第2話 リザードマン

あー……


う〜ん……


えーっと?

つまり?つまりだ?

私はブロック塀に押し潰されて死んで、リザードマンに転生したと?


そういう系のラノベは沢山読んでるから分かる。分かるぞ。

これはアレでしょ?

人外転生ってやつ。


んで、この場所だけど……まあ、十中八九ダンジョンだよね?


・明らかな人工物

・謎に入り組んでる道

・モンスターが居る

 

うん。ダンジョンだ。

これでダンジョンじゃないよって言われたら、片手で逆立ちして100メートル走るわ。

……フラグじゃないよね?


「シュルルル(とりあえず、もう一回ステータス見るか)」


【名前無し

 リザードマン Lv1/30

 スキル 鑑定         】


う〜ん……

リザードマンかぁ…

いや、ね?

別に、私爬虫類とか両生類とか嫌いじゃないよ?

だから別にいいんだよ?


でもさぁ……リザードマンだよ?

デカイ人型のトカゲだよ?

これならまだゴブリンの方がいくらかマシだわ。

あのチビでブスで気色悪いゴブリンになるのはそれはそれで嫌だけどさ…

デカイ人型のトカゲになるよりはマシじゃね?


明らかに第一印象でアウトでしょ?

まだゴブリンの方が仲良くなれる可能性あるわ。

こんなの見たら世の中の女性発狂するよ?

男でも初めて見るのがコレなら、トラウマになるよ?


「シュルル…(リザードマンかぁ…)」


………あー!もう!!

ウジウジしてるだけ時間の無駄!


ダンジョンって事は、もしかしたら他のモンスターに襲われるかも知れない。

そんな時にレベル1の私じゃどこまで戦えるか…

こうやって無駄な事考えてる暇はない!

生き残る為に、レベルアップして強くならないと!


私は、吹っ切れてヤケクソになり、たまたま近くに落ちていた槍を拾う。


「シュルルル!…シュルル(リザードマンといえば槍!……なイメージがある)」


ダンジョンでは、モンスターが武器を持っていることは珍しくない。

そして、なんとなくリザードマンは槍を持ってるイメージがある。

つまりはそういう事。


「シュルルルル。シュルル?(初手で武器を手に入れたのは嬉しいなぁー。リザードマンも意外とアリかも?)」


武器無しでモンスターと戦えなんて無理な話だ。

確かに鋭い爪と牙があるけど…肉弾戦はリスキー過ぎる。

やっぱり武器がないとね!


武器を手に入れた私は、少し強気になってダンジョンを歩いて回る。

すると、数分で何やら動く影を見つけた。


「シュル…シュルルル?(狼…しかも、ただの狼じゃないな?)」


見た目こそ狼だけど、明らかにただの狼じゃない。

雰囲気が狼のそれじゃないし、体の色もおかしい。

緑っぽい体毛の狼とか見たことないもん。


「シュルルル(使うか、鑑定)」


私は、試しにあの狼に対して鑑定を使ってみる。

すると、


【名前無し

 グリーンハイウルフ Lv4/10

 スキル 風魔法 剛牙    】


見事に鑑定は成功し、狼のステータスを見ることができた。


『ハイ』が付いてるって事は、グリーンウルフの上位種か。

レベルは私よりも上だけど、上限レベルは私より下。

上位種なのがちょっと気になるけど…まあ、細かい事は気にしなさんな。


「シュルルル(殺るか、グリーンハイウルフ)」


私は、特に槍なんて使った事無かったから持ち方とかが変かも知れないけど、槍を構えながらジリジリとグリーンハイウルフに近付く。


そして、槍の届くところまで来ると、


「シュッ!」

「キャン!?」


勢いよく槍を突き出してグリーンハイウルフの体を貫く。

しかし、当然ゲームのようにこの一撃で倒せたりはしない。

攻撃された事で、私の事を敵と認定したのか、グリーンハイウルフは唸り声をあげながらこちらを睨む。


「シュルッ!!」

「キャッ!?」


情け容赦のない蹴りをグリーンハイウルフの腹部にお見舞いし、蹴り飛ばす。

すると、グリーンハイウルフは面白いように簡単に吹き飛び、壁にぶつかる。

その一撃で怯んだ事に気がついた私は、一気にグリーンハイウルフとの距離を詰め、両手で槍を短く持つと、脳天めがけて振り下ろす。


「キャッ――」


脳天を貫かれたグリーンハイウルフは、ビクビクと痙攣したあと動かなくなった。

……おそらく倒したんだろう。

さて、レベルはどうなってる?


【名前無し

 リザードマン Lv2/30

 スキル 鑑定       】


おお!レベルが1上がってる!

たった1レベしか上がってないのは少し残念だけど、多分私のほうが格上だから仕方ないね。

むしろ、格下を一体倒しただけでレベルが1上がったと喜ぶべきか…


私は、レベルが上がっていた事に対して大げさに驚く。

しかし、突然人外へ転生し、ステータスというモノがあって、初めてレベルが上がったとなれば、多少は大げさに喜んでもおかしくはない。

そう自分に言い聞かせ、この喜びを噛み締めた。







それからしばらくして、私は目に付くモンスターで、鑑定結果で倒せそうな奴を見つけると、とにかくそいつ等を襲いまくった。

グリーンハイウルフも当然居たけど、他にもエリートゴブリンだとか、ハイオークとか、ビッグラットとか、The・モンスターという感じの奴等がうじゃうじゃ居た。

そういうモンスター達を狩りまくった結果…


【名前無し

 リザードマン Lv12/30

 スキル 鑑定 槍術    】


いつの間にかレベルが12になっていた。

そして、ずっと槍を使って戦い続けたおかげか、槍術というスキルを手に入れていた。


この槍術、槍を使った……というか、習った事すらない私でも上手く槍を使えるようになるというとんでもスキルであり、普通にヤバイ。

常識的に考えて、スキル一つで素人が急に熟練者並の技術を手に入れられるなんて異常だ。

ラノベを読んでると『そういうモノ』と思いがちだけど、いざ自分がそうなってみると、スキルというモノのヤバさが分かる。


「シュルルル、シュルル(ありがたいけど、これじゃあ必死に努力してる人が報われないね)」


やはり、スキルというモノは都合が良過ぎる。

その都合が良いモノに助けられてる私が言えたことじゃないけど…

とにかく、ファンタジーのステータスという概念がいかにヤバイかと言う事がよく分かった。

そして、


「シュルルル…シュル?(もしかして私…強い?)」


明らかに上位種相手に善戦し続けている自分の強さ――リザードマンの強さを思い知った。

というか、ゴブリンに転生してたら、コレが敵になってたんだよね…


私、リザードマンに転生して良かったぁ。

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