物語全体を通して、著者の世界観づくりとキャラクターの掘り下げが際立っていた。本編は、銀行強盗から少女を救い「神」と名乗った少年ひょうが自らの力と存在意義に悩む第1章から始まる。覆面の強盗に襲われ、女性を連れ去ろうとした大男を、ひょうが瞬時に凍鶴で切り消し去る場面はスピード感と緊張感に満ちており、読者を一気に引き込む。強盗たちを淡々と処理するひょうの姿には孤高の正義を感じさせるが、師匠やソフロニアとの対話を通じて「悪人だからといって斬り捨てていいのか」と問われ、彼自身も葛藤し始める。
第2章では視点が変わり、貧しい街で暮らす囚人が奉仕作業中に家事現場に遭遇し、煙に巻かれた少女を救出する。火傷と酸欠に耐えながら窓から這い出る描写は臨場感があり、彼を引き止めようとする仲間の思いやりも描かれていて胸を打つ。彼はこの行為で市長エカドルから表彰され、エイミーや家族に感謝されて人生観が変わる。これまで盗みと暴行でしか生き延びられなかった男が、人に感謝されることを初めて経験し、消防士を目指して真面目に生きようと決意する姿が胸熱である。ひょうとは対照的に、悪人でも改心できることを示すエピソードとなっている。
続くひょうの初任務では南米の麻薬栽培地域を舞台に、神の怒りによって畑が焼かれ工場が破壊される事態に対処する。師匠と共に結界を復活させ神罰を止める任務に挑むが、そこで街のトップであるエカドルが麻薬製造の黒幕だったことが明らかになる。神が巨大な姿で現れ「我は神、この地を守る神」と語り住民を地獄に落とそうとするシーンは圧巻で、ひょうがオーラで人々を包み込み、市長に自白を迫るやり取りも緊張感にあふれる。この任務を通じて、ひょうは神と人間の間で苦しむ者を救うという新たな役割を認識し、自分の力を正しく使う道を模索し始める。
物語を追うにつれ、ひょうが怒りと正義の間で揺れながらも成長していく姿が描かれ、彼に関わる人々のドラマも丁寧に綴られている。悪事を働く人間を容赦なく裁く痛快さだけでなく、囚人が感謝を受け改心するエピソードや、神の過剰な裁きに立ち向かう師弟の絆など、人間の弱さと強さの両方が描かれている点に共感した。社会の理不尽や麻薬問題、行政腐敗といった現実的なテーマを取り込みつつ、剣術や結界、神罰といったファンタジックな要素が上手く融合しており、次の章でどんな試練が待ち受けるのかと期待が高まる。
全編を通して、ヒーローとしてのひょうの成長物語と、罪と赦しの物語が交錯している。著者は暴力や苦難を単なる勧善懲悪で終わらせず、登場人物たちが葛藤しながら答えを見つけていく過程を丁寧に描いている。今後の章でひょうがどのように他者と向き合い、神と対峙し、そして自らの正義を確立していくのか楽しみにしている。