第6話 オーラの剣
胸にモヤモヤを抱えながら来た森を引き返して行く、その時だった、、。
「オイ小僧。おまえ相当腕が立つらしいな。どうだい俺と勝負してみないか?」
中華風の鎧をまとった大柄な男が、木に体を寄り掛け腕組みをしている状態で話しかけてきた。
奇抜な格好をしていることを鑑みて、相手にしない方が良さそうだと思い通り過ぎることにする。
しかし、聞いてもいないのにそいつは『梓豪(ジハオ)』と、名乗ってきた。
そして、その男は不敵な笑いを浮かべこちらを見据えてくる。妙な成りをしているそいつに一瞬目をやった後、一笑に付して、改めて関わらない方が良いなと思った。
「おいおい無視かよ。失礼な奴だな」
その男の前を通り過ぎようとすると、肩を掴まれそう言われた。
そいつの大きな手は俺の肩にずしりとした重みを感じさせる。力の加減を知らないのか?肩に指が食い込み痛みを感じる。
「どっちが失礼だ!汚い手で触るな。その腕切り落とされたいのか?」
俺は馴れ馴れしく肩に手を置いてきた事に腹を立て、その大男を睨み付ける。
「ふふふ。やれやれ、無視の次は憎まれ口かよ。お前の師匠真城殿は礼節を重んじる立派な方なのにな」
そう言いながら、大男は俺の肩を掴んだ手にさらに力を込めて来た。
掴まれた肩の向こうからとてつもなく強力なオーラを脈々と感じ、肩の重圧がどんどん増していく。
コイツはいったい何を考えているのだろうか?師匠の事を知っているみたいだが?
俺は押し潰さんばかりの力に抵抗するように肩に力を入れ踏ん張る。
「俺の腕、切り落とせるものならやってみろ」
不敵な笑いを浮かべながらそう挑発してきた。
勝負してみないかだと?ふざけるな!最初から殺る気じゃないか?
こいつの挑発にまんまと乗ったみたいでムカつくが、このまま立ち去るのはもっとムカつく。
「その腕いらないらしいな」
俺は身を翻し大男の腕に剣を振りかざしす。『キンッ』と、鈍い音を立て剣の刃は鎧の表面で止まった。
ダンプを真っ二つに出来るほどの俺の剣をその男の鎧は弾いた。
ゴムに刃が当たったような、分厚い本に当たったような、固いような柔らかいような物に当たったような妙な感覚に驚きを隠せずにいると、、。
「ふっ。驚いたか?俺の身を包む鎧は神話の時代より受け継がれているもの。お前程度の実力では斬れぬは」
そう言って余裕の表情を浮かべ高笑いし出した。
金属だろうが岩石だろうが関係無く斬れる俺にとって、斬れない物が有ることには少し驚いたが、大男の話が終わらないうちに次の攻撃を仕掛けることにした。
『キンッ、キンッ、キンッ』
今度は連続で攻撃を仕掛ける。
が、その全てが鎧に弾かれた。
何度か打ち込めば効果出るだろうと思っていた俺は、自分の剣撃が全く刃が立たないことに驚く。
「人の話を聞いてなかったのか?人間であるお前にこの鎧は傷つけられぬと言っただろ」
そう言って腹に力を込めるようにオーラを集中させたあと、一気に解き放ってきた。
『バーーン!』
ジハオが周りに放ったオーラは強烈な衝撃波となり、その圧倒的な圧力のオーラに押され俺は後退りする。
「ほー。その小さな体で俺のオーラを堪えるか?面白い!」
さらにオーラの圧力が強まり俺を好き飛ばそうとしてくる。
「なるほど!小僧、只者ではないな。ここまで圧倒的な力の差を見せられ怯みもしないとは。太刀筋も大したものだ。全く捕らえることが出来なかったぞ。もし俺がこの鎧をまとっていなかったらさぞかし手こずっていただろうな。だが敵が鎧をまとっていたから勝てなかったなど言い訳にもならん。戦場とはそういうものだ」
敵?戦場?コイツは何者なんだ?
「しかし妙だな、自慢の剣が全く歯が立たないというのに、なぜさほど動じる様子もない?」
こちらの様子を探るように見つめてくる。
「確かに頑丈だなその鎧は、今の俺の実力では斬ることは出来ないらしい。だがもう分かった。その鎧は斬れなくてもおまえは倒せるぞ」
どういう意味で言った言葉か全く分かっていないようだった。
「俺の師匠を知っているようだが、流派の真髄までは知らないようだな。斬りたいものを斬る剣術それがここの流派だ」
自分のオーラの波長を変え強烈に燃え上がらせた。
「なんだ!こやつの気配が変わったぞ!?」
「鶴賀流奥義凍鶴」
圧迫感を与えてくるオーラを切り裂き、一瞬で間合いを詰め、ジハオを剣で薙ぎ払った。
俺の想定外の動きに防御すら間に合わなかったようだった。気が付いたときは斬り抜けられて血飛沫を舞い上げていた。
「ガハッ!!」
自分の身に感じた衝撃に両膝と片腕を地面に着き、もう片方の腕で衝撃の有った場所を押さえる。鎧を見るが、鎧には傷一つ無い。
何が起きたか理解が追い付かないでいたようだが、自分の身体に入り込んでくる俺のオーラに危機感を感じたのだろう。
俺から距離を置くと自分のオーラを集中させ出した。相手を凍結させるオーラだ。このオーラに負ければ死は免れないだろう。
自分のオーラを集中させなんとか俺の凍結オーラを打ち払うと立ち上がってきた。
「はぁーはぁーはぁー」
呼吸は乱れていて、かなりのダメージを受けたことは明らかだ。
「なんという奴だ。物理的にではなく自分のオーラの波長を、俺のオーラの波長に合わせオーラで剣を作り俺の肉体を攻撃してきたというのか?そんな事が出来るものなのか?」
「分かったんならさっさと帰れ、お前本当に俺に殺されるぞ」
「なるほどそいうことか。あの真城殿の弟子ともなればそんな事も可能なのだろう。しかし、なんて奴なんだ。なんてオーラのコントロールがうまい奴なんだ。これがこいつの剣術の真髄とやらという事なのか?道理で剣が弾かれても全く動じていない訳だ。アイツの本当の剣は、研ぎ澄まされたオーラの剣という訳か!流石は真城殿の弟子だな!なるほど、一筋縄では行かんな」
何だコイツ?まだやる気でいるのか?
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