第14話 ミツキ
ダンジョンへ入る準備を整え、翌日意気揚々とギルドへ向かったユニスとプリシラだったが、そこに予定外の出来事が待っていた。
「ユニスさん、プリシラさん。折り入って相談に乗っていただきたいことがあるんですが。」
受付嬢のミネベアが2人に話しかけてきた。
「相談?」
ユニスは嫌そうな顔で聞き返した。こういった場合、何か厄介ごとをお願いされることが多いからだ。
せっかく中級ダンジョンに入ろうとした初日に出鼻をくじかれてしまったこともあり、なんだかいやな流れだ。
しかしいろいろと世話になっているミネベアの頼みを断るわけにもいかず、
「・・・あまり時間は取れないが、話は聞こう。」
と不機嫌さを隠しながら返事をした。
ユニスとプリシラは小さな部屋に案内された。雰囲気的には会議室のようで、簡素な部屋にテーブルと椅子があるだけだ。
「少し待っててください。」
そう言ってミネベアは部屋を後にした。何かを持ってくるのだろうか?
「どんな話でしょうね?」
「さあ・・・。」
残された2人はお互いを見たり、所在なさげに視線をさまよわせたりして時間をつぶしていた。
しばらくして扉が開いて、ミネベアが部屋に入ってきた。2人がミネベアの方を振り向くと、ミネベアのほかにもう一人の人物の姿があった。
「「あ・・・」」
2人にはその人物に見覚えがあった。つい昨日、ギルド内で大騒ぎがあった時の当事者である、赤毛の少女だったのだ。
部屋に入ってきた少女は、2人を見て気まずそうに少しだけ目を伏せるようにしていた。
ミネベアが双方を見て口を開いた。
「彼女の名前はミツキ。そして、こちらはユニスさんとプリシラさん。」
ミネベアの紹介を受け、ミツキと呼ばれた少女は、ちらりと横のミネベアを見てから口を開いた。
「ミツキだ。昨日は、その・・・ありがとう。」
ミツキは昨日のことに恥ずかしそうに礼を言った。昨日は男勝りの言動だったのだが、今日は打って変わってしおらしい。
「ユニスだ。」
「プリシラです。よろしく。」
「礼は要らない。俺が勝手に横入りしただけだからな。」
「そ、そうか。」
ユニスの言葉にたどたどしく反応する。なぜか知らないがミツキは緊張しているように見える。
自己紹介を終え、椅子に座った4人。
「で、相談ってのは何なんだ。」
座ってすぐにユニスはさっそく話を促した。その言葉は言外に『時間がもったいない』という意味を含ませていた。
それに対しミネベアはにっこりとほほ笑んで言った。
「ええ、相談ですが・・・ミツキをお2人のパーティに入れてもらえませんか?」
「え?」
「な!?」
ミネベアの言葉にユニスとプリシラは驚いて前に座る2人を見つめ直した。
冗談・・・というわけではないのは2人の様子からわかる。ミネベアは相変わらずにこにこと、ミツキはそわそわしている。
「なんでいきなりそんな話・・・。」
ユニスが戸惑いながらもミネベアを問い詰めようとしたが、一方ミネベアはゆっくりと少し首をかしげた。
「でもユニスさんは以前私に『実力があって、信頼できる人がいれば仲間に入れる。そんな人いないか?』って言ってたじゃないですか?」
「・・・へ?」
そう言われてユニスの頭はミネベアとの過去の会話を探し始めた。
(そういえば・・・思い当たる会話がある・・・が、しかし・・・)
それは少し前にミネベアから『2人パーティでやっていくのか』と質問された時だった。それに対するユニスの回答はこうだった。
『当面は2人でやっていく。が、いずれはメンバーを増やさないといけないだろうな。だがメンバーにするには実力はもちろん、信用できるヤツじゃないとだめだ。ま、そんなヤツそうそういないか。』
「え・・ちょっと、確かにそれっぽいこと言ったことはあるが、最後のところの意味取り違えてないか?」
ユニスが言った『いないか』は推定、断定の意味。一方ミネベアの語ったユニスの言葉は質問、依頼の形になっている。言葉としては同じだがイントネーションで全然違う意味になっている。
「あら、そうなんですか?私はてっきりメンバー探しを依頼されたのかと・・・。」
頬に手を当てて小首をかしげるミネベア。
(・・・あ、これ絶対判ってて言ってる。)
ミネベアのわざとらしい様子にユニスとプリシラはそう確信した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます