第17話 美しい裏切り×昔のクラスメイト

「私たち、ずーっと友達だよね」


 その子はいじめられっ子だった。

 暗く、気が弱そうな性格だったため不幸にもターゲットされてしまったのだろう。席替えで隣になったのをきっかけに話しかけてみれば、そんなに悪い子でもなかったし、普通に接していた。


 そうして、今度のいじめのターゲットは私になった。理由は、その子の孤立の妨害をしたから。

 残念なことに私はおとなしいタイプではなかったので普通にやり返した。やめればいいのに、いじめっ子は一年間でヒートアップしていき最後は警察沙汰となり、受験に失敗して引っ越していったらしい。

 そんな争いの渦中、その子はずっと見て見ぬふりをし続けた。



 ところで成人する時、私は大人の先輩と呼べる親や親戚から口酸っぱく言われた事がある。

「学生の頃、そんなに仲良くなかったクラスメイトや先輩後輩から急に話があると呼び出された時は、宗教の勧誘か金の無心か詐欺だ。ショックを受けるかもしれないが、甘い顔をしてはいけない。安請け合いをするな、署名をするな。困ったら大人に相談する事、気を付けるように」と。


「私たち、ずーっと友達でしょ?」


 その子と同窓会で対面して、結婚式の招待状を手渡され私に友人スピーチを頼みたいという説明を聞きながら、その時の忠告を思い返していた。

 この場面での金の無心と詐欺の可能性はどういうものだろう。ブランド物を身に着けているから、貧乏ではなさそうだけど、連絡先も家の住所も知らない招待状も送れない相手に、何故友人スピーチを頼むのかわからない。もっと頼むべき相手がいるだろう。仲良し期間は一ヶ月、会話したのは十年以上ぶりだ。「昔ちょっとだけ仲良しでした」と晴れやかな場で言えというのか。

 まぁ、どちらにしても回答は一つだ。


「ごめん、今更距離を詰められても普通に困る」


 勝手に離れていったのだから、こちらだって勝手に離れるのが道理だろうに、いつまでも同じ場所で待ち続けるわけがない。


 その子に泣きながら「ひどい! 友達なのに! 裏切り者!」と詰られたけど、誰もその子を擁護しない。なんだかそれが、可哀想だなと少し思った。

 でも、また手を払われるのは嫌だし。裏切り者上等だ。

 一応大人として、「ただのクラスメイトとしか思ってなかった」と本音はビールと共に流し込んでおいた。

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