第6話「これにて解決」

恵が相談をした次の日の昼休み。

恵と話に出てきた5人の男女は

柔道場の中心に集まっていた。


「メグ、一体何のつもり?

こんな所に私達を呼んで」


女Eこと川村は恵に言う。


「うん……実はね……

みんなの仲を修復したくてね……

それで、ある2人に相談したの……

そしたら昼休み柔道場に

みんなを集めてくれって言われたから……」


「2人?それって一体誰なんだ?」


男Aこと我衆院は恵に聞く。


「うん、A組の……」


恵が答えようとした瞬間

柔道場全体にある曲が流れ出した。

その曲というのは"ZZ"の

NO WAY OUT(Version.4-Fighting Theme-)

だった。


「これって……ノゲイラの入場曲!?」


女Dこと石井は言う。


すると音楽に合わせて

柔道場の入口の方から

総合格闘技用のパンツを履き

ブラジル国旗を背中に羽織った長身男と

黒い袋を右手に持った

恥ずかしそうに下を向きっぱなしの

金髪の長身女が現れた。


「あ、あれって……A組の天竺君と

夢咲さんじゃないか……?」


男Cこと小泉は言う。


「皆様、本日は御忙しい中集まってくださり

誠にobrigado(ありがとうございます)」


丈太郎は5人の前に立ち

頭を下げながら感謝の気持ちを述べた。


「あ、申し遅れました

皆様、既にご存知だとは思いますが

私、ゴミカス3留ボーイこと

天竺丈太郎でございます」


「私は1留の夢咲咲空です……よろしく」


2人の自己紹介が終わると

川村が聞き出す。


「あの~……もしかして……

恵が相談をした2人ってあなた方ですか?」


「É isso mesmo(そうだよ)」


「い、一体どういう成り行きで……?」


「僕達は昨日から"柔術部(助)"という

学園中の人達の悩みを解決する部活動を

始めました」


「じゅ、柔術部(助)!?」


「ええ、皆様の事は既に夜桜さんから

聞いております

元々仲が良かったあなた達5人の関係は

さまざまな諸事情により

現在は拗れてしまっているそうですね」


「「「「「………………………」」」」」


沈黙する5人。


「僕達はそんなあなた達の関係を

修復させたいと思っています」


丈太郎の発言に対して

我衆院は聞く。


「しゅ……修復って……一体どうやって……?」


我衆院がそう言うと

丈太郎は咲空の方を向き

指パッチンをする。


「ヘイ!Ms.夢咲!"例のモノ"を!!」


丈太郎の発言で

咲空は手に持っていた袋から

ガサガサと何かを取り出し

5人の前に置いた。


「「「「「………これって………」」」」」


置かれたのは"柔術着"だった。


「皆様には今から

向こうの更衣室に行って

これに着替えてきてもらいます」


「「「「「え!?」」」」」


「で、着替えたら

僕が簡単に柔術のルールやら

技をいくつか教えるんで

その後、皆様に簡単な試合をしてもらいます」


「「「「「はぁ!?」」」」」


「な、何を言ってるんだ貴方は!?」


「汗かきたくないよ~!!」


「何のためにそんな事!?」


「私そんなのパスだから!!」


「冗談はよしてくれ!!」



「うるせぇ!!!!

四の五の言わずに

とっとと着替えてこいや!!!!」

さもねぇと殺して解体(ばら)して

アマゾン川に沈めるぞボケが!!!!」



ビクゥッ!!


丈太郎にビビった5人は

急いで着替えに向かった。

そして約5分後。


「「「「「き、着替えてきました………」」」」」


「うん!!みんなよく似合ってるよ!!!

じゃあこれからルールや技の解説を

していきます!!!」


約10分程説明した後

15分程使い、全員が試合を行った。


「ハァ……ハァ……あっつ~……」


「クッソ~……あと少しで

極められたのに~……」


「ハァ……ハァ……

思ってたより楽しいじゃん……これ」


「自身の課題点が多く見つかったな……」


「ものごっつ燃えた……」


試合を終えて余韻に浸ってる5人に

丈太郎は話しかける。


「みんな、柔術って面白いだろう?」


「「「「「え?」」」」」


「最近、5人の間では

色々嫌な事があったかもしれないけどさ

今回の柔術を通して浄化された気がしないか?」


「「「「「………………」」」」」


5人は互いの顔を見つめ合う。


「え~と……そこの女子2人……

川村さんと……石井さん……だっけ?」


「「え?」」


「お互い、彼氏が同性愛者でショックを

受けたかもしれない………

けどさ……彼達をむやみやたらに責めるのは

勘弁してあげてほしい

一応彼らにも彼らなりの葛藤が

あったと思うからさ………」


「「…………」」


「もちろん君達2人の気持ちは

痛いくらいに分かるよ

俺も昔似た様な事があったからね」


「「似た様な事……?」」


「ああ……俺が中学3年生だった頃……

当時付き合ってた彼女に同じクラスの女子と

浮気をされたんだ」


「「え!?」」


「まぁ……俺の場合は

ショックを受けると言うよりも

ちょっと興奮したんだけどね……」


「「…………」」


「………な~んて……冗談はさておき……

何が言いたいかというとさ

愛には色々な形があるってことさ!

それらを踏まえた上で

互いを尊重し、理解し、共存し合える仲に

なってもらえたらなと俺は思います!」


「「「「「………………」」」」」


5人が沈黙していると

ある1人の男が

4人に対して謝罪をしだす。


「……すまん、みんな……元はと言えば

我衆院と小泉の仲に嫉妬して

川村と石井に密告した

俺が悪かったんだ……」


謝罪したのは

男Bこと沢田であった。


沢田の謝罪後

4人は彼を責めるのではなく

優しく寄り添った。


「…………みんな……!グスッ……!」


5人の光景を笑顔で見つめる

丈太郎、咲空、恵の3人。

すると我衆院が前に出てきて

5人を代表して

恵と丈太郎と咲空に礼を言った。


「恵、俺達の事を心配して

この2人に相談をしてくれてありがとう

そして俺達の仲を修復させてくれた

天竺君、夢咲さん、本当にありがとう」


「へへ、礼を言われる程の事なんか

してないっつの」


(私ほとんど何もしていけど……)


キーンコーンカーンコーン


昼休み終了のチャイムが鳴った。

5限開始までは残り5分しかない。


「やっば!急いで着替えないと!」


丈太郎達はその後急いで着替えて

教室へと戻った。



そして、その日の放課後の家庭科室……。


「いや~無事解決できて良かったよホント」


丈太郎は自身の正面席に座っている

咲空に向かって言う。


「まさか本当に柔術で解決できるとはね……」


咲空がそう言った直後

教室の扉がガラガラと開き

2人の女子が入ってきた。

川村と石井だ。


「「こんにちは!

昼休みはどうもお世話になりました!」」


2人は丈太郎達に挨拶をする。


「「ええ…どうも」」


丈太郎達が挨拶を返すと

川村が先陣をきって

2人に"ある報告"をする。


「実は…2人に

報告したい事があって来ました」


「「報告?」」


「はい……実は私達……

付き合う事になりました!!」


「ウッソ!?」


驚く咲空。


「あら^〜」


喜ぶ丈太郎。


「「というワケなんで……

これからは私達の関係を

見守っててください!!」」


「うん、おかのした(わかりました)」

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