第11話
そして、とうとうアンソニー・プラロース様をお迎えする日が来ました。
けれどシェルの日課わ変わらない。
当日の早朝も、シェルの一日はジョギングから始まるのだ。
けれど今朝に限って外雨。
「よりによって、雨とか…最低だわ(午後には止めばいいけれど)走れないじゃない」
今日は午後からお客様が来られると言うのに。
シェルは独り言を溢して部屋の窓から雨が降る外を眺める。
うう……外に走りに行けないしどうしょうかしらなんかモヤモヤするし。
朝の日課をこなせないと悩んでいると、【トントン】と軽いノック音と共に扉が開き、執事のネイスとメイドのイデアの二人が部屋に入ってきた。
「おはようございます、お嬢様。お着替え……は済んでいた様ですわね?」
「おはよう、イデア。ええ、着替えは済ませたわ。ネイスもおはよう。今朝は雨ね」
「おはようございますお嬢様。ええその様ですね。ですので、日課のジョギングはお止めになりますよね?」
「そうねぇ…雨が小降りだったら走りたいのだけれど」
「お嬢様、今朝は無理をせずにお願いしますわ!朝食がお済みになられたら、お客様をお迎えするためのご用意が控えて居りますので」
「よ、用意?」
えっ、なにそれ…聞いてもいい?
「ええ、そうです。本日のご予定ですが、まずは…………」
と、ネイスがつらつらと予定を読み上げるけど……
「そう、分かったわ。でもネイス、一から予定を組んでも仕方なくてよ?」
「そうですわ!今日のお客様はシェル様にお会いに来たのですからね!」
ふんす!と意気込むイデアに少し笑ってしまう。
「ですが、お嬢様…はぁ~承知致しました。もう少し緩く致しましょう」
「宜しくね?」
フフフ、そうもっと大雑把で良いのよ、大雑把でね。
話次第では直ぐにお帰り頂くかも知れないのに。
「さあ、お嬢様、こんな馬鹿の予定を等気にせず。お支度しませんと間に合わなくなります!さ、早速湯殿に行きますよ!」
「えっ、ち、ちょっとまって。イデア!これから朝食でしょ!」
「あっ、そうでしたわね。それでしたら早く食堂へ行きませんと!」
「っ!イデア!貴女私に馬鹿とは……」
イデアに怒るネイスだけど、イデアはそんなネイスを無視。私の腕をぐいぐい引っ張っり、食堂へ連行された。
イデアに急かされ朝食を済ませると、そのまま湯殿にポイッとされて、そのまま身体を隅々まで洗われ、それからあちこちに香油を塗られ、マッサージが終わると今度は地獄が………し、死んだ。
***
そして今は、執事の案内リビングに入って来たアンソニー・プラロース様をお迎えしてる。
「やあ、シェル・ガルズ嬢。急な訪問で済まない。あ、これ…その良かったら貰ってくれないか?」
挨拶と共に差し出された大きな花束を見て、心が少し明るく成るのを感じた。
「まあ、綺麗なバラですわ!これを私に?」
「ああ。だが気に入って貰えると嬉しいのだが」
「……アンソニー・プラロース様、綺麗な花をありがとうございます。そして、雨の中ようこそ。お待ちして居りましたわ。さ、どうぞ此方へお掛け下さい」
アンソニー様から大きな花束を受け取り、それをメイドに渡しアンソニー様をリビングの中に招き、お礼とご挨拶してからお互いソファーに座る。
「プラロース様、今日は生憎の雨でしたので、此方のお部屋にご案内させて頂きましたわ。晴れていれよかったのですが」
晴れてれば東屋で、庭を眺めながらお話したかったのですが。
「いえ、お構い無く。私は貴女と話せれば何処でも構いませんよ」
ニコリと、微笑まれじっと私の顔を見て話すプラロース様に私の顔が赤く成るのが分かるのだけれど…
「そ、そうですか。それならば良かったですわ」
「ああ」ニコリ。
「………(ど、どうしましょうか。微笑まれてるけど、話が続かないわ)」
話題もなく、アンソニー様と目が合えばアンソニー様は微笑まれなに?と言うお顔おされてるけど、何か話して欲しい。
「………」ニコリ
話題も見付からず、話が途切れ途切れで話しも続かず沈黙の時間が長い。
そんな中メイドがワゴンを押して部屋に入ってくると、アンソニー様にお茶と茶請けを出して部屋から出ていく。
(イデア……出て行かないで!ネイスは? そう言えば、ネイスはどうしたのよ!二人共、部屋の角に居てよ~)
「ど、どうぞプラロース様。お茶で喉を潤して下さいませ」
「あ、ああ。頂こう………ん?」
な、なに?美味しくない?
えっ、えっ?
「ど、どうか致しまして?」
「い、いや……美味しいお茶だと思ってね」
「それは、ありがとうございます。そのお茶は、我領地で栽培しているお茶を焙煎したものですわ。プラロース様のお口に合った様で嬉しいですわ」
「そ、そうか。ガルズ辺境公の領地でか……」
よ、良かったわ……焦ったわ。
「ええ、お気に召されまして?」
「ああ、そうだね。で、この茶請けは?」
「それではケーキと言いますわ。殿方にお出しするので、少しお砂糖は控えめにしてますが、どうぞ口にしてみて下さいませ。食べ方はこのクリームをケーキに付けて食べて見てください」
アンソニー様にお出ししたのは、シフォンケーキに生クリームとフルーツを添えてですわ。
「…………この白いクリームを付けてか……ん……ほんとだ甘くないね。美味しい」
「ふふ、良かったですわ。お口に合って」
良かったわ口に合った様で。
……それにしても毒味役居なくて良かったのかしら?
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