第10話

一方の公爵家のある一室では?


「父上!」

「なんだね?帰って来てそうそう喧しい。アンソニー落ち着きなさい」

「これは…失礼しました。ですが、父上!」

「はぁ~、一体どうした?お前がそんなに慌てる等…-それに今日は卒業パーティーだったのだろ。まずは祝いの言葉を……おめ……」

「いえ、それはありがとうございます。ですが父上、私はやっと、やっと!あの彼女と話す事が出来たのです」

「……アンソニー何を言ってるのだ?」


 こ奴は何を言ってるのだ?

 あの彼女……とは一体誰の事だ。


「彼女、ですよ!あの辺境伯爵家の!シェル嬢と先ほどの騒ぎの中で、隙を付いて話す事が出来たのです!」


 興奮した様子で、堂々とそう話すアンソニーだが…。


 父親のランバートは、何がなにやら訳が分からないのか、困惑気味でアンソニーの話しを聞くことにした。


 そもそも辺境伯爵家のご令嬢シェル嬢は、第二王子のガラルド殿下と婚約している筈だ。それ故何故そんな話が息子の口から出てくるのだ?

 我が息子は気が触れたのかと心配するのだが………息子の熱量に根負けをして話を聞くことにする。


「父上か困惑されるのも分かります。。ですが、私の話を聞いて下さい」

「アンソニー…そんなに興奮せんでも、まあ、落ち着け!そしてそこに座って先ずは一服だ。ベルマン、アンソニーに茶でも入れてやってくれ」

「フフフ、承知致しました」


 家令のベルマンはにこりと笑ってお茶を入れる。

 そして…数分すると、アンソニーの前に香りの良いお茶が差し出された。


「お坊っちゃま、此方をどうぞ。気持が落ち着きますよ」

「ありがとう……でもベルマン、私はもう子どもではないのだから、お坊っちゃまは止めてくれないか?」

「そうですか?私にとってはお坊っちゃまはお。何時まででも坊っちゃまですが?」

「……はぁ~分かった。でも客人の前では止めてくれ」

「フフフ、承知しました」

「さて、アンソニー。少し落ち着いたかな?」

「え、ああ……父上申し訳ありません。落ち着いて話を出来ます」

「そうか、それならちゃんと話してくれ」

「では、ご説明させてください父上、実は………………………………………………っとこのような事があり、そして私は…………」

「ふむ……そうか。(息子が他の貴族からの縁談を不意にしてのいたのは分かって居ったが。ふむ……辺境伯のご令嬢にか。それに、相手の令嬢はちゃんと王妃教育をされた第二王子の元婚約者か…悪くない。確か…王城での令嬢の噂も悪くは無かったしな。ふふふこれは楽しく為ってきたわい!王族家にはなにも恨みはないが。血が薄くなったとは言え、我が家公爵家も王族に与する家だ、我が家へ嫁いで来るのならなんの問題もない)それで、アンソニー辺境公爵家のご令嬢を我が公爵家に迎え入れたいと申すのだな?」

「ええ、是非!父上了承して頂けないですか?決して悪い話ではないですよね?」

「そうだな……だがアンソニー? それは辺境公爵家の返事次第の事だ。だが、話が進んだのなら、是非我が屋敷へ挨拶に来るように致せよ。ん?」

「そ、それでは父上、シェル嬢の返事次第で私の妻に迎えても?」

「……それは、その辺境公爵家のご令嬢とちゃんと話してからだと言ったろ? それに母上にも話さねば為らんだろ?アンソニー。焦るでない」

「すみません。…そうでした。母上……母上が居りましたね。はぁ~」 

「ま、頑張れよ」 

「そんな父上…冷たい事を言わずに、ご協力して下さいよ」

「ハハハ、検討を祈るぞ!息子よ」


 ハハハこれで我が家も安泰だ。

 暫くは賑やかに為るな。


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