第2話 たのしい福岡
オープントップバスでは他にも幾つもの名所を見て、興味深い話を聞けた。
大濠公園の池の蓮は敵の侵入を防ぐためだとか。昔は住吉神社あたりまで博多湾だったとか。
それに「かろのうろん屋」。福岡訛りで「かどのうどん屋」のこと。福岡のうどんは柔らかいのが良しとされるそうだ。
行ってみたい場所が増える。
夜の部のバスを降りてから、関西の奥さんと私が写真を運転手さんが撮影してくださった。
関西の奥さんはこれから夜行バスに乗るそうで、笑顔で手を振ってお別れした。
* * *
2泊の旅行で2泊とも同じホテルに泊まる。連泊一日目だ。
「ホテルモントレ ラ・スール福岡」は、ステンドグラスや美術品があちこちにある華やかな内装が魅力的だ。
客室階の通路の壁にも、アール・ヌーヴォー風のリトグラフが並ぶ。
私の部屋のベッドの脇の壁面に小さな額縁に入った絵が飾られている。
チェックインした時にカードキーを渡されていた。
慣れない文明の利器だが、フロントの人が丁寧に説明してくれた。これは部屋の明かりをつける時やエレベーターに乗る時も使う。
エレベーターは、フロントのある1階と朝食ブッフェ会場や宴会場のある2階を別にすると、自分の宿泊室のある階にだけ停まる。
1階にはフロントや売店のほかに談話室もあり(2015年当時)目を引かれた。
宿泊客に面会したい訪問者のための部屋で、ふだんは閉鎖されている。保安のためかガラスの扉と大きな窓があり中を見やすい。それらの瀟洒な枠もテーブルも椅子も真っ白。
長期滞在者でなければ関係ない場所……と思うとよけいに高級感が増して見えた。
売店にはホテルオリジナルのマグカップやお菓子が並んでいる。
今夜は荷物をまとめ直さなくて良い。
だからもう少し街歩きを楽しもう!
ホテル内にバーやレストランが必要無いほど、周りに飲酒店が犇めいているのだ。
街の明かりが眩しい。
結局、ホテルの脇の屋台で何か食べることにした。
店主と常連客が和気藹々とおしゃべりする横に旅行者がいても許される雰囲気だった。
飲み物はレモンハイ。
食べ物は……本場の豚骨ラーメンと迷ったけれど、焼きラーメン。美味しい。
* * *
部屋に帰ってからは、自宅のテレビに映るのとは違う放送局のニュースをつけていた。
歯磨きや入浴のときなど、自分の動きに伴う音ばかり響く状態が何となく苦手なので、地球に申し訳ないけれどテレビの音をさせている。
ゆったりとして清潔なユニットバスだ。
洗面台も同じ浴室内にあり、私は女性としては大柄なほうだが少しも狭苦しさを感じなくて済んだ。
歯ブラシがとても私の好みだった。
毛の先端が分かれて極細毛の束のようになっているもので、丁度良いしなやかさだ。
2本あるので1本持って帰れる。
浴槽の中で脚を伸ばしてのんびりと湯に浸かる。
ああ、よかとこばい。
明日は太宰府天満宮に行くのだ。
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