩を並べて戦う日が来ようとは……か、感無量です〉


 もしも涙腺があったなら感涙に咽いでいるであろうパートナー。

 ライカンスロープを追跡していたという彼女と出会ってから、ずっとはしゃいでいる。


「か、肩を並べるなんて、そんな!」


 私は別に手の届かないアイドルでも何でもないぞ。

 本当に、どうしてこうなった?

 経緯は分かっている。

 私の見立て通り先日が初戦闘だったアズールノヴァは、旧首都までインクブスを追う行動力の持ち主だった。

 そこで無謀な行動を控えるように促したところ、いつの間にか同行する運びとなっていた。

 意味は分からないな。


〈胸を張ってください、アズールノヴァさん。あなたは立派なウィッチですよ!〉


 この事態を招いた主犯はうきうきで頭が痛くなってきた。

 新米が1人や2人いてもリカバリーできる重量級ファミリア──フタマタクワガタとヒラタクワガタ──を連れてきているが、こいつめ。


〈私が保証します!〉

「不安になるな」

〈な、なぜですか!?〉


 パートナーの情けない声に多少、溜飲が下がる。

 鈴を転がすような声で笑うアズールノヴァは、道路に穿たれたクレーターを軽やかに飛び越えた。

 そして、迂回する気だった私に差し出される細い手。


「どうぞ、シルバーロータス様」


 リードされるのは気恥ずかしいが、他人の善意を蔑ろにはできない。

 意を決して飛ぶと想像より強い力で抱きとめられる。


「ありがとう」

「はい!」


 眩しい笑顔だった。

 こんな場所には不釣り合いなくらいに。

 ウィッチの姿をしている時、ここまで純粋な善意を受けたことがない。

 慣れない感覚だ。


〈照れてますね?〉

「落とすぞ」


 わたわたと慌てて左肩にしがみつくハエトリグモを傍目に、再び足を前へ進める。

 日本国防軍とインクブスが熾烈な戦闘を行った痕跡が数多く残る旧首都圏は酷道しかない。

 世界各地の人口密集地に出現したインクブスの軍勢、これと各国の軍隊は交戦。

 身体能力が人間を上回るインクブスも戦車砲やスマート爆弾を前に消し炭となったが、それは人々の住まう街も破壊した。

 ウィッチが現れる前の話だ。


〈目的地が見えてきました〉

「ああ」


 戦いを前にして緊張感を帯びた声へ変わるパートナーへ頷く。

 酷道に面する件のショッピングモールは大きな破壊を免れて原形を留めていた。

 月光の射し込まない屋内は深い闇が支配し、私の目では見通せない。

 だが、放った斥候はインクブスどもを捉えている。

 問題ない。


「あのっ」

「どうした?」

「私、がんばります!」


 年端もいかない少女が、勇気を振り絞って戦う。

 それが私には、ひどく不健全に思えて仕方ない。

 この世界の常識は、私にとって非常識だ。


「…そんな肩肘を張らなくていい」


 気休めにしかならない台詞を吐きながら、私はシースからククリナイフを抜く。

 振ることはないが、それでも素振りして重心を確かめる。

 これは一種の儀式だ。

 そんなことをしている私の隣で、アズールノヴァは右手を夜空へ伸ばし──


リリース解除!」


 世界の色が反転したかと思えば、ウィッチの右手には当然のように得物が収まっている。

 主の息遣いに合わせて、ぼんやりと蒼く光る鋭い刃。

 その身の丈ほどもあるソードを振り下ろすと燐光が散り、風が頬を撫でる。


〈わぁぁ…〉


 戦闘態勢に入るウィッチ──私もウィッチだが──が見せるマジックに語彙力を失うパートナー。

 アズールノヴァ蒼き新星の名が示すように、蒼い輝きが灰色の旧首都を照らしている。

 隣に私がいると、より輝きが際立つ。


「奇襲は無理か…」

「え?」

「行くぞ」

〈行きましょう!〉


 正面から踏み込んで叩き潰す算段だったのだ。

 問題あるまい。

 1人と2体を引き連れ、閑散としたエントランスへ入る。

 

