第10話 灼熱の竜

【名前無し

 ドラゴニュート Lv43/80

 スキル 鑑定 槍術 再生 怪力 威圧 剣術 空間収納 探知 魔力操作 火魔法 魔力鎧 竜鱗 思考加速 熱耐性   】


アレからどれだけ経ったか知らないけど、いつの間にかレベルが43になり熱耐性のスキルを手に入れていた。

溶岩地帯はどうやら数階に渡って続いているらしく、今は六階層。

生まれたところから数えると二十六階層だ。

二十五階層で、なんか無駄にデカイ炎を吐くムカデを倒したけど、それ以降ムカデ以上の強敵は見ていない。

数回ドラゴンらしき気配は感じたけど、探知に引っかかっただけで見たわけじゃない。

そして、特に苦労することなくここまで来た訳だけど…


【名前無し

 ヨトカレ Lv30/80

 スキル 熱無効 遊泳 熱纏 厚鱗 怪力                 】


雑魚モンスターもだいぶ強くなってきた。

真正面から戦うと、それなりに厳しいけど…


「ガアッ!?」


後ろから剣を突き刺して、首の骨を粉砕すれば一撃で殺れる。

慣れてくると、この骨を砕いた時の硬いものが粉々になる感触がたまらなくなる。

一回経験してみるべきだね。

こう、首の骨がある場所を狙って、思いっきり剣を突きだす感じ。

できれば先端が尖ってて、力が集約しやすい形の……


首の骨を粉砕することの良さを熱弁していると、探知の隅に奇妙な気配が入ってきた。

その気配は、強大なようで弱く、濃いようで薄い。


おそらく、気配を隠しているんだろうど……隠しきれてないんだよね。

いや、完全に隠す気がないのかな?

自分の気配を察知した他のモンスターが逃げないようにするために、逃げない程度に調節してるとか…

完全に気配を消すのはとんでもなく難しいだろうから、最低限の隠密をして、後は放置的な?


気配を隠す気がないドラゴンがどんなものなのか考えていると、急にドラゴンが移動を始めた。

それも、私の方向に。


「シャアアア!?(見つかった!?)」


もしかしたらこっちに用事があるのかも知れないけど、それにしては動きに迷いがない。

やっぱり、私の事を狙っているのかも…


私はドラゴンへの警戒心を高め、退路があるかどうかも確認しておく。

そして、超スピードで私に接近するドラゴンの気配が、徐々に鮮明になってきた。


ソレは、あまりにも大きく、とても隠密で隠しきれるものではなかった。


このドラゴンは、私が今まで見てきたドラゴンとは格が違う。

何もされていないのに、気配だけで体が重くなる。

これは、スキルによる効果じゃない。

私の体が、アレに恐怖して動けなくなっているのだ。


こうして、圧倒的な気配に押され、動けずにいた私のもとに、ドラゴンがやって来た。


「グルルルルル…」


まるで、高層ビルの前に立っているかのような、自分がちっぽけに感じるほどの巨体。

鱗は黒の混ざった暗い赤。

角は今まで見てきたドラゴンが不格好に見えるほど立派で、このドラゴンの強さを表しているようだ。

体のいくつかの箇所が炎で覆われていて、マグマの近くに来たように熱い。

こんなに強大なドラゴンのステータスはどうなっているのか?

そんな好奇心から鑑定を使ってみる。

しかし、その結果を見て私は鑑定しなければよかったと後悔した。


【名前 グノー

 ドラゴン(上位竜) Lv158/300

 スキル 豪力 断爪 剛牙 逆鱗 火炎纏 飛翔 炎魔法 魔力操作 探知 隠密 威圧 咆哮 覇気 王力           】


圧倒的なレベル差に、上位派生したと思われるスキル。

ドラゴンの中でも上位竜に分類され、他の竜とは一線を画していた。

何より、初めて見る名前を持つモンスター。

それだけで、このグノーというドラゴンが圧倒的な力を持っているのが表されていた。


私みたいな、真正面からの戦闘では雑魚にさえ苦戦するような奴が敵う相手ではない。

コイツは、私とは比にならないほど…強い。


「グルルル…」


しばらく見つめ合ったあと、私に対して興味を失ったグノーは何処かへと飛び去っていった。

グノーが何処かへ行ってからも、私はその場に立ち尽くし、動けずにいた。

やがて、ようやく我に返った私は、自分の身に起こったことを思い返してブルブルと体が震え始める。


ハハッ…なにあれ?

上限レベルが300?

ほとんどのスキルが上位派生してる?

覇気や王力といった、未知のスキル持ち?

……はぁ。

あーダメだ。おかしくなってきちゃった。

あんなの勝てるわけ無いじゃん。

ちょっとでも蹴られたり、ぶつかられたりしたら死ぬよ?私。

ホント、化け物の中の化け物だよ。

どうしよう…次出会って生き残れる気がしないんだけど…?

というか、アイツ今までどこにいたの?

そこらを徘徊してるドラゴンが、ちょっと強いくらいの雑魚モンスターに見えてきたわ。


「シャアアア…」


大きな溜息をついて体から力を抜くと、探知を強めに使ってモンスターを探す。

いずれ、奴に狙われてもいいように、強くならないといけない。

そのためにも、積極的にモンスターを狩ってレベルアップする必要がある。

私はまだ、こんなところで死にたくはない。

こんなところで終わりたくない。

とりあえず、当面の目標は定まった。

グノーに負けない、狙われても逃げられる力を付ける。

そして、最終的にはグノーを倒す。

この溶岩地帯最強の名を頂こうじゃないか。

その頃には、もうほとんどのモンスターには負けない化け物になってるだろうけど。

何より…


「シャアア…シャアアアア(アイツを…殺したい)」


とんでもなく強い奴が現れ、私はとても興奮してる。

アレと戦って勝ったら、どんな最期を見せてくれるんだろう?

アレの最期はどんな形で訪れるんだろう?

気になって気になって仕方がない。

グノーの最期を見るために…

溶岩地帯最強のドラゴンを殺すために…

私は、強くなる。

強くなって、必ずやグノーを殺してやる!

やつを殺すのは他のドラゴンでも、神でもない。この私だ!

私がグノーを殺る。


そう心に決めると、私は獲物を探して歩き回る。

全てはグノーを倒すため。

自覚はある。自分がサイコパスであるという自覚が。

狂っているという自覚が。

だからこそ、私の執念は凄まじい。


初めてグノーと接触してから二週間。


【名前無し

 ドラゴニュート Lv80/80    】


ようやく、レベルがMAXまで到達した。

次は何に進化するのか?

これで、どの程度グノーと差が縮まるのか?

私は、その事に心を踊らせていた。

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