✪ ストーリーライン ✪

▪ 十二月の長い休暇。事務所のスタッフたちもバンドメイトも里帰りするなど、ほとんどがプラハには不在だった。

 ルカもブリストルの家に帰っていて、テディはそれに合わせるようにバーミンガムの祖父の家で過ごしていた。

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▪ だが、母を亡くして寮制学校ボーディングスクールに入るまでという、ほんの僅かなあいだしか暮らしていない家には想い出もなにもなく、テディは他の皆のように里帰りという心地になれない。

 ここは自分の家ではない、自分はあくまで客人なのだと感じ、テディは予定より一日早くプラハへと戻る。

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▪ 混雑していた空港から、偶々目についたバスに乗りこんだテディ。フラットのある地区を通らないバスであったため、適当なところで降りて人混みを避け、細い路地を歩き始める。

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▪ ほとんどの店が早仕舞いしている寂しい通りを歩いていると、ふとノスタルジックな音が聞こえてくる。昔、母が口遊んでいた曲だと思いだし、テディは足を止めて煙草に火をつける。

 店から漏れ聴こえてくるのそ曲に耳を傾けながら、子供の頃のクリスマスなど、母と一緒だったときのことを思いだすテディ。

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▪ あの頃に戻りたい、とセンチメンタルな気分に陥るテディ。しかし転居を繰り返していたため、ルカたちのように想い出の詰まった家に帰るということができない。ここプラハで暮らしたこともあったが、それがどこだったかさえわからない。

 不意に自分が迷子になった小さな子供のように感じ、苦笑するテディ。

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▪ フラットに帰ってくると部屋の灯りがついていた。予定ではまだブリストルにいるはずのルカが帰宅し、キッチンでなにやら作っている。

 おまえが帰ってきてくれてほっとした、家で過ごすのがいちばんだ、と云うルカに、テディは部屋のなかを見まわし、自分の帰るべき場所は此処なのだと噛みしめる。

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▪ クリスマスのチキンを焼いているあいだ、ふたりで窓の外を見ると、うっすらと雪化粧をした美しい街の景色が見えた。





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❐ I Still Believe I Hear (Je Crois Entendre Encore) ≫ https://kakuyomu.jp/works/16817330649690307745

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