第4話 箱の性能

「次はこれか。「LV3 能力収納」」


 ユニスはLV3をタップした。すると次の説明が現れた。



『LV3 能力収納:自身の能力を箱の入れることができる。箱に入れたままでもその能力は発揮される。』



「能力。・・・て言うとこれか」


 ユニスはカードをステータス表示に戻し、ある部分を見つめた。


能力

 剣術 LV3

 体術 LV2


「これを箱に入れることができるってことか。試してみよう。」


 ユニスは「剣術を登録」と、念じた。するとステータス表示から「剣術LV3」が消えた。

 ユニスがカードを操作し、箱一覧の中身を見てみると、



「1 経験値(75)

 2 お金(0)

 3 体力:1/180

 4 魔力:0/30

 5 剣術 LV3


「確かに剣術が箱に移動している。しかし・・・これは何か意味があるのか?」


 箱に能力を移動してもその能力は発揮されると書いているので、使えなくなるわけではない。しかし箱の中に移動させて何かできるわけでもなく、ただ単に場所が移動しただけという感じしかしない。


「・・・わかりませんね。でもわざわざ能力を箱に入れるからには、意味があると思うんですが。」


 プリシラも考えているようだが、メリットが思い浮かばないようだ。

 2人でしばらく考えたが結局よくわからないまま、『いずれ分かるだろう』ということで今は保留ということになった。


「さてと、次はこっちだな。」



・登録 一覧表示(49)

・収納 LV3

・性能 LV4



 ユニスはもう一方の「性能」をタップした。すると、以下の表示が現れた。


性能 LV1 増加

   LV2 時間設定

   LV3 鑑定

   LV4 貸与


「・・・これは、項目を見るからにすごいとわかるぞ。」


 現れた4つはどれも使えそうなものばかりだ。

 ユニスはワクワクしながらまず「LV1」に触れた。


「LV1 増加:箱に入れたものを増加させる。増加量 1/20(1週間ごと) 0以下の端数は切り捨て」


 このLV1は最初からあるもので、すでにユニスもその効果を確認済だ。


「経験値は知ってたが、お金も同じ割合で増やせそうだな。」

「それにこの説明だと、他の物も増やせそうじゃないですか?」

「確かに・・・」


 説明では「箱に入れたもの」となっていて、経験値やお金などという限定されていない。だから例えばポーションや魔石なんかを入れておけばどんどん増えていくという可能性がある。

 しかし切り捨てがあるので、増やせるにしても最低20個以上入れないと増えない。今は手ごろなものがないし、1週間後じゃないと実際に増えたか確認でできない。

 今後確かめていくしかないので、今は置いておくことにした。


 次にユニスがタップしたのは「LV2 時間設定」だ。


「LV2 時間設定:個別に箱内の時間経過を設定できる。現在4段階:停止、1/2、通常、2倍」


「箱内の時間の進みを変えられるのか。これもすごい。」

「時間を止めておけるなんて、とんでもないですよ。」


 時間を止めることができる収納袋のようなマジックアイテムは、一応あることはある。しかし高レベル魔物のドロップ品であるため数も少なく、当然のことながら非常に高価で、それでも高レベル冒険者やパーティがこぞって欲しがるほどの物だ。

 また時間を止めるだけじゃなく、ゆっくりにしたり逆に早くしたりもできるようだ。これも使い道はあるだろう。


「あらためて、ユニスの「箱」ってとんでもない能力なんだって感じます。」


 プリシラが感心したように言った。

 しかもまだ終わりじゃない。まだ未確認の能力が残っているのだ。ユニスは想像以上の箱の性能に、自分の事ながら戸惑いを覚えるほどだ。


 気を取り直してユニスは「LV3 鑑定」をタップした。


『LV3 鑑定:箱に入れたものの名称、性能を鑑定することができる。』


「鑑定か。これも使えそうな性能だな。」


 箱の中に入れた物がどういったものであるか、それを示してくれる能力のようだ。見たこともないドロップ品なども、箱に入れればわかるということか。

 個人で「鑑定」の能力を持っている者もいるがそれと同じことができるということなのだろう。ただし箱に入れなければならないという制限がある。しかしその制限があったとしても、使える能力であることには変わりがない。


「試してみたいが、何か鑑定したいものがあるかな?」


 ユニスが部屋の中を見渡した。荷物があまりないので碌な物を持っていない。

 ユニスを見ていたプリシラが、気づいたように言った。


「そこにいいものがあるじゃないですか。」

「?」

 

 ユニスは怪訝そうにプリシラを見て、その視線の先を確認した。視線はユニスの腰のあたりに向かっていた。ユニスの腰にあるものは・・・。


「そうか、サイクロプスの『剣』だな。」


 ユニスは自身の腰に下げている剣を持ち上げた。この剣はサイクロプスを倒した時の宝箱から発見されたものだ。あれから暇もなく、ギルドで調べてもらってもいない。

 ユニスは剣を手に、「剣を登録、収納」と考えた。すると目の前から剣は消えた。

 ユニスがギルドカードを操作すると、次の表示が現れていた。


登録 1 経験値(75)

    2 お金(0)

    3 体力:0/180

    4 魔力:0/30

    5 剣「ジャイアントキラー」

    6  ー

    7  ー


「・・・この「ジャイアントキラー」ってのがあの剣の名前ようだな。」


 ユニスはてっきり「剣」という表示だけが現れると思っていたが、実際には剣の名前であろう「ジャイアントキラー」と表示されていた。


「ということは、この箱は「ジャイアントキラー」1本しか入れられないってことか?」

「名のある装備は、普通の装備とは違って1つの箱が必要になるんじゃないでしょうか。」


 そうプリシラが推測した。十把一絡の普遍的な剣ではなく、高位の名剣は単独の箱が必要となるということなのだろうか。

 それぞれ箱が必要になるのは少し残念だが、それだけ貴重な品であるという証でもある。箱を単独で使うほどの価値があると思えばマイナス要因など気にならない。

 ユニスはさっそく「ジャイアントキラー」をタップした。


『ジャイアントキラー:両手剣。巨人系統の魔物からまれにドロップする。筋力+20。破壊耐性(中)。』


「なるほど、これが鑑定の能力か。いろいろなことがわかるな。」

「この剣、2つも追加能力がありますよ。すごいものですね。」


 鑑定で分かったことは、剣の名前「ジャイアントキラー」と、その付加効果。筋力が+20も加算されるほか、壊れにくい破壊耐性もついている。初級ボスからのドロップ品としては破格の物だ。


 ユニスは剣の性能もさることながら、鑑定の性能にも大いに満足するのだった。

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