第2話

 昨日、一人きりで階段を降りようとして下を向いたとたんに、誰かに背中を押されたのよね……不意打ちだったから防げなかったのよ。

 お陰で私は受け身を取り損ねて、肩と足首を怪我をしたわ。肩を強く打っちゃったし、足首は軽く捻挫してて…今でも痛い。


 誰が階段から私を突き落としたのか分からなかったから、怪我を治さずここまで来たけど…

 ま、十中八九あの女でしょうね。

 ほんとに、意地が悪いのはどちらなのかしら?学園の生徒でも無いのに、学園内をうろちょろ出来るってどうなの?

 はっ!これも殿下や三馬鹿の手引きなのかしら。一歩間違えば私は大怪我をして、この卒業パーティーにも出られなかったかも知れないのに。

 まさかそれが狙いなの?

 ……まさかね。

 いくらお馬鹿といえども、打ち所が悪ければ怪我処か死んでたかも知れないとか考えるわよね?

 軽傷だったから良いものの……。

 こ、怖いわぁ~不法侵入までさせてわざわざ私を探して、階段から突き落としたとか…ほんとに遣ることが犯罪じみてて…泣けてくる。

 それをまるっきり自分が被害者みたいな平気な顔して…人に罪を擦り付けるとか。事の次第によっては投獄されるとかの考えはなかった……無いからやってるんだろうけれど。

 ここまで馬鹿だったとは。

 はぁ~でも、おかしくない?


「私の、意地が悪いですか。私は殿下にその様に思われて居たのですわね? 私は寂しいですわ」


 持っている扇子を口許から上に上げて顔を隠した。


「な、なにを今更! 貴様がルルベルを階段から突き落としたのであろう? それに、こうして目撃者も居るんだぞ! さぁとっととルルベルに謝れ」


 ルルベル、ルルベルと連呼して煩いわね!


「………申し訳有りませんが、それは出来兼ねますわ。ですが、そこの方を御紹介して下さいますか? 私はその方を一切、存じ挙げませんので」

「………な、なにを言ってるのよ!いままで散々私に嫌がらせをしてた癖に、私を知らないなんて! 王子様、私いつもこの人に酷いことをされてたの。それなのに、私を知らないなんてこんな嘘をつくのよ。酷いわよね? みんなもそう思わない?」

「全くだ!」

「私は知ってるのだぞ? 貴様がこのルルベルに嫌がらせをしていたのを!」


 この男、私に対して貴様…呼びを未だ続けますか!殿下が貴様と呼びをするから頭に載ってるのかしら?

 ほぉ~良い度胸してるわ。

 後で絶対なんかしてやる、覚えてなさい!グロース!まあ、それは後でで良いわ。

 今はこっちよね。


「…そうですか。私がこの方に嫌がらせをしたと仰るのですね?」

「ああ、そうだ!貴様がルルベルに散々嫌がらせをしていたのだろ? さあ、謝れ。そうすれば、痛い思いをせずに済む。かも知れんぞ? シェル」


 そう言ってニヤリと笑う私の婚約者。

 ですが…もう婚約者でもないのかしら?

 どこぞの町中で、難癖つけて集ってくるチンピラの様にしか見えないわ…。


「謝れですか。ですが…困ったわねぇ~謝って欲しいのは私の方なのですが。(ま、謝って等くれなくても良いのですがね)私昨日、階段から落ちたのは私ですわ。 そう言えば、そこの方のお名前は……何処かで聞きましたわね? お顔を拝見するのは今日が始めてで……ルルベル? えっと……ルルベル様? ……ああ、最近平民から出てこられたと言う聖女様でしたか? 何方も私にご紹介下さらないから、お顔を見るのは初めてですわね。これは失礼を…」


 失礼と言って軽く頭を下げるだけに、でも本当に知らないのよね…彼女の噂は耳に入っていたけれどね。


 ふん!



****


応援宜しくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る