第6話 奇跡の奇声

俺はひたすらに観察した。ゲーム内時間で6時間。現実の15分がゲーム内の1時間なため、ログインしたのは昼2時そこまでは経っていない。




俺はひたすらに観察した。ゴブリンの話題に。


いや、これは真似出来ない。オレにゴブリンの言葉なんて分からない。




俺はひたすらに観察した。ゴブリンの行動に。


これも真似出来ない、何してるか全く分からないから




俺はひたすらに観察した。ゴブリンの鳴き声に。


これは真似出来るかもしれない。


まず、ギャッ⤴は興奮している時にギャッギャッギャッ⤴これは身振り的にも仲間に手招きしているから早く来い!的なものだろう。


ギャッグギッギャー!は手を振りながら言っていることから誰かという意味だろう。




そういえば、このゴブリンたちの声には一定のパターンがあるような気がする。




例えば「ギャッ⤵」という下がり調子の時は警戒している時だ。木の影に隠れながら周りを見回すような仕草と一緒に出てくることが多い。




「ギッ!ギッ!」という短い声は、何か見つけた時の合図みたいだな。




俺は機能の一つである観察メニューを開いて、新しい発見を書き込んでいく。




ゴブリンの鳴き声パターン


・ギャッ⤴(上がり調子)=仲間を呼ぶ


・ギャッグギッギャー!=誰かの存在を示す


・ギャッ⤵(下がり調子)=警戒


・ギッ!ギッ!=発見




突然、ゴブリンの一団が騒がしくなった。木の向こうで何かを見つけたようだ




「ギッ!ギッ!」


やっぱりな。発見の合図だ。




続いて「ギャッ⤴ギャッギャ↗」


仲間を呼んでいる。これは面白いな。




集まってきたゴブリンたちは、地面に何かを見つけて興奮してやがる。




「ギャッグギッギャー!」


俺の観察によると、これは「誰かいるぞ!」って意味のはずだ。




なるほど、足跡か。多分俺のかもしれないそこらへんは最初にいた場所だ




ゴブリンたちの様子を見ていると、明らかにビビってる。いつもの威勢のいい声とは違って、小声で「ギャッ⤵ギャッ⤵」と警戒の声を出している。




観察メモ機能を開いて追記だ。


発見した足跡への反応


・通常より声が小さい


・警戒の声が連続


・集団の間隔が狭まる




面白いな。説明には残虐性が高いと書いていたから頭がないのだと思っていたが




リーダーらしきゴブリンが足跡の周りをクンクン嗅いでる。こいつら、鼻も結構いいのか?




「ギッ...ギャッ!」




多分だけどこいつは人間だ!てきなものだろうか。


それにしてもこいつがリーダーで間違いはなさそうだな。


心做こころなしかほかよりも背が高いしな




「そうか...あの声を真似れば...」




観察メモ機能を開いて新しい発見を追記する。


ゴブリンの階級制かいきゅうせい


・少し背が高いのがリーダー格


・他のゴブリンは必ずリーダーの後ろに集まる


・リーダーの声に合わせて動く習性あり




よし、計画は立った。まずはリーダー格の声を完璧に真似て、残りのゴブリンを誘導する。その後、時限式広範囲爆弾だいばくはつ!を仕掛けて...




「ギャッ⤴ギャッギャッギャッ⤴」




極力真似きょくりょくまねて声を出してみた。すると、予想通り数匹のゴブリンが反応を示す。




「ギャッグギッギャー!」


今度は「誰だ?」という意味の鳴き声を投げかけてきやがった。




「ギャッ⤴」


俺は即座にリーダーの声で返す。これは「こっちだ!」という意味のはずだ。




案の定、十数匹のゴブリンが動き出した。こっちに向かってきている。




「計画通り...」




俺は静かに時限式広範囲爆弾だいばくはつ!を取り出した。タイミングは一瞬。ゴブリンたちが窪地くぼちに集まってきた時を狙う。




その時、背後から不自然な足音が聞こえた。


まさか...上位種?




「クソッ...ここで来るか」




ピコン!


新規エネミー発見!


『ゴブリンロード』!!




システムからの通知が、最悪のタイミングで表示される。


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