 見渡す限り広がる闇──踏んだガラス片の砕ける音が反響して聞こえる。


 ショッピングモール内に潜むライカンスロープの位置は斥候のゲジが正確に捕捉していた。

 私たちの接近を察知して店内へと散ったようだが、無意味だ。

 地に足をつき、大気を体で切れば、その微細な振動をゲジは捉える。

 逐一飛んでくるテレパシーに集中すれば、暗闇であってもインクブスは


「来る」

「はい!」


 近づいてくる足音、荒々しい息遣い、風切り音。

 重量級ファミリアの床を踏む硬い音に混じって、かつりとヒールの立てる雅な音。

 左右の闇より現れるライカンスロープ。

 出迎えたのは、大顎と刃だった。


《な、なに──》


 大顎が一息に閉じられ、筋繊維と骨のされる音がエントランスに響き渡る。

 驚愕を滲ませた最期の言葉。

 おそらくはフタマタクワガタを鈍重なファミリアと侮ったのだろうが、見た目より機敏に動く。

 そして、長い大顎はインクブスを容易く両断できる。


〈アズールノヴァさん、お見事です!〉


 体を乗り出すパートナーを左手で支えつつ、転がってきた狼の頭を避ける。

 視線を向けた先では、蒼い燐光の舞う中でソードを振り抜いているアズールノヴァの後ろ姿。

 見事なものだ。

 これが二度目の戦いとは思えない太刀筋だった。

 隣でヒラタクワガタが所在なさげに大顎を開け閉めさせている。


〈む……打って出てくるようです〉

「手間が省けた」


 正面から4体、左右から7体。

 こちらを扇状に囲む形で近づいてくる。

 既に仲間を3体も殺した相手の前に、のこのこ出てくるとは驚いた。

 

《ようやくウィッチが来たか。ニカノルをやった奴では……ないな》


 正面にいるライカンスロープが聞き取り辛い声で喋る。

 体躯は平均的だが、最初に口を開いたところを見るに群れのボスと目星を付ける。

 最優先で潰すのは、こいつだ。

 それで群れは崩壊するだろう。


《蒼いのは及第点といったところか》

《チビは若い奴のに使っていいだろ?》


 並び立つライカンスロープがインクブスお得意の下品な口を披露してくれる。

 相変わらず品性下劣だな。

 思わず溜息が漏れる。


《壊すなよ、ネス──》


 すべて言い切る前に、蒼い燐光が視界の端で舞った。

 次の瞬間、爆発音がショッピングモールを駆け抜け、遅れて粉塵が舞い上がる。

 音源はボスらしきライカンスロープがいた床面。

 突き立っているのは期待の新星、アズールノヴァの得物だった。


〈アズールノヴァさん!?〉


 無言で引き抜かれたソードは蒼い残像を残し、インクブスを追う。

 舞い散る燐光のおかげで軌跡を目で追えるが、その太刀筋は怒り狂ったとしか表現できない苛烈さ。

 並のインクブスならミンチになってる。

 インクブスの低俗な挨拶で頭に血が上ったのか?

 予想外だ。

 もう少し戦力を推し量ってから仕掛けるつもりだったが、予定を繰り上げる。


 手始めに──立ち塞がるライカンスロープどもを処理する。


《お楽しみの邪魔すんなよ、虫けら…》


 吐き捨てるように言い放った品性下劣なライカンスロープ。

 態度も大きいが、体躯も一回り大きく見える。

 それ以外、特筆する点はない。


〈虫けらとは……失礼なインクブスですね〉

「弁えたインクブスがいたか?」


 その仲間が食われたことを忘れる頭に何を期待する?

