第3話お薬

薬局。

僕にとってあまり縁の無い所だ。

元々あまり風邪や病気にかかることはなかった、だからだろう薬局を含め医療系の施設に入ると少し緊張してしまう。

薬局の中に入りそのまま従業員専用の部屋?に案内された。

歩いている途中、

「雨凄いね~^^」

と喋っていたが、とりあえず無視した。

部屋は意外と質素。冷蔵庫や本棚等が置いてあり如何にも休憩処といった感じだ。

店内はあまり分からなかった。

正直、緊張していてそれどころじゃなかった。歩くのが精一杯だった。

これから警察に突き出されて親がおそらく来るだろう。そして家で殴られる。

その未来が見えて、もうしんどかった。

部屋の椅子に座らされタオルを渡された。

「ちょっと待ってて。お茶持ってくる~^^」

さっきから思っていたが、この人異様に顔がニコニコしている。

おそらく深夜まで働いて可笑しくなってしまったんだろう。

勝手にそう解釈した。

ガチャ(ドアが開く音)

「あれ、君和菓子好き?^^」

急にドアが開き顔だけだして僕に聞いてきた。

僕  「あ、え、えっと好きです。」

咄嗟に答える。

「りょうか~い^^」

そう明るく言い残しドアを閉めた。

なんだろうか、不思議な気分だ。

まるで僕がおもてなしを受けているかのような、そんな気分。

時計の針の音そして外の雨の音が部屋に響く。

この後僕はどうなるんだろう。

そう考えているとドアが開きニコニコしながら薬剤師が戻ってきた。

手にはお茶と餅?を持っている。

これでは本当におもてなしじゃないか。


目の前に、お茶と緑の餅が置かれた。

「ずんだ餅って知ってる?^^」

「し、知らないです。」

「仙台の名物郷土菓子なんだよね、美味しいよ^^」

「は、はい」

気が狂う。

今まででこんな待遇受けたことなかった。

優しさまで感じる。

恐る恐るずんだ餅を食べる。

未知の味だった。甘みも少し感じる。食感はこりこりした餅。

好みは分かれるだろうが僕は好きだ。

「どう?美味しい?^^」

「美味しいです。」

「よかった~^^」

なんかとても喜んでいる。

しかし、疑問に思わないんだろうか。

この深夜に16の少年が歩いている事に。

普通なら思うはず。

しかしこの目の前にいる人は笑顔で僕の食べている姿を見ている。

「ところで、君さ^^」

緊張が走る。

体中から汗が噴き出る。

「もしかして家出少年かな~?^^」

終わった。

いや、この人は最初からその事実を知っていて案内したんだろう。

「はい、そうです」

素直に答えた。

言い逃れはできないだろう。

深夜に少年が歩いている。だいたいの人が家出と思うはずだ。

「やっぱりね~^^」

そう言い放ち笑いながらドアの奥に向かっていった。

おそらく警察に電話でもしに行ったのだろう。

もしや助けてくれるのではと一瞬思ったが、現実は甘くない。

せめて餅だけでも食べていくか。

程なくしてドアが開き片手に薬が入った瓶を持ってきた。

椅子に座り瓶の蓋を開けて、

「これあげる^^」

そう言って目の前に1錠の薬が置かれた。

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