第13話 片道切符×異界

 学校に行きたくない。

 あんなに受験で頑張って入った学校だったのに、あんなに喜ばれながら入学したのに。ずっと楽しく通っていたのに。

 昨日、友達と喧嘩をした。

 喧嘩というか、友達が片想いしていた男子が私に告白してきたせいで、修羅場になってしまったというか。思い返しても、私が謝るのはおかしくないか? と考えてしまい、だからといって堂々と登校出来るほど鉄の心は持ち合わせていない。

 そんなこんなで、駅前でスマホを触って時間を消費していた。

 授業がとっくに始まっている時間だ。このままサボってしまおうかと悩みつつ、足は駅に向かっていく。ああ、生真面目な性質が悩ましい。

 このまま学校と反対の電車に乗ってしまおうかな。


「……ん?」


 人がほとんどいなくなった駅内の綺麗な床に、切符が落ちている。他に誰もいないから誰かの落とし物だろうと拾い上げるが、穴も空いてない。

 …………。もしかして使えるか?

 ちょっとした好奇心で改札に切符を通すと、ゲートが開く。まじかぁ。なんだか面白くって友達に写真と共にメッセージを送りたくなったけれど、喧嘩中だったなと思い出してスマホをしまった。


 学校に行きたくもないし、切符もあるし、行き先は反対方向だし、ちょっと遊びに行っちゃおうかなぁ。ICカードには二千円くらいチャージしてるし、戻ってこれるでしょ。

 駅は小さく、通っている線は一本、上下線のみ。改札を抜けて目の前の左右に分かれた上り階段を上っていけばいい。


 私は階段の真ん中にあるトイレに向かう。多目的トイレのハンドルを切符と共に握りこんで開けば、下り階段が現れる。

 軽い足取りで下りていくとホームが見えたところで電車の発車ベルが聞こえてきた。特に慌てる理由もないのに私は思わず駆け下りて電車に飛び乗った。


 扉が閉まり、電車が走り出す。ふぅ、とひと息ついたところで、違和感に気付く。

 ……いや、何で多目的トイレのドアが階段の扉になっているんだ?

 このあたりは地盤が緩いから地下鉄が作れないはず。

 切符を拾った瞬間から、ここの電車に乗るのが当たり前だと思って、ごく自然にここまで足を運んでしまったけれど、私はどこに向かっているのだろう。


 手元の切符を見る。

 行き先には『彼方』と書かれている。


 電車の外の光景は地下特有の薄暗い壁。何故か色とりどりの鉱石が埋まっていて光源になっている幻想的な光景に、私は不安と高揚を覚えた。

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