第3話 登録できるもの
ユニスがボス部屋でレベルアップして以降なかなか時間が取れず、箱の能力の確認が後回しになっていた。ようやく一息つけるようになり、念願の『箱』がどうレベルアップしたかを確認できる。
「箱の能力ですか。すごく興味があります!・・・でもいいんですか、私に教えても。」
通常、冒険者は自分の能力についてあまり公にしない。情報が知られるということは弱点になるからだ。だがユニスはあっさりと言った。
「構わないさ。パーティを組んでるんだから隠したっていずればれてしまうだろう。それに俺もプリシラの能力も知ってるんだ。プリシラに隠すつもりはない。」
お前を信用している、そう言われたようでプリシラは嬉しくなった。
「わかりました。一緒に確認しましょう。」
2人はユニスのギルドカードを一緒に見た。ギルドカードにはこう記載されていた。
箱 LV7
ユニスの箱は、ユニスのレベルアップと同時にLV7まで上がっていた。このレベルアップによりどういう効果があるのかを調べるのだ。
ユニスは「箱」の部分をユニでタップした。すると新たな表示が現れた。
・一覧表示(49)
・収納 LV3
・性能 LV4
「・・・何だろうこれは。一覧?収納LV、性能LV?」
「わかりません。」
「とにかく、タップしてみていくか。」
分からなければ試していくしかない。ユニスはまず「登録(49)」をタップした。するとカード全面にこう表示された。
数量 49
1 経験値(75)
2 ー
3 ー
4 ー
5 ー
・・・
表示はどうやら下にスクロールするようで、ユニスがスクロールしていくと、
・・・
45 ー
46 ー
47 ー
48 ー
49 ー
と、49で最後だった。
「これ、もしかして箱が49個あるってことじゃないですか?」
プリシラが気づいたように言った。確かに「数量 49」とあって、最後が「49」だ。
「なるほど、そうか。」
ユニスはスクロールを戻して「2」の部分をタップした。すると
2 登録なし 登録するものを設定してください。
と表示された。
「やっぱり新しく登録できそうだ。」
ユニスは試しに「お金を登録」と頭の中で念じた。
すると、
1 経験値(75)
2 お金(0)
3 ー
4 ー
5 ー
・・・
と、カードの表示が変わった。
「2が『お金』になってますね。」
「そうか、やっぱり箱の数が増えて、その分いろいろと登録できるみたいだ。これはすごいぞ。」
登録できる数が一気に49に増えている。それだけあればいろいろと登録できて、かなりの物を収納しておけそうだ。
ユニスはいきなりのハイスペック情報に嬉しくなった。
「よし、何が登録できるか、条件や制限がないか、いろいろと試してみようか。」
2人は思いつく様々なものを登録をして試してみた。すると次のことがわかってきた。
・お金や物も登録して入れておける。
・同じ登録を別の箱にはできない。たとえばNo1に登録している「経験値」を3にも登録しようとしてもできない。
・同種類の物と判断されたものは同じ箱に収納される。
ユニス達は初級ポーションを登録して入れてみた。店によって若干ビンの形状に違いがあるが、箱は『同じもの』と判断して同じ場所に入っていた。同じか違うかは箱が判断するみたいだ。どのあたりまでが許容範囲なのかはこれからいろいろと試してみるしかないだろう。
・生物は入らない。だたし植物はOK。生物の死体(肉)もOK。
ざっと調べてこのくらいのことがわかった。もっと詳細に調べればいろいろわかるだろうが、今はこのくらいでいい。これからおいおいわかってくるだろう。
「しかし、49個ってなんか中途半端な数字だな。なんで50個じゃねえんだ?」
「確か「箱LV7」でしたよね。もしかしたらLV数の掛け算で箱の数が決まってるんじゃないでしょうか。」
プリシラの予想に、ユニスはなるほどと思った。7×7=49。この数字以外に考えられない。LV2から6まですっ飛ばしているので絶対とは言えないが、そう考えて問題ないだろう。次にLVが上がった時に確実にわかるはずだ。
「よし、次はこれだな。」
