第5話「昼ドラ」

相談に来た生徒……。

彼女の名前は"夜桜恵(よざくら めぐみ)"。

桜の様なピンク色の髪に

タレ目が特徴的な女子である。



「あ、私1年C組の夜桜恵って言います!

よろしくお願いします!」


そう言うと恵は

丈太郎と咲空に

軽くペコリと頭を下げる。


「あ、あ~……こちらこそよろしく…

え~…と……」


そう言って丈太郎は

隣に立っている咲空の方を

チラッと見て小声で話しかける。


「な、なぁ…どうしたらいい?」


「はぁ!?わ、私に振るの……!?」


2人は数秒間ボソボソと

言い合いをした末に

咲空の方が恵に話しかける。


「え~…っと…じゃあ…とりあえず

適当にその辺に掛けてもらっていい?」


「は~い!」


恵は近くにあった席に座り

2人も恵の正面の席に座る。


「えーっと…じゃあ、最初に軽く

自己紹介しとこうか……俺は…」


「知ってるよ!

"ミノタン"でしょ?」


「へ?ミ……"ミノタン"!?」


「うん!私のクラスの女子は

みんなそう呼んでるよ!」


彼女に聞いたところによると

"ミノタン"とは"ミノタウロ"を

可愛くアレンジしたものらしい。


(俺って…もしかして……

他クラスの女子からは

評判良かったりするのかな……?)


推理中のコナン君並みの

真剣な表情で考える丈太郎。

そして次に咲空が

自己紹介を始めようとする。


「あ、私は……」


「知ってます!

元湘南蒼海中バレー部キャプテンの

夢咲先輩ですよね?」


「え?」


「私先輩と中学一緒だったんですよ!

なので先輩のご活躍はよ~く知ってますよ!」


これは何かの運命なのだろうか。

1つの教室に年齢の違う同中が

3人も揃ったのである。


「……え~っとさ……夜桜さん…

それで…?

相談って言うのは?」


丈太郎は恵に話を切り出す。


「あ……うん…それなんだけどね……」



恵は事細かに詳細を話した。



「………………と、言うワケなんです……」


「「………………」」


相談を聞いた2人は絶句した。

ちなみ内容はこうである。


彼女が現在仲良くしてる5人の男女。

ここでは

男A、男B、男C、女D、女Eと表記する。


まず始めに。

男Aが女Dと、男Cが女Eと

交際していたそうなのだが

実は男Aと男Cは浮気関係にあった。

そしてそれに気付いた男Bが

女D、女Eにその事を密告する。

するとそれを聞いた女Dと女Eは激昂し

男Aと男Cに事情の説明を求める。


それに対して2人は

「俺達はセカンドパートナーなんだ」と説明。

それを聞いた女Eはその場で泣き崩れ

女Dは2人に殴りかかろうとする。

そしてそれを止めようとした男Bが

彼女のパンチを受け、軽い怪我を負ってしまう。

その後、男Aは何とか女2人をなだめようとし

その間に男Cは男Bを保険室へと

運ぼうとしたのだが

その道中の空き教室で男Cと男Bは

なぜか肉体関係へと発展してしまい

それを偶然見た男Aは発狂し

男Bと乱闘騒ぎになった。



そんなこんなで仲の良かった5人が

今やバラバラ状態になってしまったので

それを何とか修復してくれないかというのが

恵の相談らしい。





「………いや…いやいやいや………!!

重すぎるっての……!!」


「これを元に昼ドラ作れそう………」


丈太郎と咲空は

そう口にする。

すると恵は2人に頭を下げ

お願いする。



「お願いミノタン!!

お願いします夢咲先輩!!

私にとってあの5人は

凄く大切な存在なんです!!

どうにか仲を戻してあげてください!!」


「ど……どうにかって言われても………

私達にどうこうできる問題じゃ……」


困惑した表情で

丈太郎の方をチラッと見る咲空。


「…………分かった……

俺が何とかやってみよう………」


「は!?」


「本当に!?ミノタン!!」


「ああ……ちと荒療治に

なるかもしんないがね……」


丈太郎がそう言うと

咲空は席から立ち上がる。


「………ちょっと来て!」


そう言って

丈太郎の腕を引っ張り

教室の隅っこに連れていき

小声で話す。


「ちょっと…!何承諾してんのアンタ!

あんなもん私達にどうにかできる

問題じゃないじゃん!

変な期待させちゃあ可哀想だよ!」


「いや……あるんだよ……方法が」


「はぁ……!?どんな!?」


「柔術」


「は!?」


「まぁ俺に任せとけって」


そう言って

恵の方に戻る丈太郎。


「夢咲さん」


「うん?」


「明日の昼休み、そいつら全員

柔道場に呼んでくれないか?」

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