第3話 過激な異世界ライフ! 気が付いた時には危険が一杯の二択? ちょっと何でこうなるの~!?

(もう行くしかないな!)


目前に見える城だか要塞だか分からないモノを見上げつつ、望はそこに向けて走り出す。


しかし、その建造物からは何とも言いがたい不気味さが漂っている。


(本当に入って大丈夫なのか?)


一瞬、そんな躊躇いにも似た感情が心の中を渦巻くが今更、選択肢などありはしない。


何故なら後方には巨大なドラゴンが追ってきているからだ。


ならば、その建造物に逃げ込むしかない‥‥。


(虎穴に入らずんば虎子を得ず‥‥。

まさか、この言葉を実際に使う日がくるとは‥‥。)


だが、その直後、後方より、また例の轟音が鳴り響く。


忘れたくても忘れられない例の音。


考えるまでもなく、ドラゴンブレスの発生前のエネルギー収束音だ。


(ちょっと!

なにしてくれてるん!?)


望は慌てて、右側の森へと踵を返す。


それとほぼ同時、ドラゴンが放った高エネルギーの塊は建造物に向けて放たれる。


(ちょ!?

あんなの直撃したら建物が消し飛ぶって!!)


状況が悪化していくのを目の当たりにし、望は軽く絶望しつつも、建造物の終焉を見守った。


しかし、ドラゴンブレスが建造物に直撃せんとする刹那、その膨大なエネルギーは突如として消失する。


(え‥‥?

いったい何がどうなって‥‥?)


信じがたい光景を目の当たりにしつつ、望はポカーンとその場に立ち尽くす。


だが、即座に現状を思い出し、望は再び堅牢な作りの建造物に向けて走り出した。


ドラゴンブレスすら通用しない建造物。


さっきの状況を見る限り、これは特大のアドバンテージだ。


つまり、目の前に聳え立つ堅牢な城だか要塞だかはドラゴンの攻撃すら受け付けない圧倒的な安全地帯。


ならば逃げ込めば生き残れる可能性は飛躍的に高まるということだ。


そして、建造物の入り口はもう目と鼻の先。


間もなく、ゴールインである。


だが‥‥。


(あれ、待てよ‥‥。

これ、普通に入れるのか?)


不意に不吉な可能性が脳裏を過る。 


そう、普通に考えてドラゴンブレスを消失させる事ができるのは明らかに、おかしかったのだ。


その要素はいつか考えられる。


直撃して無傷とかなら建造物が頑強という話しで終わるのだが直撃の瞬間に消失したとなれば‥‥。


(もしかして、強烈な結界とか張ってたりする?)


それはとてもリスキーな可能性に他ならなかった。


もし、侵入を拒む類いのものなら、入ろとした瞬間、弾き飛ばされる可能性がある。


いや、それ以前に触れた瞬間、消滅するという可能性も‥‥。


(どどど、どうしたら良かですか!!?)

 

状況はまさに前門の虎、後門の狼だった。


前に進んだなら、この世から消滅してサヨナラの可能性があり、後ろに下がればドラゴンの餌食となる可能性が高い。  


どちらにしても、危険しかなかった。


結局どちらの危険を選ぶのか‥‥それしか道はない。


(最恐の心霊スポットみたいな雰囲気の建物に一か八かで飛び込むか、意表をついてドラゴンの股下をくぐるか‥‥それが問題だ。)

 

直後、ハムレットの名台詞でも言うかのように、それらの言葉が脳裏を駆け巡る。


(ふう‥‥我ながら自分の才能が怖くなるな。

って、こんなことをしている場合じゃなかった!)


絶望的な状況に直面し、思わず逃避していた望だったが何とか我に返り、前方を凝視する。


しかし、現実に立ち戻ったところで何が変わるわけでもなく‥‥もはや望はどちらかを選ぶしかなかった。


一か八か建造物の中に逃げ込むか、それとも奇跡を信じてドラゴンに戦いを挑み、ドラゴンに勝利かを。


だが‥‥。


(あ、うん‥‥こりゃ、選択肢なんてないわな。

ドラゴンに素手で挑むとか狂人かバカじゃないてやらないだろうし。)


直後、不意に最初から選択肢などなかった事に気付く。


当然だ。


冷静に考えたら建造物に逃げ込む以外の選択肢などあるはずもない。 


それこそが生き残れる唯一の可能性なのだ。


ならば‥‥。


(日頃の行いがいいから大丈夫!‥‥のはずだ。

うん、きっと大丈夫に違いない‥‥。

お願いしますだ~、誰か大丈夫だと言ってけろぉぉ!!)


望は何とか迷いを振り払いながら全力で駆け出した。


必死に天に祈りながら‥‥。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る