 そもそもインクブスに礼節など求めていない。

 求めるものがあるとすれば、その体に蓄えたエナくらいだ。


《とっとと潰すか》

「同感だな」


 激しく斬り結んでいるアズールノヴァの実力には舌を巻くが、いつ崩れるか分からない。

 予定を繰り上げて呼び寄せたゲジ7体は、もう目と鼻の先まで来ている。

 しかし、このライカンスロープども。

 狼の頭をしている割に鈍い鼻だ。


《っ!? 背後に──》


 背後から迫るゲジに勘づいた左手側の1体は、突進してきたフタマタクワガタに両断される。


《しまっうわぁぁぁ!》


 長い大顎を避けるも、床に引き倒されて陳列棚の奥へ引きずられていくライカンスロープ。

 ゲジの顎肢に捕まれば、神経毒を注入されて抵抗もままならず捕食される。

 どちらに捕まっても等しく死が与えられるだろう。


《くそが! ウィッチをやるぞ!》

《お、おう!》


 その判断は正しいぞ、ビッグマウス大口叩き

 フードを取り払って、傍らに佇むヒラタクワガタへアイコンタクトを送る。

 獲物をアズールノヴァに斬り捨てられた漆黒のファミリアが動く。


《はっ鈍いんだよ!》


 それを見るなり猛進してきたビッグマウスの繰り出す拳は致死の一撃。

 だが、外骨格を砕くにも、その内を揺らすにも、威力不足だ。


 彼は歯牙にもかけていない──わけではない。


《ネストル、下がれ!》

《──ちっ!》


 開かれた大顎を前に誘われたことを悟り、飛び退くビッグマウス。

 遅れて空間が切り裂かれる。

 獲物が下がるなり即座に突撃し、ヒラタクワガタは間合を詰める。

 その左右へ回り込もうとする2体のライカンスロープ。


《こっちだ!》

《目を狙え!》


 その一切を無視し、眼前の相手を追い立て──勢いを殺さず放たれる大顎のスイングが無作法者を狙う。


《速いっ!?》


 間一髪で後方へ身を投げ、質量攻撃を避けるライカンスロープ。


〈加勢は不要ですね〉


 インクブス3体が徒党を組んでも勝機はない。

 激しいようで冷静に戦いを進める生粋のインファイターに加勢は邪魔でしかないだろう。


「ああ」


 ゆっくりと後退る黒い巨躯。

 間合を仕切り直すような挙動にライカンスロープどもは息継ぎを合わせた。

 合わせて


《フェイント!?》


 刹那、唸るような風切り音が響き──漆黒の大顎はライカンスロープの1体を捕らえていた。


《た、助けてくれ!》


 仲間の声に釣られて不用意に飛び出したライカンスロープ。

 その眼前に飛んできたのは鋼鉄もかくやという漆黒の外骨格だ。

 振り抜かれた大顎の直撃で、くの字に折れた人影が陳列棚に突っ込む。


《この虫けらめがぁ!》

《ぎゃぁあぁぁ──》


 勇ましく吠える狼の眼前で仲間は真っ二つにされた。

 一撃で終われるだけありがたいと思え。


〈また虫けらって言いましたよ、あのインクブス〉


 平静そうで多分に怒気を孕んだ声が左肩から聞こえた。

 ウィッチらしくないマジックを毛嫌いしながら、それで呼び出したファミリアまでは嫌いになれず、むしろ誇りにすら思っている私のパートナー。

 難儀な性格だ、まったく。

 虫けら呼ばわりが不愉快なのは私も同感だが。


「訂正が欲しい相手か?」

〈いいえ、まったく〉


 ぴしゃりと言い切る。

 なら、床にぶち撒けられた血と臓物の仲間に入れてやるとしよう。

 この場で生きているインクブスは、2体だけ。

 ゲジに囲われた一種のリングで、戦意旺盛なヒラタクワガタと相対するビッグマウスと──


《な、なんだ…このエナは!?》


 狼狽えるビッグマウス。

 期待の新星、アズールノヴァとボスらしきライカンスロープとの戦いも佳境を迎えつつあるようだ。

 彼女が迸らせる蒼い燐光の量は、まるで宇治川の蛍火のようになっている。

 あの燐光、マジックの副産物かと思ったが、可視化したエナだ。


「235番を限定解放──イグニッション点火


 囁くような声が耳を撫で、床へ這うように構えられた刃が蒼を超え、銀に輝き出す。

 生物に宿る21グラムの重みから溢れ出たエネルギー、本来は不可視であるはずのエナ。

 それが可視化するということは、相当な濃度で放射されている。


《そのエナ……貴様っ!》


 驚愕を敵愾心で塗り潰したライカンスロープは一陣の風となって突進する。

 それより速く振り抜かれたソード。

 放射されたエナが主の眼前に広がる空間を根こそぎ吹き飛ばす。


 回避不能の光帯に飛び込んだインクブスは──跡形も残らず消滅した。


 可視化するほどの濃度のエナの激流をインクブスに浴びせる。

 高圧洗浄機で豆腐を洗うようなものだ。


「必殺技か」


 そんな呟きは吹き荒れる暴風に飲み込まれる。

 必殺技の余波は凄まじく、ショッピングモール内は巻き上げられた粉塵で何も見えなくなる。

 このタイミングを見逃すインクブスは、いない。


〈こちらへ向かって来ます!〉

「分かってる」


 ファミリアのテレパシーに耳を傾け、それに応える。

