第21話 四葉のクローバー×息抜き
「ほら、見つけた」
丸く小さな手が草むらの中から迷いなくクローバーを一本摘む。
確実に探して、そこにはないと思っていた一角から四枚の葉があるクローバーが出てきた。
インチキではないかと疑うも、本物だった。すまぬ見知らぬ少年、私の心が汚れているせいであらぬ嫌疑をかけてしまって。
「いいなー。見つけるの上手で」
「欲しいならあげるよ」
「こういうのは自力で見つけたいものなんだよ」
もうすぐ大学四年生、あと一年で卒業だが未だに内定先はゼロで絶賛就職活動中だ。
今日も今日とて面接に行き、手応えのない結果を出して無気力になり、ふらふらと公園に入ってしまった。
春の日差しの温かさに癒されて、青々しい原っぱの中にふとクローバーの群生地を見つけ、願掛けを始めたのはつい先程。
幸運の印、四葉のクローバーを見つけたら、きっと良いことが起こる。なんの根拠もないけれど、悪い事続きなのだからささやかな幸運くらいは見つけ出したい。
そんな平日の真昼間、スーツのまましゃがみ込んでる私を、落とし物でもしたのかと声をかけてくれたのが小学生の少年だった。
四葉のクローバーを探してると伝えると、大人なのに? と怪訝な顔をしつつも、一緒にクローバー探しを始めた結果、四葉探しの才覚を発揮していた。私が見つけられないまま、彼は三つ目である。
「たぶんそのあたりには無いんだよ。四葉はまとまって生えてるって動画でやってたし、このあたりもう一回探したら?」
「すごいな、なんでもあるんだな動画。四葉探しすらあるのか……就職とかもあるかな」
「知らないけど多分あると思う」
結局、自力で四葉のクローバーを見つける事はできなかったけれど、幸福を見つけるのが上手そうな少年とのささやかな遊び時間は、肩の重みが少し軽くなる良い気分転換になった。
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