第10話 ステータスカード

 ユニスのステータスは、こう書かれていた。


「ステータス」

名前:ユニス

ランク:F

職業:戦士

レベル:1

SP:50


体力: 20/20

魔力: 0/0

知力: 14

筋力: 16

敏捷: 8

器用: 5

耐久: 7


能力

 剣術LV1

 体術LV1


・・・


「まずは体力、魔力、知力、筋力、敏捷、器用、防御の7つのステータスについて説明します。

 この7つは個人の体の基本的な力を数値化したものと言えます。体力は健康度、魔力は体内の魔力量、知力は頭の良さ、筋力は物理的な力、敏捷は素早さ、器用は技術のうまさ、耐久はスタミナや防御力を示します。」


 そう教えられて、ユニスは改めて自分のステータスを見る。


(ふーん、これが他の人と比べてどうなのか分かんないけど、「魔力0」ってのはちょっと残念だな。俺には魔法の才能が無いってことか。)


 ユニスはがっかりしたが、もともと剣を使う方が好きだし、剣士になりたいと思っていたので、仕方がないとあきらめることにした。


「皆さんのステータスの合計値を計算してみてください。合計値50が平均値で、それより多ければ基礎的な力が高いと言えます。」


「私は52だわ」

「俺はちょうど50」

「俺は、70ある。」

「「え!」」


 ユニスの数字を聞いて、エリザとマルクは驚いてユニスのカードを覗き込んだ。


「すっげぇ、本当に70ある。」

「さすがユニスだわ。ステキ!」


 ユニスは小さいころから運動が万能で、なんでもそつなくこなせる。それが実際の数字で表された形だ。

 2人がユニスを中心に騒ぎ立てたが、セイアがそれをやんわりと止めた。


「70はすごいですね。なかなか高い数字です。でも、皆さんお静かに。まだ説明の途中です。良く聞いておかないと後で困ることになりますよ。」


 3人はあわてて口を閉じ、それを見てセイアは説明を続けた。


「次に職業について説明します。職業とは簡単に言うと「得意分野」です。職業は、その職業に関連の深いステータス項目を強化する効果があります。」

「強化って、どういうものなんだ?」

「例えば、・・・マルクさんの職業は「騎士」でしたね。」

「ああ。」

「騎士は『守り』が得意分野です。そのため守りに関するステータスが強化されます。具体的には、耐久が2割増し、体力が1割増しになります。」

「へー。」


 騎士の職業の者は、例えば耐久が10であったとすると、それが2割増しとなって実質12の耐久値となる。今は数字が低いが、レベルが上がり耐久値や体力が上がっていけば、その割り増し分で高い耐久性能が得られる。。


「魔法使いは?」


 エリザが勢い込んで質問する。エリザの職業は「魔法使い」だった。


「魔法使いは、魔力が2割増し、知力が1割増しです。」

「俺、戦士だけどどうなるんだ?」

 

 ユニスが質問すると女性はユニスを向いてニッコリとほほ笑んだ。


「ユニスさんの『戦士』は、『剣士』の上位に当たるレア職です。レア職は10人に1人くらいで現れる職業で、その分能力も高くなります。」

「「「レア職!」」」


 レア職と聞いて3人はまた騒ぎ始めたが、セイアがコホンと咳ばらいをすると、バツが悪そうにおしゃべりをやめた。


「『戦士』は戦う者らしく、筋力、体力、さらに敏捷も上がります。筋力が4割増し、体力が2割増し、敏捷が1割増しです。」


 ユニスの職業「戦士」は、レア職らしく割り増し量も多かった。ユニスはとても喜んだ。


(俺、こんなにいろいろもらっちゃってすげえ。これなら3人で冒険者としてやっていけるどころか、天辺まで行くのも夢じゃないかも。)


