第2話 奴隷市場
奴隷狩り部隊は
一行の横に柵が伸び、中で数頭の馬がいななき、走っているのが見えた。馬牧場だ。
ベイは横目で馬牧場を見ながら呟いた。
「あの馬……勿体ない。良い馬なのに、
兵士が鞭を振り下ろして、先を急がせる。
ベイはじっと馬を横目で見ながら進んで行った。
街道に入り、門を抜け、街の中に入る。
街の様子は、この時勢にあって比較的落ち着いているほうであった。
平原王の
奴隷狩り部隊の兵士達も気が緩んだのか、他愛もない世間話をしている。
「この辺りは都よりよっぽど平和なんじゃないか」
「そうでもないらしい。最近は“
「鬼車?って九本首の鳥の化け物だったよな」
「九人組の盗賊なんだろうよ、たぶん」
兵士と奴隷の一行はついに街の広場についた。既に人集りが出来ている。
◇
街の広場に引き出された胡人たちは首に値札をかけられ、競売にかけられていく。
頭の禿げ上がった女衒が叫ぶ。
「その娘の裸を見せてくれ!傷があっちゃあ、店で使えない」
急拵えの壇上で若い胡人の娘が悲鳴をあげて抵抗する。
「いやァッ」
「嫌なことあるか婢の分際で!」
兵士がびりびりと娘の服を破り、女衒は鼻息も荒く指で値段の合図を送る。
集まった客と競売人のやり取りはどんどん加熱していく。
「次は若い男の奴隷です。この通りの立派なモノを持っています。奴隷を増やす種男でも、愛人でも用途はご自由に。お、そこの奥さん早かった!」
「お次はなんと妊婦です。上手くすれば2人も奴隷が手に入りますよ。値段は1人半分です。さあ、買った買った!」
「さあ、お次は筋肉モリモリ
ベイは壇上に立ち、周囲を睥睨した。
その迫力に気圧されたのか、賑やかだった市場は静まり返ってしまった。
「なんと、こう見えてこの奴隷は漢人の言葉が使えます!お買い得ですよ!みなさん」
客の中から1人の身なりの良い老人が進み出て手を挙げた。その他には手を挙げる者もなく、ベイはその老人に買われることとなった。
老人は馬車にベイを対面で乗せると話しかけてきた。
「わしの名は
ベイは師懽の目に刺々しさがないのを見て、話し始めた。
「俺はチュルクのベイ。飢饉で一族のほとんどが死んだ。食いもんを求めてさまよってたら、漢人の奴隷狩りに捕まったのさ」
「救いのない話だのう。まあ、安心しろ。飯は食わせてやる。しっかりと働いてくれるならな」
馬車は夕闇の中を揺られていった。
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