2、告白

モヤモヤした気持ちのまま授業を受けて、

ドッジボールで負けて、

走ってマンションに帰って、

となりの前田さんの部屋に駆けこむ。


「ゼェ、ただいま、ゼェ…」

「どしたの?そんなに焦って。おかえり」

「いや、ちょっとね…」


前田さんなら父さんの秘密を喋ってくれそうだと思って…

なんてことはとても言えない。


前田さんは、うちの隣に住んでいる40前後かと思われる女性。

さっきも話したけど、母さんがいないと聞かされているぼくにとって、

あたかも母さんのような存在で、

彼女もぼくを受け入れてくれるし、ぼくも彼女を慕ってる。


「はい、おやつ」

「うん、ありがとうございます」

父さんの帰りが遅い日は、こうして彼女の家に居候して時間を潰している。

だから、生活に不満と言ったら嘘になるんだけど…



◆ ◆ ◆



「…それで?悩みというのは?まさか恋?」

「あぁ、うん、それがね

…ちなみに恋の話ではないよ」

「なぁーんだ」

そこから、今朝の父さんとのやりとりをそのまんま話した。


「うんうん、そっかぁ…

 だいちくんも6年だもんねぇ。

 流石にわかる…というか察するかぁ」

「はい、なんか不自然…というか最近そっけない気がしなくもなくも」

「それは彼の性格だし、気にする必要はないと思うけど

 …でも、

 …ううん、やっぱりよしましょ」

「なんでですか!?」

こういう気になったことはとことん追求したくなるのがぼくの悪いクセ。

「そりゃぁ、あの人に口止めされてることを勝手に喋るわけにはいかない

 でしょぉ。」

「それはそうですけど…」




「そこまでいうなら、一つ言っておくわ。」
















「あなたに母親がいないというのは嘘。

 これだけは事実よ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る