 ユニスは子供らしく怖いもの知らずで、楽観的にそう感じた。


 続いてセイアは『能力」について説明した。


 能力は、先天的なものと後天的なものがあり、登録したばかりの今ステータスカードに現れている能力は先天的なものだという。

 ユニスは「剣術」と「体術」が現れている。これが先天的なもので、個人が得意な分野が出てくることが通例だ。


「私は火魔法と風魔法だわ。」

「俺は槍術と楯術」


 エリザとマルクも得意な分野と思われる能力が出現していた。

 この「能力」はどんどん使っていけばどんどんLVが上がり強くなる。この能力を上げるのが強くなるための常とう手段だ。


 この能力欄に欲しい能力がない場合はどうすればいいのか。それには、欲しい能力を使い続ければいい。例えば弓を使い続けたら「弓術」が能力欄に現れることもあるのだという。魔法は呪文を唱え続けることでその魔法を得ることもできる。ただ個人差もあり、必ず現れるとは限らないらしい。

 努力しても得られなかった場合、どうしても能力が欲しい人は、「能力の巻物」と呼ばれるものを使えば能力を得られる。

 「能力の巻物」は、ダンジョンでごく稀にドロップするアイテムだ。それを使えばユニスでも火魔法や楯術などの能力をすぐさま手に入れられるが、そういったものはご多分に漏れず値段がバカ高い。少なくとも冒険者を初めて数年の新人が手にすることが出来るような代物はない。


「次はステータスポイントについて説明します。」


 セイアが3人に説明を始める。


「ステータスの上方に「SP」という項目があります。これは「ステータスポイント」と言って、このポイントを各能力に割り振って増やすことが出来ます。今貴方たちにはSPが50あります。この50がレベル1の時に増やせるポイント数です。これを体力や魔力に割り振って増やすことが出来るのです。」


 ギルドに登録してカードを作ると、最初にステータスに50ポイントを加算することが出来る。そのためこの国では冒険者じゃなくても、その50ポイント目当てでほとんどの人たちがギルド登録している理由だ。

 例えば木こりや漁師、鍛冶屋など力が必要な職業があるが、そんな人たちでもギルド登録すれば50ポイントがもらえて、力が強くなる「筋力」の数字をあげることが出来るのだ。頭を使う職業なら知力に、木工や細工師などの職人は器用にポイントを振れば、仕事をするうえで非常に役に立つのである。

 

「た・だ・し!」


 セイアがひときわ大きな声で3人の注目を集める。


「ここで絶対に注意しておかなければならないことがあります。ポイントは増やせますが、減らすことはできません。そして一度割り振ったポイントは取り消すことが出来ません。例えば、最初に体力が10あり、そこから10ポイント増やして20にしたとします。あとでやっぱり15にしたいと思いなおしても、もう減らせないのです。なのでポイントの割り振りは注意して行うようにしましょう。」


 その話を聞いて、3人はギルドカードを触る手をピタリと止めた。慌ててさわって変な数字が入ってしまのを恐れたからだ。

 その様子を見てセイアは少し微笑んで言った。


「あまり怖がらなくてもいいですよ。SPはレベルが上がるごとに20ポイント追加され、それを各能力に割り振ることが出来ます。最初に割り振りに失敗したとしても、あとでリカバーは可能なので、まずは恐れず、しかし慌てずにポイントを割り振ってみましょう。」


 レベルが上がればポイントは20加算されてさらに振ることも出来る。3人はそれを聞いて、幾分か安心した。

 その後セイアから、ステータスの数字の所をタップしてポイントを割り振るやり方を教えてもらった。また追加情報で5の倍数のレベルに上がったときは、ボーナスで50ポイント入るというありがたい話も聞いた。


「さて、カードの説明の最後は『特殊能力』についてです。この中に特殊能力をもっている方がいます。」


 セイアはもったいぶったように言葉を止め、3人を見回すと、そのうちの1人に顔を向けて言った。


「ユニスさん、あなたです。」

「え、俺?」


 セイアの話にユニスは驚きの声をあげた。

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