第7話「友達」

キーンコーンカーンコーン


4限終了のチャイムが鳴る。

待ちに待った昼休みだ。

各々が他クラスや屋上へ行って

友人達と昼食をとる中

俺はクーラーボックスと炊飯器と

バーナーと鶴瓶麦茶を持って

"ある場所"へと移動する。



「ーーーフッフッフ……誰もいないぜ」


俺が来た場所というのは 

プールの裏側にある小さな階段である。

俺はいつもここで昼食を食べているのだ。

え?なぜ教室で食べないのかって?

それは友達がいないからだよ!

だって恥ずかしいじゃない!

こんなデカイ体の男が教室の隅で

ポツンと1人で食べてるなんて!


(いや~……しっかし……

ここはいつ来てもいいな……

人が全く寄り付かないから

静かで心がとても安らぐ………)


3年前から利用している場所だ。

俺にとってもう1つの我が家と言っても

過言ではない。

え?……なになに?

お前3年前から友達いないのかよって?

ほっとけ!


(さてさて……じゃあ早速調理を始めますか)


俺はクーラーボックスから

サーモンの刺身を取り出し

バーナーで炙り始める。


ゴオオオオオオオオオッ


ザッ…ザッ…ザ…


「……あれ?」


「…ん?」


俺がサーモンを炙ってる時に

目の前に見覚えのある

金髪の長身女が現れた。


「ゆ、夢咲……?」


「サイアク……先客がいたのかよ……

まぁアンタだしいっか………」


夢咲はそう言って俺の近くに座った。


「……何それ?魚?」


「え?あ、ああ……サーモン」


「……学校でサーモン炙ってる奴なんて

初めて見たわ」


そう言いながら夢咲は

弁当ケースから弁当箱を

取り出して開けた。

中には色とりどりの豪華な

具材達が並んでいた。


「……それ手作りか?豪華だな~」


「まぁね」


一方で俺の方も

炊飯器を開けて

中に入ってる白米の上に

炙ったサーモンを盛り付け

全体にかる~く醤油を垂らして

炙りサーモン丼の完成である。


「いただきま~!」


ガツガツガツ

モグモグモグモグ


俺が一心不乱に丼を食べていると

夢咲が話しかけてきた。


「ねぇ、アンタっていつもここで

お昼食べてんの?」


ピタッと箸を止める俺。


「あ、ああ……そうだけど?」


「……入学してから……3年間ずっと?」


「………ああ……」


「……へ…へぇ~……」


ドン引きすんじゃねえ!!

泣くぞコラ!!


「……なぁ、夢咲……

何で今日はこんな場所来たんだよ?

いつもは全くと言っていい程来ないよな?

というかいつもどこで飯食ってたんだよ?」


「……………トイレ……」


「……………………………」


その場の空気が凍る。

俺は聞いちゃいけない事を

聞いた気がした。

それと同時に彼女に対して

何だかとてつもなく

申し訳ない気持ちで一杯になった。


「………そ…そっか……

ま、まぁ……とりあえず~……

今日から毎日ここを自由に

使えばいいと思うよ………

俺は…邪魔になると思うんで

明日から違う場所探すからさ………」


「はぁ!?

ア、アンタもここにいればいいじゃん!!

だってずっと使ってた場所でしょ!?

何で消えようとすんの!?

…………!!分かった……!!

私が嫌いなんでしょ……!?

こんな男勝りの留年デカ女とは

部活以外では関わりたくないんでしょ!?」


夢咲の目には

やや涙が浮かんでいる


「お、おい落ち着けよ!!

誰もそんな事思ってねぇっての!!」


「嘘だ嘘だ嘘だ!!

うわぁぁぁぁん!!」


「あ!!おい!!チョマテヨ!!」


泣きながら走り去ろうとする夢咲の手を

俺は掴んだ。

そしてなぜかそのまま地面に倒して

腕十字固めを決めてしまった。


「いだだだだだだだだだだだ~~!!!!!」


「ああああああああああ!!!!!

ごめぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!

なんか癖でやっちまったぁぁぁぁ!!!!!」


すぐさま解除する俺。

そして夢咲へと駆け寄る。


「わ、悪い夢咲!!大丈夫か!?」


「痛いわボケェ!!!!」


バキィッ!!!


「がっ………………!!!」


ズシャアッ!!


俺は夢咲の渾身の右ストレートを顔に浴びて

地面に倒れた。


「……腕がいったたた~……このバカノッポ!!

レディーに何て事すんだよ!!」


「ず……ずびばぜん………」


その後、俺達2人は

また昼食へと戻った。

すると夢咲が俺に話しかけてきた。


「ねぇ………ちょっといい?」


「ん?」


「…………その~……さ……何と言うかさ………

アンタがどうしてもって……言うんだったらさ……

なってあげても~……いいよ……?………友達に……」


「………え?」


「だ、だってさ!!

アンタいっつも1人だし

何だか可哀想かなーって思ってさ!!

だからなってやってもいいって

言ってるんだよ!!友達にさ!!」


「………………」


「……だ、黙ってないで何か言えっつの~!!」


「………ほ……本当に……いいの?」


「え?」


「3留の俺なんかと……

本当に友達になってくれんの……?」


「え?う、うん……アンタが望むなら……」


咲空がそう言うと

プルプルと震えだす丈太郎。


「な、何……?トイレ……?」


「やったぁぁぁぁ!!!

嬉しいいいいいい!!!

高校に入って初めてできた友達だぁぁぁ!!!」


そう叫びながら

咲空にガッと抱き付く丈太郎。


「は!?ちょ!?な、何を!?」


顔を真っ赤に染める咲空。


「夢咲ぃぃぃぃ!!!

俺嬉しいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!

友達になってくれて嬉しいよぉぉぉ!!!

あ、そうだ!!早速今日の放課後に

もっと親交を深めるために

どっか遊びにいこうぜぇぇぇぇぇ!!!

ボーリング行って!!カラオケ行って!!

それから……!!それから……!!」


「調子乗んなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


ゴシャアッ!!!!


咲空は丈太郎に

パイルドライバーをかました。



それにしても………

色々あって友達同士となったこの2人……

はてさて、この先どうなりますことやら……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る