第5話 side ある男性の日記

○月☓日


今日は数年ぶりの大地震が発生した。

俺の家も地震の影響で家具が倒れたり、ものが落ちてきたりして大変なことになった。

片付けが面倒だったが、それ以上にライフラインが止まってしまった事の方がヤバイ。

冷凍庫の中身が駄目になる前に復旧するといいんだが…


○月□日


どうやら昨日の地震は日本全体で。

ましてや、世界規模で発生したものらしい。

震源は未だに不明で、突然全世界の地表が揺れたような状況らしい。

急に全世界の地表が揺れるとか、終末論が好きなやつが歓喜しそうな話だが…俺としてはまったく嬉しくない。

この混乱は長く続きそうだ。


☓月○日


世界規模で大地震が発生してから三週間。

日本はようやく元の日常を取り戻しつつある。

不思議なことに、家具が倒れたり、物が落ちたりという被害は各地で起こっていたが、あれほど揺れたにも関わらず、建築物に対する被害はごくわずか。

老朽化して今にも崩れそうな建物や、地震発生の二次被害で倒壊した家のほうが多いらしい。

それに、津波や土砂崩れが発生したという話も一切聞かず、本当にという状態。

それでも犠牲者は居るようで、俺の家の近所でも壊れかかっていたブロック塀が地震の影響で倒れて、女子高生が犠牲になったらしい。

その女子高生は可哀想だが、俺も一歩間違えれば頭の上に物が落ちてきて死んでいたかも知れないと考えると…少しホッとする。

そう言えば、家の裏にある山に山菜採りに行った人が、化け物を見たと騒いでた。

緑色の小人が襲ってきたとか、変な事を言ってたけど…どうせ見間違いだろう。

化け物なんて居るわけないんだから。


☓月☓日


化け物は居る。

ありとあらゆる情報媒体で、謎の穴に関する報道が毎日のようにされていて、俺も試しにこの前化け物を見たという場所に行ってみたら…確かにそこには化け物が居た。

しかも、俺を見つけた瞬間襲いかかってきやがった。

何度も引っ掻かれて痛かったが、蹴っただけで逃げ出すくらい弱かった。

化け物も意外と大したこと無いのかも知れない。


☓月△日


だいぶ状況が掴めてきた。

今世界では、『ダンジョン』と呼ばれる謎の異空間が出現している。

そして、化け物――モンスターはそのダンジョンの中に生息していて、山奥の洞窟だったり、廃屋の扉だったり、海の底にある穴だったり。

とにかく、人の中々訪れない場所にダンジョンは出現し、人が多い地域にほど多発しやすい傾向にあるらしい。

東京では、既に14のダンジョンが見つかっているらしく、その全てが立ち入り禁止になっている。

また、ダンジョンの出現と同時に『ステータス』なるものが出現したそうだ。


【堀内賢也 

 人間 Lv1

 スキル 剣術       】


コレが俺のステータス。

この名前と種族とレベルとスキルが表示され、レベルが高いほど強い。

それと、スキルは必ず一人一つは持っているらしく、かなり個人差があるらしい。

中には詐術とか、洗脳とか、魅力とかいう凶悪なスキルもあるようで、スキルの良し悪しはその人の今後の人生に大きな影響を与えると言われている。

ちなみに、剣術といった技術系のスキルは、そのスキルに対応する技術を習得するというものであり、俺は剣なんて体育の授業くらいしか触ったことがないのに、近くの道場の先生と互角に戦えるくらいの技術が、いつの間にか身についていた。

夢でも見てるのかと思ったが、これは現実だ。

それと、中高生が噂していたのだが、ダンジョンが一般公開されれば探索者、シーカーと呼ばれる職業ができるらしい。

今は立入禁止かつ、自衛隊のみ入れるようになっているが、いずれは一攫千金を夢見る者達がダンジョンへ向かうらしい。

あんな危険な場所、行きたくないが…俺も一人の男として、トレジャーハントには興味がある。

早く、一般公開されないものか…





月日は流れ……


□月☆日


ダンジョンが決壊した。

外でモンスター共が暴れ回っている。

今日も親父が趣味で買った日本刀を片手に戦ってきたが…まさかこんな事になるとは。

顔見知りが何人も死に、共に戦った幼馴染が俺の前で死にやがった。

だが、悲しんではいられない。

明日は我が身。

自分が死なない為に、俺はここで逃げるわけにはいかないんだ。

もう、何処にも安全な場所なんてねえ。

逃げられないなら…戦うしかないだろ。

あー!クソッ!どうしてこうなった!?




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