アラウンド・テアトルム〜作業が好きなだけで作業厨じゃない〜
野良犬の王
第1章 見据える先は地平線
第1話ゲームをする理由とは?(艶声)
膨大なる力によって世界を脅かしていた魔神ガイダンスが今1人の男によって倒された。その身からキラキラと輝く粒子のようなものが、その後某戦隊登場のごとく弾け飛んだ。そして眼前にはデカデカとCLEAR?の文字が出てくる。男の近くには涙を流し笑顔を向けながら飛びついてこようとする少女がいた。
『あぁ……世界が…世界が元の姿に…戻っていく…ありがとう!……』
さて、ここで疑問に浮かんでいる者を解決しよう。何故CLEAR!ではなくCLEAR?なのか。。。
『さぁ!勇者様…!今こそ…世界を統治するのです!』
そもそも今考えれば、なんでこれをやっているのかも分からない。色んな思い出というか痛い目というか辛い日々を乗り越えてついにここまで来た。俺は真顔で木の棒をバットのように構える。
「何言ってんだ、まだ作業終わってないだろう」
めんどくさい故に多くの人達を困らせてきた。
この木の棒も初期装備として支給されるが、1度装備しますと決定してしまったのが運の尽き、CLEARまでこのままという鬼畜すぎる所業。
そのためにあらゆるギミックを研究観察し、特定の部位に当てると確実に死ぬ技
「修正破壊(クラッキングスイング)」が今少女の顔面にぶちあたり、このゲームのメインヒロインたる人間が吹っ飛んでいった。
しかし、ゲーム特有のNPCなのか、それとも自分あまりのも唐突すぎてリアクションする暇すらなかったのか少女は笑顔のまま粒子となっていった。
デデーン!!CLEAR!!!
眼前に表示されるCLEARの文字。つい数分前までとは違い、?ではなく!となっている。
「…ふぅ……終わったか。思えばクソほど時間かかったな、そもそもラスボスまで初期装備というのがおかしすぎる。しかも是が非でも初期装備にさせたいという運営の思考が終わってやがるな。Lv1で装備できるこの木の棒攻撃力5とカスみたいなもので、スライムの体当たりこれ攻撃力10というのも意味わからん。てか、たとえ初期装備を断ったとしても次の装備が装着できるまでLv30というのもまじでウザかった。初期エリアでどんだけ頑張ってもLv20しか行かなかったんだぞ?ほんとこの木の棒でどんだけ頑張ったか…」
今までの愚痴をひたすら言った。CLEARの文字がデカデカと出ているのに関わらず愚痴が止まらない。
「そもそもだ…中ボスのでっけぇオオカミなんか体力500だぞ、お前どんだけ木の棒叩いたと思ってんだよ。防具に関しては木の棒と違って変えられたけど、それでも割に合わなすぎる。
さっき消えていった奴も『すごい!努力家ですね!』とか言って木の棒で叩く姿を褒め称える始末だしよ……
てかそもそもオオカミにちょっかい出したのアイツだしな!アイツが『かわいい』とか言って捕縛しようしとしたからそりゃ怒って襲われるわ!お陰で回避率100%とかいうスキルもゲット出来たからいいけどよ!」
愚痴が止まらないが決して当初はこんな最悪な気持ちでゲームを始めた訳では無い。最初は俺も純粋に楽しんでいた。
元々某何とかクラフトとかいうゲームも整地に始まり整地に終わるという謎の志でゲームしてたし、そこまで作業には辛さを覚えない。
一般的にはこんなこと言うやつ作業厨だろって思うだろうが単純に楽しみがそれと言うだけであって決して決して!作業厨ではない。
さてこの俺がクリアしたゲームだが軽く内容を説明しよう。
ゴッド・テンタクル・オンライン。世の中にVR技術が浸透してちらほらと色んなゲームができる中、初の自分で五感が感じられるファンタジー物である。いわば俗に言うMMORPGというやつである。元々TVゲームででたり、それらを大幅に改善して発売された。元のゲームとしては一般的な評価でクソゲーというものもいれば神ゲーと言う者もいる。
かく言う俺もいいゲームだとは思っていた。そしてVRMMORPGとして発売された当初めちゃくちゃ期待されていた。
しかし、先程愚痴を言いまくった通り蓋を開けば、クソクソクソ、このクソという2文字で片付けられた。
自分が主人公としてサポートがそれぞれ選べるのだが、初級攻撃魔法と初級補助魔法しか使えないゴミ賢者と5回に1回しか回復しない、しかもわずか10%の回復力しかない聖女。攻撃も支援も出来ないが、一定のLv事にいい武器または防具を買ってくる少女。
ゴミ、ゴミ、マシといったもういらないんじゃないかと言うくらいの最悪なゲームと化していた。
それにこの最悪な仲間に拍車をかけるかのように敵Mobもクソだった。「じゃんけんで負けると身につけている1番高価なものが消滅する」といったクソ野球拳をさせる奴や、「身につけている防具を無効化する能力」を持つMobだったりと最悪だった。
しかし、唯一このゲームをやり続けた者たちが、揃って高評価を与えたのが魔神の右腕「オケアノス」という敵Mobだった。
こいつの能力は「自分の武器と相手の武器の能力の入れ替え」だった。このゲーム、いくらクソと言っても初期装備は捨てるのがマージンとされており、俺みたいなやつは規格外も規格外。
当然ラスボス1歩手前のボスに木の棒で挑んだやつなんかほとんど居ない。しかし、その高評価を与えた者たちは「木の棒の集い」というゲーム掲示板で名を馳せる者達であり、俺もそのひとりだ。
話は戻るが「能力の入れ替え」、敵Mobはあえて弱い装備を持っておくことで、やってくるプレイヤーの強武器と入れ替えるクッソ運営のキモイところが垣間見える。
しかし、俺たちは木の棒。いくら敵Mobから弱くても攻撃5より上の装備なんて俺らにとっちゃ神様がくれた祝福としか言いようがなかった。
まあ、それでも倒すと能力は戻るからラスボスはただの根気という名の作業になってしまったんだがな。
まあ、ここまでいろいろ述べてきたがこれだけは全て共通しているのは
「もはや、作業じゃん」
そう言ってCLEAR!!!の画面と共にゲーム終了のボタンを押すのだった。
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