第25話 誰かのいい人×拾う人

  最初、スマホのカバーが落ちているのかと思った。近付いて拾い上げたら確かな重みと共に画面が光る。

 誰かが落としたんだな。

 道が細いわりに自転車の通りが激しく、横は車が往来する大通り。私が持つ傘は強めの雨に叩かれてまぁまぁうるさい。

 つまり、物を落としても気付けなかった要素が重なっていた。


 先述の通り、スマホが落ちていたのは自転車の通りが激しく、結構なスピードを出していく。

 幸いにも地面に落下したスマホの画面にヒビはない。しかし、このまま自転車に轢かれれば、バキバキになってしまうだろう。私は善意で道の端にそっと避けて置いた。水没しないように水たまりから離れたところにしたので、これでよし。


 五メートルほど歩いて気付く。

 いや、普通に警察に届けたほうがいいな?


 スマホだし落とし主はすぐ気付くだろうから、落ちてた場所に残しておいた方がいいと思ったけど、電子機器を雨晒しにするほうがよくないし、次拾った人が売っ払う可能性も普通にある。

 Uターンで戻って拾い直した。


 少し遠回りになるけどいいかい。いや、聞くまでもないか。

 普段は通らない道に進み出して、ずっと隣にいた犬は尻尾を振り出す。良かったね、散歩ちょっと延びたね。私はすぐ帰りたかったけど、仕方ない。


 犬と暮らし始めて不思議な事に、落とし物を届ける回数が明らかに増えた。

 学校やら仕事やらでほぼ毎日外に出続けてたのは変わりないはずなのに。交番に届けるのも慣れたものだ。


 しかし、犬が拾ってくるわけでもないのに、こんなにも見つけてしまうのだろう。本当不思議だよなぁ。

 な、と隣の犬を見下ろすとお巡りさんに撫でられてニコニコご機嫌に舌を出していた。

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