第33話 神議会(4)

「証言に感謝いたします。それでこの件についての証言はこれで終わります」


 神議官の言葉に侍女がぺこりと頭を下げる。


「聖女セシリア。何か反論はありますか」


 侍女の発言が終わり、神議長の教皇がセシリアに問う。


「では一つだけお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「はい?」


「その時、私は兄に何とお願いして彼女たちを首にしてもらったのでしょう?」


 セシリアの言葉に侍女は困った顔をした。

 おそらくシャルネ達に腐ったパンなどの質問への返答などを徹底的に指導されていたのだろう。けれど、セシリアが追及してきたのは別の事だった。


「そ、それはすみません、よく覚えていません。ですがゼニス様はセシリア様が一言いうと、使用人たちを首にしました。それも酷いんです!黒の刻印まで押しておいだしたのです!」


 その言葉に会場にざわめきがおき、「なんてひどい」「公爵様もあのような我儘娘のいうことをきくなんて」「やっぱり噂通り酷い女なんじゃ」と傍聴席から声が聞こえてくる。


 だが、黒の刻印についてメイドが口を滑らせたことでだが、神議官の顔が青くなる。


「神議長様、今のメイドの発言通りです。

 わたくしの兄は、私の願いをその場で聞き入れてくれるとても優しい兄です。

 たった一つの失態で黒の烙印を押してくれるほど、わがままを聞いてくれる優しい兄がいるのなら殺すのも兄に直接頼めばよかったではありませんか?

 使用人の罰に使うむち打ちの最中死んでしまったなど、使用人を殺してしまう事故はあります。

 いくらでも偽造し、殺せたはず。何故魔族との契約の宝石を使う必要があったのでしょう?」


 ざわっと声が聞こえ「それもそうだ」「たしか殺されたのは、あの男爵の娘だろ?公爵の立場に事故で死んだといわれても泣き寝入りしかできない立場だ。理由をつけて殺すことももできたはずだ」「殺す必要あるか?」とまた別のところから声が聞こえはじめるが、必死にそれにたいし反論している声が聞こえるところを見ると、かなりの数シャルネ側の密偵が傍聴席に潜んでいるのだろう。


「で、ですから、貴方は記憶をなくしていたために、信じていなかったが、面白半分で魔族契約の宝石を使ったのでしょう!?」


 神議官が意見を挟むが


「神議官。あなたはいささか一方的に決めつけてすぎないか」


 と、教皇である神議長から注意がはいる。


「も、申しわけありません。つ、次はこの魔族契約の宝石についてです。先ほど証言した通り、この証人が魔族と契約してその宝石を渡したと思われます。そして使用した痕跡がある。

 貴方が面白半分に使った違いますか?」


 神議官が、豪華な装飾の施された箱に入った、宝石をとりだし、セシリアに見せる。


「違います。私は目覚めてからその宝石の存在すら知りませんでした」


「間違いありませんか?」


「間違いありません」


「それはおかしいですね。使用人がこの宝石を貴方に渡したのは貴方が目覚めてから商人からのプレゼントだと告げて渡し、貴方が中身を確認したと証言しております。

 この使用人は、貴方が白銀の聖女になってから雇われた使用人です」


 神議官がセシリアを見つめる。


「ではその使用人の証言が信ぴょう性があるか、議論すべきでしょう」


「その必要はありません。なぜならこの宝石には貴方の魔力痕がはっきりと残っているからです。

 貴方がこの宝石を使用した魔力痕が!!

 そして、貴方が目覚めて白銀の聖女になってから雇われた使用人の魔力痕と商人の魔力痕ものこっていた。

 使用人の魔力痕が残っていたことは、つまり、使用人の証言が真実である証拠!!

 つまり先ほどの貴方の発言は嘘ということになるっっ!!!!」


 そう言って神議官がドヤ顔で、魔族との契約の宝石を魔力鑑定した鑑定書をとりだした。

 そこにははっきりと宝石にセシリアの魔力痕とレヴィンの魔力痕が見つかったという報告書がある。そう、セシリアの魔力痕があったということは、セシリアが触れた事がある事に他ならない。


 ざわっ!!!!


 会場全体がものすごいどよめきに包まれるのだった。

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