第20話 ブルームーン×××××

 ブルームーンと聞くと、青白く光る月が思い浮かぶが、本来一ヶ月のうち一度きりの満月の夜が二回やってくる事も含まれているらしい。

 滅多に見れない珍しい事。ブルームーンを見ると幸福になれる。

 それが現代の一般的なんだとか。


 元々は季節に三回だけくる満月の日が四回きて、その三回目をブルームーンと呼んでいたとか、なんだか色々とあるらしい。

 なんだか適当だなぁ。普通に青白く光る月でいいじゃないか。


「まぁまぁどちらでもよいじゃないか。人にとっては闇の中で見つけた青は特別美しく見えるものなんだ。手を伸ばしても届かないから、色々と取ってつけて特別なものとして、せめて名前だけでも付けておきたいものなのさ」


 無傷な人間には見えないそいつはそう笑っている。

 ぐちゃぐちゃになった街の中で、命尽きようとしている仰向けの人間を憐れむわけでもなく、普通に喋っている。

 ……なるほど。幸福かどうかは別として、めったに見れない珍しい事は充分起きているなぁと納得はした。


「そも、人の目が空を青く見るのは、空に舞っている塵の反射らしいからな。あれだけ各地で山が塵を吹き出したのだから、そりゃ青も映えるだろう。よかったなぁ、今は夜で。赤の映える朝であったなら、濁った青空になっていただろう」


 この国は、世界で四番目に活火山が多いらしい。

 そいつの言葉が正しいなら、どうやらここ以外の火山もいくつか同時に噴火したみたいだ。


 随分と恐ろしい事が地上で起きたとしても、空は神秘的な美しい月が見えるようだ。不思議な気持ちで瞼を下ろした。

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