第9話

第二王子への事情聴取の時間はまだ続く。


「ま、どのみち男爵家からも話は聞くとしてだが…さてどうするか」


 国王であるトラジスはこの後のことを考える。


 すると急に妃であるマリールが声を上げた。


「それなら、良い事を思い付いたわ!貴方」

「き、急に声を上げてどうしたマリール」

「フフフ、私思い付いたのよ!」


 な、なにやら私の妃は悪い顔をしておるのだが……まぁ聞くとするか。


「は、母上。どうされましたか?(母上の顔が…何か企でる)」

「ガラルド、その聖女の力を見せ貰うわ」

「はぁ? ルルベルの力をですか?」

「ええ、そうよ? お前なら観てるのでしょ?」

「いいえ?観ては無いです」

「…………み、観てないのか!(こやつは…やはり馬鹿だったのか……)」

「ええ、観てないですが…それが?」

「観てないのに、聖女だと信じたのか?」

「そうですよ? 私はルルベルが聖女であろうか無かろうが構わないのです。ルルベルが本人が、自分は聖女と言うのならそれで良いのです」


 私にはどうでも良いことだしな。

 ルルベルは可愛いからな。


「…………っ!(馬鹿だった…)」 


 トラジスは、息子の馬鹿さ加減に頭言葉を詰まらせた。

 母のマリールも溜め息を漏らす。

が、話を続けた。


「……はぁ……仕方のない。……ならその聖女をここに…。そうねぇ…謁見の間でその聖女とやらの力を見せて貰いましょうよ。それと、ハミルトン男爵夫妻もちゃーんと呼んで見せて貰いましょう?」

「……ふむ……」


 閲覧の間でなぁ……これが妃の言う良い考えと言うことか。


「そ、そんな! 母上、何故ルルベルの力を謁見の間でなどで、ルルベルの力を見せないと為らないのでしょうか?」

「えっ、だってここだと狭いし」


 ニコリと笑って狭いでしょ?と笑ってますが…母上笑って無いです目が怖い!だがここで私は怯む事は出来ない。


「せ、狭いですか?」

「ええそうよ? ああ、どうせなら他の貴族の皆様にも、聖女の力を観ても貰いませんことねぇ?」


 息子のガラルドを睨む。


「母上、それはルルベルを見世物にするお積もりなのですか?」

「あら、彼女は聖女なのでしょ? だったら力を見せて貰うのは当たり前。それに聖女なら、国に貢献して貰うのは当たり前なのよ?」

「当たり前? ルルベルの力を見せるのが?」


 何を勝手な!

 私の……ルルベルは私の妃に成るんだぞ!勝手に何を言ってる!

 そんな事をさせるものか!


「そうだな、それが良いのかも知れんな」


「……良い″かも″とは、なんでしょうか!? ルルベルは私の妃に成るんです。見世物にさせるなんて、酷いではありませんか! それにルルベルの意志は?」

「意志ですか?」

「そんなもの、いま話すことではないな」

「そ、そんな」

「そうねぇ、何せ″あの″卒業パーティーを台無しにした、愚か者たちの″罰″の話をしてるのだもの」

「ば、罰………ですか」

「ええ、そうよ? ガラルドお前はここで話すのは、何の話し合いだと思ってるのかしら? シェルちゃんとの婚約をあの場で破棄等して、彼女を辱しめて置いて、自分は何の罰も受けないとでも思ってるのかしら?」


 甘い考えも大概になさい!と王妃がガラルドに怒鳴る。


「………くっ!」

「そうだな、お前の意見はここでは通らないぞ」

「そうよ、お前は何を勘違いしてるのかしら」

「…先ずは聖女と名乗った令嬢の力を見ないとならん。それから、お前の達の処分だ。なにか勘違いしてないか? ん?」


「そ、そんな……」


 処分てなんだ?

 私は、好きな女と一緒に成りたいだけだ。



 シェルなど、あんな女がどうなっても良いではないか!

 所詮は政略結婚だ。 

 あの女には、まったく愛情も湧かないし唯の強突張りの嫌な女だぞ?

 

 何故俺の意見が通らないのだ!



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