第10話
陛下達から足早に離れ、父達が待つ会場の外へ出ようと歩き出した所で、見知らぬ男性に腕を取られて「待て」と止められたのだけれど……
その男性を良く見れば卒業生ではあるのよ。
卒業生しかこの会場にはいないし、それを分かる様に生徒にはブルーの花飾りが付けられてる。
男性には胸元に、女性は髪飾りにブルーの花が使われてるしね。
で、私の腕を掴む殿方の……お顔は思い出せない。
……ごめんなさい。
私の長い学生生活では、殿方の友人は作れなかったのよ。
王家の目があったので。
要は、私に悪い虫が付かない様にと王家から監視をされていたって事。
王子がああなのに、私は監視付きってとっても理不尽よね。
以前王妃様に御相談したけど…「それは出来ないわ」と駄目出しされたのは記憶に新しい。
あ、また話が飛んだわね。
えーっと…それでこの方はどちら様でしたかしら?
私この方に何かしたかしら?
「あ、あの………」
「あ、ああ、申し訳ない。腕が痛かったでしょうか? 軽く掴んだ積もりでしたが、貴女のその細腕には痛かったでしょうか? それでしたら申し訳ない」
そう言いって私の腕を離してくれる卒業生の殿方。
で…だれ?
「い、いえ、そんなには。ですが…その貴方は? 失礼ですが、以前お会いしたことが有りまして?」
「いえ、こうして直接言葉を交わしたのは、今が初めてですよ」
「そ、そうでしたか。それで…その私に何かご用でも? 生憎私は、ここから退散しなければ為らないのですが。…その」
チラリと後ろを気にするが…未だ後ろでは騒ぎが聞こえる。
この騒ぎを利用して、外で待つであろう父達の所へ早く戻りたいのだけれど。
「ええ、分かって居ります。一連の騒ぎは観てましたので…その……」
「それでしたら、お分かりかと存じますが………私は急ぎますのでこれで失礼を」
「それは分かって…その…申し訳ないが少し話出来ないですか?」
「い、いえ、私はもうこれで」
な、なに?
そろそろ、離れてくれないかしら?
騒ぎが収まってしまうし、帰りたいのよ。私は殿下に婚約破棄されたばかりなのよ!
「そ、それなら!後で連絡しても?」
「……え、えそれでしたら。ですが、私は貴方のお名前も存じ挙げませんわ」
「……ああ、そうでしたね済まない。私はアンソニー・プラロース。その、プラロース公爵の者です」
「プ、プラロース家って……。そ、そうでしたか、それではご連絡をお待ちしております。では失礼を…」と膝を折り挨拶をしてその場を離れた。
い、一体なんだったのかしら?
私の婚約が破棄されたばかりなのに。
あんな場面を観て私に声を掛けて来るなんて。
度胸はあるけど…物好きなのか馬鹿なのか…分かりませんが。
それとも何か…
まあ、良いわ!それよりお父様達の待つ外へ行かないと!
会場の外へ出るとそこにはお父様達が首を長くして待って居いてくれました。
ウフフ!何故か外に出たとたんに嬉しさが湧き出てくる。
やったわ勝った!
これで断罪イベントはオールクリアよ。
フフフ…これで私は自由だわ!
会場では、未だなにか騒いでる声が聴こえてくるけど…王家の人達も、もう退場されて音楽が流れ始めた雰囲気ね。
私は、お父様とお兄様達が迎えてくれる。そしてお父様達に駆け寄りお父様に抱きついた。
「お父様、私……」
「ああ、分かってるよシェル。全て観ていたからな」
観てたの?何処まで観てたのかしら?
私がここに出てくる時には扉の近くに居なかったのに。
「全く…今回の事は、全てお前から聞かされていて、分かってたとはいえ…腹の立つ」
「お父様、お兄様……そうお怒りに為らなくても。私は大丈夫ですわよ? 陛下も王妃様もお優しい方でしたもの」
「ま、そうだな。だがあの女は許さんぞ? シェル!私の可愛い娘に恥をかかせたのだからな!」
「まあ、お父様ったら怖いわ!仮にもあれは聖女様ですわよ? フフフ」
「まぁ、騙す方が悪いのか、騙される方が悪いのかは分からんがな?」
「ええ、そうですわね?お兄様」
「さて、屋敷に帰るとするか?」
「「そうですね、帰りましょう」ええ、帰りたいわ」
父の掛け声にお兄様と私が返事をすると、会場に待たせて居た馬車に乗り込み屋敷に帰るのだった。
ああ~疲れたわぁ。
お腹空すいたし、お風呂に入りたい。
***
だが…シェルが会場を後にする時の出来事を観ていた人物が居た。
それは会場に居た卒業生、シェルの友人達とこの国の国王とその妃だった。
※※※
これにてシェルの断罪イベントは修了です。
すみませんだらだらと長くて。
……どうにも纏まりが悪くて。
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