第22話 舞い散るサクラ×卒業式の記憶
桜が咲くのは三月の終わりから四月の始まり頃。新学期や入学式の時期になる。卒業式の時期は、開花前の蕾だ。
私が小学校の卒業式の日、満開の桜が迎えてくれたのを覚えている。
開花時期がずれたのか、その一本だけがあわてんぼうで真っ先に咲いてしまったのか定かでは無いけれど、はらはらと散っていく花びらの中で下校した記憶が、美しい景色として大人になっても色濃く残っていた。
ひねくれた性格に育った私は、妄想を思い出にしてしまったのではないかと、記憶の捏造を疑った。
細かい部分は覚えてないけれど、散っていく花びらの中で五枚の花びらがくっついたままの花の状態で落ちたのを拾ったのを持ち帰ったのは覚えている。
卒業の思い出とするために、卒業アルバムの中に挟み込んだ。
なければ妄想だと、分厚いアルバムの中の寄せ書き部分にはぺったんこになった桜が綺麗に咲いていた。どうやら事実だったらしい。
またしばらく経って、母校が閉校する事になった。
大きな施設になる段階で、校舎前に咲いていた桜の行方もわからなくなった。
校庭にあった遊具は別の小学校に移されたので、もしかしたら桜も移されたのかもしれないけれど、あの卒業式の日に見送ってくれた桜は、思い出の校舎と共にいなくなってしまった。
桜の咲く時期に何度も思い出す。
校舎から校庭へ続く短い階段を下りながら、降り注ぐ花びらの中を潜ったあの日の晴れやかな気持ちを。
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