第4話

でもまあ、王妃様との炊き出しも月に二回程度だったら付き合っても良いかな。

(本音は行きたくないけど…)


「分かりましたわ。お母様と王妃様お二人で行う奉仕にはお付き合いします。それから、王都に居るのは!本当に、不本意ですが、お父様にのご命令為らば従いますわ。ですがそれ以外の時間は、口出ししないでくださいませね?」

「ふむ…まあ分かった。それでいいな?」

「ええ、シェルちゃんがここに居るなら文句は無いのよ。私は、シェルちゃんが居ないと寂しいんだもの」


 よし!言質取ったわ!これで文句は言わせない。

 折りを見て町に出て冒険者登録してこよう。

 そして……なんと言っても最初の依頼を受けるお仕事って、お決まりの薬草採取よね。むふふふ。

考えるだけで顔が……

 …あっ!いけないわ気を散らしてはまだお母様とお話し中でした。失礼。


「はぁ…そうですか……。(なんかわざとらしくて…何か企んでませんか?お母様)」

「し、シェル! 兄も寂しいぞ! それにだ、シェルが心配で仕事も手に付かないんだぞ!」


 居たのか…兄よそれはどうかと思うわよ?私の事はどうでも良いので、副隊長様は仕事をしろ。


「お兄様、私にばかり構って居ないで、そろそろお嫁様を探しては如何かしら?」

「むぅ……嫁か…。そうだいっその事!お前が……」

(パン!)と、言う軽い音が……。


 お兄様が馬鹿な事を言う前に、お母様からの鉄拳がお兄様の頭にヒットしたわ。


「痛っ…痛い! 痛いではないですか母上」

「貴方が馬鹿な事を言い掛けたからよ!まったくお前は、子どもの頃からシェルを構い倒して! もう大人なのだから、他のご令嬢にも目を向けなさいな! 本当に情けないわ!」

「そうだぞ?お前はうちの跡取りなんだ! 少しはシェル以外に目を向けなさい」

「父上、母上。お言葉ですが!」

「なんだね?」

「なんですの?」

「おほん! 私はシェルが一番可愛いのです! 今も昔も変わらない! あ~あどうして私はこの家に生まれたのか神よ恨みます。結婚するならば、シェルが良かった!」


 と、気持ちの悪い事を宣う兄。

 私と両親二人も、兄からの気持ちの悪い言葉を聞いて兄を冷たい目で見てから頭を抱えた。


「残念兄の言葉を聞いて白けてしまったわ。お父様、お母様。この話はまだ後ででも良いかしら?」

「そ、そうだな。私も仕事を残して居たんだった。シェル、取りあえず、また今夜にでも続きを話そう」

「ええ、お父様。また夜に」

すっと席を立つとお父様が執事と共に消えて行く。残されたのは兄と母だが……。

「あ!そろそろ、私も王宮に出向かないとクロム君に怒られるな!ワハハハではシェルまた今夜」


 とそそくさと席を立ちサロンから逃げる。

 兄!あんたがこの空気作って置いて、なに逃げるのよ!

 で、最後に残されたのは私と母。


「お、お母様、私もその…」

「あら、シェルちゃんはまだここに居ても良いのではなくて?」

「そ、そうなのですが…その、昨日は疲れて直ぐに眠ってしまって、まだ部屋の片付けが残ってまして。その……」

「あら?部屋の片付け? なんの?」

「なにをと言われると。その、ドレスの整理とかですかね? アハハ」

「……ドレス……そうねぇ…それもあったわね…。(あの辺馬鹿の所為で、シェルのドレスが!!これは絶対に王家に文句を……)」


 と、なにやらぶつぶつと爪を噛んで歯軋りまでしてるお母様が…こ、怖いし。

なにを考えてるのか…き、聞けない。


「そ、それでお母様?」

「あら?何かしら」


 ほっ良かった元のお顔に戻ったわ。


「あのお時間が有るなら、ドレスの処分を手伝って頂けませんか?」


 仕方ないわ!私一人で全部整理しようとは思ってたけれど、母を巻き込みましょう。


「ませんか!なんて他人でもあるましい。シェルちゃん、それなら手伝うわよ? そうねぇ…あのドレスなら、売るよりデザイン変えましょうよ!」


 デザインは変え…いえリペアかしら?


「あ~ドレスを作り変えるのですか?」

「そうよ、元のデザインは取って置いて、回りに付いた飾りを取って、色を変えて付け直すのはどうかしら?」

「…………それは良いですわね?」

「シェルちゃんが良いのなら、早速お針子達を呼びましょうねぇ~(あら?なんか楽しく為って来たわ。いっその事、宝飾も形変えましょうかしらね。フフフ)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る