 ただ斜め後ろへ3歩下がってへ道を譲ってやるだけでいい。


 瞬く間に肉薄してきたライカンスロープは、間合に入った──舞う粉塵を切り裂き、フタマタクワガタの大顎がインクブスを両断せんと飛び出す。


《ちぃっ!》


 間一髪で拳を繰り出すのを中断し、低姿勢になって大顎から逃れる。

 四足歩行の姿勢でエントランスを飛び出していく様は、ただの狼だった。


〈む……逃げるようですね〉

「どうかな」


 尻尾を巻いて逃げるならポータルへ一直線のはず。

 あのビッグマウスは、わざわざ店外へ飛び出した。まだ戦意は失っていないと見るべきだ。

 月明かりを目指してエントランスより出る。


《満月だったとはな……覚悟はいいか、ウィッチ!》


 駐車場の真ん中に佇む影。

 両手を大きく広げ、天から射す月光を一身に浴びようとしている。

 ライカンスロープと呼ばれる所以、満月の下でエナを活性化させ、自身を強化する。

 それを披露しようというわけだ。


《豪腕のネストルの真価を──》

「いや、終わりだ」


 呆気にとられるビッグマウス。

 その足下には、空から注ぐ月光によって奇妙な影が伸びていた。

 細長い棒と棒を組み合わせたアスレチック遊具のような影。


 ここに逃げ込む前は──


 折れ曲がって交差する2本の照明灯、そこに4本の脚を引っかけ、微動だにしないカマキリ死神

 その存在を認識したビッグマウスは飛び退こうと足を曲げた。

 しかし、それでは遅い。


《ぐぁっ!?》


 私の目では追えない速度で振るわれた前脚は、一瞬で獲物を捕獲した。

 2m近いインクブスを子どものように軽々と持ち上げ、宵闇に染まった眼で無感動に見つめるカマキリ。


《は、離せぇぇ!》


 全身の毛を逆立てたビッグマウスは、でたらめに暴れようとするが逃れられない。

 虫けらと侮った代償は、その身で払え。


 ばきり──狼の牙が可愛く見える顎が断末魔ごと頭を齧った。


 頭を失ったインクブスの体は痙攣していたが、やがて動かなくなる。


〈お疲れ様でした〉

「ああ」


 咀嚼音だけが深夜のゴーストタウンに響き渡る。

 鼻どころか目まで悪かった狼の末路だ。

 見慣れた光景を視界に収めながら、ショッピングモールの床にぶち撒けた元インクブスの処理を考え──


「逃げたライカンスロープはっ……あ」

〈あ……〉


 息を切らして飛び出してきたアズールノヴァは、現在進行形で食事に勤しむカマキリを捉えて固まる。

 今日は同行者がいたことを失念していた。

 こんな食事風景、トラウマものだ。

 しかし、フォローの言葉が思いつかない。


「だ、大丈夫か…?」

「……すごい」


 大丈夫なわけが──なんだって?


「インクブスの逃走を先読みされていたんですね!?」


 ひしと手を掴んで、きらきらと目を輝かせるアズールノヴァ。

 予想外の反応に面食らう。

 いくらファンだと言っても、このスプラッターな光景を許容できるものなのか?

 それに、先読みなんて大層なことはしていない。

 私は堅実な作戦を選んだだけだ。


「そんな大層なものじゃない」


 なんとか手を解かせ、私はショッピングモールの外観へ視線を向ける。

 緑が侵食しつつある壁面や屋根を気ままに闊歩するカマキリ。

 4体。


「初めから包囲させてた」

「あ、そう、だったんですね……」


 初めからと聞いて、驚きの表情を浮かべたかと思うと長い睫毛が伏せられる。

 そこで私は気が付いた。

 具体的な作戦も戦術も彼女に教えていなかった。

 そんなこと考えもしなかった。


 今の今までファミリアと戦ってきて、ウィッチとの連帯など──それは言い訳だ。


 何も聞かされず戦いに飛び込まされるのが、どれだけ不安か私は知っているはずだ。

 今回が二度目の彼女なら猶更だろう。


「すまない」

「い、いえ! 私も1人で突っ走ってしまって……すみませんでした」


 頭を下げると相手も頭を下げて、気まずい空気が流れる。

 どうしろというのだ。

 傍らで月光を浴びる重量級ファミリアは無表情だが、嘆息しているように見えた。


〈そ、それにしてもアズールノヴァさん、見事な太刀筋でしたね!〉


 左肩で溌溂とした声を発したパートナーがちらちらと私を見てくる。

 強引な話題転換を試みようというのだ。

 できるハエトリグモの助け舟、乗らせてもらう。


「そうだな。助かった」


 嘘ではない。

 腕の立つライカンスロープを相手取る手間が省けたのは大きい。

 床下に潜伏させていたケラも、待機していたスズメバチも、どちらも出さずに済んだ。

 私を見る碧眼を真っすぐ見返して、はっきりと言う。

 アズールノヴァは──


「あ…」


 目を見開いてから、頬を微かに染めて破顔した。


「ありがとうございます」


 そんな純粋無垢の眩しい笑顔から逃げるようにフードを被る。

 私にアイドル偶像は到底、無理だ。

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