第14話 いざ、パルティア
「それにしても、フェンの“童貞”って凄いね! まさか便利なスキルを覚えちゃうなんて」
マリィは興奮した様子で言う。
言い方は随分とアレだが、その言葉の指す意味に関しては俺も納得だ。
炎人との戦闘で、俺は新たにアビリティとスキルを得ていたのだが……。
――――――――――――
フェン 16歳 Lv.10
攻撃力:30(木剣+10)
防御力:20
筋力:35(+500)
回避速度:20(+400)
魔力:0
魔法防御力:15
称号:初恋を拗らせた童貞/神の観察対象
ジョブ:童貞
スキル:
・見切りの極意
・やせ我慢
・ワンフォーオール
アビリティ:
・精神攻撃耐性Lv.qWエrt
・回避速度アップLv.40
・剛力Lv.50
・炎耐性Lv.100
・幸運Lv.2
【解説】
・見切りの極意:認識できる攻撃に対して、適切な回避行動をとることができる。
・やせ我慢:一時的に防御力を飛躍的にアップさせる。しかしそのあと防御力が大幅ダウン。
・ワンフォーオール:一時的に自身の能力を仲間と共有することができる。
・精神攻撃耐性:精神に対するダメージを常に軽減する。
・回避速度アップ:攻撃に対する回避速度を常にアップさせる。(回避速度=アビリティLv.×10)
・剛力:攻撃時に使用する自身の筋力を常にアップさせる。(筋力=アビリティLv.×10)
・炎耐性:耐性温度までに生じる高温ダメージを無効化させる。(耐性温度=アビリティLv.×1℃)
・幸運:アイテム習得確率が少しだけアップする。(成功率=30%+アビリティLv.×10)
――――――――――――
俺自身のレベルも上がったのだが、一番大きな変化は“ワンフォーオール”というスキルを覚えたことだった。
ルミナ様の解説通り、俺のこの異常な能力値をマリィに分け与えることができるようになったのだ。
どうやら炎人との戦いで初めて共闘したことがトリガーになったらしい。
このスキルのおかげで、マリィを超強化することができるようになった。
欲を言えば“炎耐性”のレベルがアホほど上がってくれれば、マリィが燃えてしまうリスクを減らせたんだけど……。
「えへへ~。これで私たち、いつでも一緒に戦えるね!」
「あぁ、そうだな!」
マリィがそう言って笑うんなら、俺に文句などあるはずもない。
はぁ~、マジで天使。強くて可愛いとか完璧かよ。
いつの間にか幸運というアビリティがオマケで手に入っていたけど、マリィと一緒にいられる幸せに比べれば些細な問題だ。
「さて、モンスター狩りもこの辺にしようか。日がもうかなり高くなってきたし」
「そうだね! 私、パルティアに着いたら美味しい串焼きが食べたい!!」
「あはは、いいね。ちょうど豊穣祭が始まる時期だし、村じゃ食べられないものがきっとたくさんあると思うよ」
街に着いたら何をしようかと会話をしながら、地面に転がるモンスターからドロップ品を剥ぎ取って、収納ポーチの中にどんどんと詰め込んでいく。
村を出たときにはほとんど空っぽだった収納ポーチも、今はモンスターからゲットした品でいっぱいだ。
容量が少ない魔道具といえど、この七日間でアイテムを集めまくったおかげでかなりの重さになっている。これ以上は俺の“剛力”でも持ち運びが大変だ。
「むぐ、もごもごもご!」
「あー、はいはい。リゲルのことも忘れてないから心配しないで」
道中、ワーワーと騒いでうるさかったので、リゲルには口枷を付けている。
そうしたらスキルを使って抵抗しようとしたのだが、今度はマリィがリゲルの首に爪を当てて――
「あんまり調子に乗ってると、アンタの首か股間のアレをこの爪で引き裂くよ?」
――と低い声で脅すと、それ以降リゲルは大人しくなった。
その光景を見て、俺も股間がキュッとなった。
マリィは可愛いけれど、絶対に怒らせてはいけないな、うん。
◇
そうして戦闘を終えた俺たちは、聖都パルティアへとやってきた。
「えっと、まずは教会……いや、大聖堂に向かおうか」
「はーい! どんなところなのかな。楽しみだね、フェン♪」
俺と手を繋いだままのマリィはニコニコとした笑顔で言う。そして彼女はそのまま俺の手を引きながら歩き始めた。
聖都パルティアはこの国の中でも巨大な都市だ。
俺の生まれ育ったラッグの村が何十と入るほどの広さで、とてもじゃないが一日では歩きつくせない。
街を守るように大きな白亜の壁が周りを囲っており、訪れた者は北以外の三方にある門から中へと入ることができる。
ラッグの村方面からやってきた俺たちは、西の門から入ってきた。そこから職人街の通りを進んで、街の中央にあるパルティア大聖堂を目指していく。
職人街は鍛冶師や木工職人たちの作業音がそこかしこで響いていて、通りの
「それにしても、門番さんが優しい人で助かったね!」
「うん……完全に俺たち、不審者だったもんな」
西門はラッグの村のような田舎方面を向いているので、人通りが少なかったというせいもあるだろう。
先ほど俺たちが西門に到着したとき、門番は僅かに三人しかおらず、彼らは暇そうに欠伸をしながら立っていた。
そんな彼らは俺の姿(マリィ人形+グルグル巻きの男)を見てギョッとし、二度、三度と繰り返し見てから声を掛けてきた。
「お前は……旅の大道芸者か何かなのか?」
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