ユニスは一つ前の表示に戻した。
・一覧表示(49)
・収納 LV3
・性能 LV4
ユニスは「収納 LV3」をタップした。すると画面が切り替わり、以下の表示が現れた。
収納 LV1 物収納
Lv2 体力、魔力貯蓄
Lv3 能力収納
「んん??LVが上がって色々入れることができるようになってるが、・・・体力や魔力とか、そんなのも入れられるのか?」
ユニスとプリシラは顔を見合わせた。予想外のことで二人とも理解が追い付いていない。
「とりあえず説明を見るしかないか。」
LV1は最初からある能力だから、さっき調べた内容と同じのはずだ。
だからユニスは次の「LV2」をタップした。
『Lv2 体力、魔力貯蓄:体力、魔力を設定することができる。体力、魔力を設定すると箱の中に体力、魔力値が貯蓄される。最大値は当人の体力、魔力の最大値と同じ。当人が体力、魔力を消費した場合は箱内から最初に消費される。』
「・・・わかったようなわからないような。」
「これって簡単に言うと「体力」「魔力」が増えるってことじゃないですか?」
「そうか。登録してみればわかるな。」
ユニスはNo3に体力、No4に魔力を登録してみた。すると表示はこうなった。
『 ・・・
3 体力:0/180
4 魔力:0/30
・・・』
「登録出来たぞ。体力180、魔力30は今の俺のMAX数値と同じだな。でも両方とも「0」だ。」
「登録したばかりで貯まってないんじゃないでしょうか。」
「ちょっと元のステータスを見てみよう。」
ユニスがステータス画面をもとに戻すと、体力と魔力のところに(括弧)が追加されていた。
――――――――――――――――――――――――――――――
「ステータス」
名前:ユニス
ランク:E
職業:戦士
レベル:30
SP: 10
体力: 180/180(+0/180)
魔力: 21/30(+0/30)
知力: 100
筋力: 150
敏捷: 140
器用: 80
耐久: 80
能力
剣術 LV3
体術 LV2
特殊能力
箱 LV7
――――――――――――――――――――――――――――――
「こんな表示になるのか。」
「時間が経てば体力も魔力も回復しますよね。ちょっと待ってみましょう。」
体力も魔力も、3分で1だけ回復する。2人は3分待つことにした。
そして3分後、表示が変わった。
――――――――――――――――――――――――――――――
体力: 180/180(+ 1/180)
魔力: 22/30(+ 0/30)
――――――――――――――――――――――――――――――
「体力が増えてるぞ!・・・でも魔力は増えてないな。」
( )内の体力は1増えているが、魔力は増えなかった。しかしユニスはその理由に気づいた。
「魔力がMAXじゃないな。さっきいろいろ試してたから魔力が減ってたんだな。だから箱内の魔力が増えなかったのか。」
ユニスはこの体力魔力貯蓄の仕組みがわかった。箱に体力や魔力を設定しておけば、元のステータスがMAXになって以降はさらに箱のほうに貯まっていくのだ。
そして説明では、体力も魔力も箱内の貯蓄分から減っていくらしい。
「ユニス、これはすごいですよ。箱に自分のステータスと同じ分だけ体力と魔力を貯められるから、単純に体力と魔力が2倍になりますよ。」
プリシラの言う通り、箱に体力と魔力を貯めればそのステータスは倍になるということだ。これは戦闘においてかなりのメリットになる。
「これはとんでもないな。こんなに能力をアップさせてくれるなんて。『箱』は想像以上にすごいぞ。」
「それにまだ半分も試してませんよ。」
「そうだな、そうなんだよな。ふっふっふっ・・・」
ユニスは特殊能力「箱」の高性能さににやけることを抑えられなかった。が、プリシラの視線に気づくと、あわてて顔を引き締め直した。
「コホン・・・じゃあ、次の確認をするぞ。」
ユニスとプリシラは、次の能力を確認するためギルドカードに目を向けた。
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