第3話「夢咲咲空」

夢咲咲空(ゆめさき さら)。

1年A組35番。

身長182cm、体重67kg。

モデルの様な体型と

端整な顔立ちが特徴的だ。


そんな彼女だが、実はクラスで浮いていた。

その要因としては、本人が一匹狼気質な事。

短気でキレやすい事。

長身で威圧感がある事。

(クラスで丈太郎の次にでかい。)



そして……もう一つの最大の要因……



それは……



高1でありながら

現在17歳だという事。


そう、咲空は丈太郎と同じ留年生なのだ。

彼女は交通事故が理由の長期入院で

出席日数が足りなくなり

留年してしまったのだ。

とは言っても1留なので

3留のゴミカスよりは百倍マシなのだが。


そんな彼女を見ながら

丈太郎はこう思っていた。


(…こんな子クラスにいたっけ?)


すると見られている事に

気付いた彼女は

鋭い目付きで丈太郎に言った。


「何見てんだよ、キモタウロ」


「なっ!?キ、キモタウロ!?」


丈太郎は困惑する。

そしてそれを聞いていた

雫が解説する。


「おそらくキモいミノタウロで

キモタウロね」


「いや、言われんでも

分かっとりますよ!

ていうかもっと言う事あんでしょ!」


ツッコむ丈太郎。

すると咲空が雫に話しかける。


「せんせー、話っていうのは何ですか?

私ジャンプ読みたいんで

とっとと教室戻りたいんですけど」


「うん、実はね…あなたに

柔術部(助)に入ってもらいたいの」


「はぁ?何ですかそれ?」


「柔術を使って

この学園にいる困ってる人達を

助けるという部活よ」


「は!?意味不明なんですけど」


「と・に・か・く!

明日からあなた達二人で

柔術部(助)の活動を始めてもらいます!」


「はぁ!?めんどくさ!!

絶対にイヤなんですけど!!

ていうか大体

こんな"ダブリキモノッポ"と

一緒とかイヤなんですけど!!」


(さっきよりひでぇ…)


やや涙目になる丈太郎。


「…天竺君、夢咲さん…よく聞いて…

私はね、あなた達二人はとても

相性が良いと思うの」


「「は!?」」


「ほら…その~…何と言うか…

二人は…クラスで浮いてるでしょ…?

いつも一人で…」


「ジョーダン!!

私は浮いてなんかいないし!!

一人でいんのは好きだからだし!!

こんな"低能妖怪ボッチ"と

一緒にしないでくださいよ!!」


プチンッ


この時、丈太郎の何かが切れた。


「てめぇ!!大概にしとけよゴラァ!!

黙って聞いてりゃ

言いたい放題言いやがって!!

ブス!!マヌケ!!生涯孤独!!

上履き隠してやろうか!?

おおん!?ボケが!!」


191cmの男が大声で怒鳴る。

中々の迫力だ。

しかし咲空は全く動じず

むしろ言い返す。


「うっせーんだよ!!ダブリジジイ!!

高校を3留もするような虫ケラ人間

世界中捜してもアンタだけだっつの!!

両親に申し訳なさを感じながら

とっと首吊れや!!

ED!!種無し!!若ハゲ!!」


「ちょ……!!

俺まだハゲてないよ……(泣)!!」


「二人ともその辺にしなさーい!!」


雫が止めに入る。

すると二人は

我に返った様な表情になり

互いに謝罪し合う。


「……すまん…言いすぎた…」


「いや……私の方こそ…ごめん

つい…カッとなっちゃって…」


互いの謝罪が終わると

雫は二人に言う。


「……フフフ、初めてでしょう?

この学校に入って

そうやって自己を

ぶつけ合ったのは?」


「「……」」


沈黙する二人。


「私やっぱりね~…あなた達は

相性良いと思うわ」


「「……」」


「ねぇ……騙されたと思ってさ

部活…やってみましょうよ…ね?」


「「……」」


「色々な人達と触れ合う事で

人生に対する価値観とか物凄く

変わると思うのよ」


「「……」」


「……分かった!

じゃあこうしましょう!

今入ればガラナ1ヶ月分プレゼント!」


「え!?」


先に食い付いたのは

丈太郎だった。

丈太郎はガラナが大好きなのだ。


「……俺、入ろうかな……」


「よう言うたぁ!!!

決まりね!!大好き!!

ん~…!!!」


雫は丈太郎の顔を

近くに引き寄せ

キスをする。


ドサッ!


顔を真っ赤にして

倒れる丈太郎。


「さぁ!!夢咲さん!!

あなたは!?」


雫は咲空に返事を求める。


「…………まぁ……

ヒマだし……ちょっとやってみても

いいかな……?」


「ブラボー!!アンビシャス!!

その言葉を待ってました!!」


こうして

丈太郎と咲空の柔術部(助)活動が

今、幕を開けたのだった。

はてさて、二人はこの先

どうなりますことやら……。

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