第26話 栄光と没落と(2)

『ずいぶんご機嫌じゃないか』


 ゴルダール領の西の砦。そこでセシリア用に用意された部屋でドレスを片手に鏡の前に立つセシリアにメフィストが話しかけた。


『そう見えるか?』


『そりゃ魂を共有しているんだ、気分くらいはわかるよ』


『セシリア様が砦の者たちに金色の聖女として褒めたたえられるのはやはり気分がいい。もっと彼女の素晴らしさを世の中が認めるべきだ』


 ふふふと、鏡を見ながら謎のポーズをとり言うセシリア。


『君やっぱり地味に気持ち悪い。なんていうか生理的に』


『誉め言葉として受け取っておこう』


『うん、だからなんで? 君をどう罵ったらダメージ与えられるの?』


 メフィストが薄目で問うが、当の本人は美しく気高い聖女セシリアを演出するためにどの服を着てどういう角度を魅せていくべきかと真剣に悩んでいる。

 その姿に結局どうでもよくなってメフィストは腕を後ろに組んで宙に浮いたまま横になった。


『まぁいいや、で、これからどうするつもりなんだい?

 ここで金色の聖女様呼ばわりされて、満足するつもりなのかい』


『そうだな。しばらくはそうなるだろう。ゴルダール領に力をつけさせるのが先だ』


『神殿に目障りなゴルダール領が力をつけるのを、シャルネ達が黙っているとおもう?』


『しばらくは大人しくしているはずだ。

 今、奇跡の聖女様の誕生の祝う空気に水を差したところで、奴らが痛い目をみるだけだからな』


 そう、下手に水をさせば、『金色の聖女』がいたにもかかわらず魔瘴核を放置していた神殿やシャルネ自身にも批判の矛先が向いてしまう。


『情報戦を仕掛けてくるなら受けて立つが、あの女は人心を操る術は知っている。

 手をだしてくるのはセシリアをほめたたえる熱狂的空気が鎮まってからだ。

 そして事を起こす前に、事前に何か必ず仕込んでくる。あちらも仕込み期間になるだろう。

 シャルネが手をだしてくるまでにゴルダール領を豊かな土地にし盤石な基盤としてみせる』


『それ決め顔でドレスもって変なポーズをとりながら言うセリフじゃないよね』


 言いながら、真剣にセシリアの容姿をどうやって効果的演出するか研究しているレヴィンにメフィストがやれやれとため息をつくのだった。


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