第4話 風化した支柱
街を囲んでいる山々の一部から仄かにオーラが漂ってくるのが感じられる。
漂ってくるオーラは街を中心にし、3箇所から感じることができた。
「街は一箇所を除いて全て山に囲まれているって感じでしょうか?山の無い一箇所が街への出入り口って感じですか?何でまたこんなところに街作ったんでしょうね?」
「昔は戦が絶えなかったのだろう。山々に囲まれているこの土地なら、山が自然の要塞となっていて敵の侵入を防いでいたのだろう。まあ今の世となっては山に囲まれているのは不便なだけだろうが、昔は住むのに都合が良かったのだろう」
「それと神の住まう土地とあって何かと加護が受けられていたのかもしれない」
俺の質問に師匠はそんな返しをしてきた。
共存すれば守神となるが怒りに触れてしまうと祟りが起きてしまうってことか。神の住まう土地に住むのは色々制限があって面倒くさそうだな。
「多分出入り口に使っている箇所の両脇に2つとその反対側の奥に1つある感じではないでしょうか?」
「全く察しのいいヤツだな!もう先人のオーラを感知したのか!ワシより早く見つけてどうする。教えることが何も無いではないか」
いや、そんな事言われても、、。
「でも見つけた後どうすれば何も分からないですよ?」
「分からないも何もない。見つけるのが大変なんじゃ。見つけさえすれば後は順を追ってすればいいだけじゃ。じゃあ取り敢えずそこに行ってみるか」
師匠に言われ向かった先の森は手付かずの森、そんな印象を受けるような森だった。
聳え立つ木々が日差しを遮っているため根本は薄暗い。
薄暗い中、雑草は陽の光を求め大きく成長し葉を目一杯に広げているため地面が見えなくなってしまっていた。
視界が悪く一寸先は闇。探し物をするには劣悪な環境だった。
いっそ魔法を使って薙ぎ払ってやろうかと思ったが、師匠に「むやみに自然の形を変えるもんじゃない」と怒られてしまった。
グェー、じゃあこの獣道すらない雑草だらけの場所で、探し物しないとダメなのー?
雑草をかき分け歩き回ったら現状から形変わるんだから同じじゃね?と思ったがここは素直に師匠の言うことを聞くことにする。
しばらく歩き回った後、オーラを一番強く感じる場所は選定することは出来た。
多分この辺だと思うのだが支柱と思われるようなものが、それらしきものが全く見当たらない。
しばらくの間、その周辺も歩き回ってみてはまた同じ場所に戻ってくるを繰り返す。
やっぱりここがオーラを強く感じるよなーと、思い首を傾げていると、、。
「ひょう!それだよ。それ!」
師匠がそう言って近づいてきた。
近付いてきてそれそれと指を刺している先には苔が生え緑色になっていたり、黒ずんでいたりする岩があった。
完全に風化していて自然と一体化している姿に、先人が残した偉大な産物と思われる風格は一切感じなかった。
「こ、これですか?」
支柱というからエジプトのオベリスクみたいなものを想像していたのだが、、。
これなのかよっ!
まさかここまで朽ち果ててしまっているとは。結界の効力が無くなってしまっているのも頷ける。
俺のそんな困惑した表情を見て師匠は笑みを浮かべていた。
「オーラを送り込めば、お前が想像しているような支柱になるぞ」
そんな俺を傍目に師匠は黒い岩みたいな物体に手を添え、オーラを高め出す。すると師匠の体からオーラを吸い込んでいるような流れが生まれ、黒い岩にどんどんオーラが流れ込んでいっているようだった。
これがオーラを送り込むということなのか!
黒い岩は師匠のオーラを受けボヤーっと発光し始め、膨張し出し、表面についた苔が剥がれ落ち出す。
しばらくするとツヤの出た金属質の表面が現れ始め、地面に埋もれていた部分が地表に迫り上がって来た。
「ふー、終わったぞ」
オーラを込め終わった支柱は3メートルほどの高さで、色は金属製の黄色をしていてまるでゴールドのようだった。
六角柱に三角錐の先端を持っていて水晶の結晶のような形状をしていて、先ほどまでとは打って変わって支柱は神々しいオーラを放ちそこに聳え立った。
「これが先人のオーラを結晶化したものですか!?」
その神々しさに圧倒され我を忘れ見上げていると、、。
「時間がない、観光に来たんじゃないんだぞ」と言われてしまった。
「これと同じものがもう二箇所ある。それを見つけ出してオーラを込めるんだ。もうやり方は分かっただろ?」
「分かりました」
「よし、ならばここからは時間との勝負じゃ。二手に別れよう」
「時間との勝負?」
「もう既に神は支柱の一箇所が復活したことを悟っておるはずじゃ。我々の動きを察知した神は妨害してくることだろう。広大な土地を一瞬で焼き払うような能力を持つ神と対峙しては命がいくつあっても足りない。早急に作業を進めなくてはならない」
なるほど!そういうことなのか!
「二手に分かれるが、オーラを感知するのが人一倍得意なお前の方が先に終わってしまうだろう。もし早く終わったら中心街の状況を探っててくれ」
「探るって具体的には何をすればいいんですか?」
「神の動きと人々の生活風景を見てれば良い」
「神が動き出したら止めればいいんですね?」
「止める必要はない。距離を保って様子をみていればいい」
それだけ?
「分かりました」
一度、要領を得ているだけに、直ぐに支柱を見つけ出しオーラを込め復活させた俺は、中心街へと向かった。
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