第9話

 さぁ、私も帰りましょうか?


 ですが…帰る前に陛下と王妃様には御挨拶をしてからの方が後々良さそうですわね。


 私は騒ぎの中、そっと陛下と王妃様の側に行き話し掛ける。


「あの…陛下、王妃様。本日は誠に……申し訳御座いませんでした」


 やはり私の力では、殿下の暴走は止められませんでしたとペコリと頭を下げる。


「いや、知っていたとは言えなぁ~あれの暴走と身勝手を止められなかった、我々の落ち度故。シェル、君が謝る事ではないぞ? 寧ろ私たちの方が…済まなかったな」

「本当に無理を言ったわね、ごめんなさい。それで、この後はどうしたいのかしら?」

「今なら話を聞こう? こんな、騒がしい中だがな?」

「そ、そうですか? ですが私…寂しいですわ。ラインベルト殿下様とは、より良い関係をと。わたくしそう思って、今まで頑張って来たのですよ。本当に…」


 知ってても、本当に断罪なんてされたくなかったもの。


「ええ、それは知ってるわ。それに良く私達を立ててくれたもの」


 うっ!そんな評価していただけてたのね。

 嬉しいわ!もうそれだけで今までの苦労が報われる気がするわ。

 …殿下とは無理だったけれどね。


「それは……ありがとうございます。そのお言葉が最後に聞けてとても嬉しいですわ。あっ!義父さまにお義母」

「まぁ。最後なんて……」

「でもそうよな、あれでは……。シェルも堪えられまいよな。それなら分かった。あれの宣言通りに、息子との婚約はなかった事にするが良いな。だが…あれが駄目なら…そう!まだ幼いが…三男等が居るぞ、どうだ?」


 どうだって…三男様は確かあの方は少し大人びてて、聡明な方でしたわね?

 まったく、なにを仰ってるのでしょうか?三男様って…止めて下さいまし。

 まあ、陛下はご長男様を王太子に据えてますから、一人減ってもご安心なのでしょうが。


「いえ、あの方にも好い方が御出ででしょう。良いお話だとは思いますが、わたくしはご辞退申し上げますわ。それに年下はちょっと…」

「まあ、それもそうよね?貴方、シェルちゃんに失礼よ!」

「そうか……それは残念だ。良い話だとは思うがな? しかしあやつの事は、本当に本当に良いのかね?」

「ええ、仕方ありませんもの。あの聖女様は、私の婚約者を奪っただけではなく。困った事に私があの方を苛めた等と、嘘をこの場で言い出して騒いで下さいましたから…」

「そ、そんな事を言い出してたのか…」

まあ、白々しいですわね?き開いてた癖に。

「まあ、なんてはしたない。あれが聖女なのかしら? 貴方、教皇に良くお話を伺った方がよろしくてよ?」

「ああ。そうしょう。それに聖女はここに居るのだ、どうせあれは嘘だろうよ…」


 いえ、陛下私は聖女では……まぁそうなのですが…。


「本当に、あんな者に騙されるなんて。あぁ~あ恥ずかしいわ」


 嘆く王妃様には「お気の毒様です」としか言えませんが…。

 ここにはもう、私は居たくはないので…帰ります。


「それでは陛下王妃様、私はここでお暇致しますわ」

「あら、もう帰るのシェルちゃん。寂しいわぁ~。そうだ!この後…そうねぇお着替えして、私のお部屋へいらっしゃいな!」

「いえ、王妃様。私はもう殿下の婚約者ではありませんし、学園は卒業も出来ましたから。王妃様のお誘いは恐れ多いですわ。それではお二方お先に失礼致しますわ。ごきげんよう」

「シェルよ、追って連絡をするのでな。王妃の無理も済まなかった」

「いえ、陛下。陛下からのご連絡、お待ちして居りますわ。それでは、後の事を宜しくお願い致します」


 と頭を下げカーテシーをして、二人に背を向けその場を後にする。


 そして……陛下達から離れてこっそりと会場を後にして、帰ろうかとその場を離れ父達が待つ会場の出入り口に向かい何歩か歩いたその時!


「失礼、シェル・ガルズ辺境伯爵令嬢殿、少し良いだろうか?」


 と私の腕を掴まれ止められたのだった…


 えっと……どちら様でしょうか?



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