第12話 キラキラビーズ×子供の宝物

 それは、砂の中に埋まっていた。

 砂場の中で見つけた不自然な青い色の光、絶対に不思議な何かだと思って軽く掘り返した時に出てきたのは、もうすぐ舐め終わる飴玉みたいな小さな青く透き通った玉だった。

 宝石に違いない。水道で水洗いをして大事に大事に、誰にも見つからないように持ち帰って、学習机の奥深くに隠した。




「まぁ、うん。宝物には違いない」


 古いものではあるが、重く頑丈な作りだった良い学習机が、このたび兄の子、甥っ子に受け継がれることとなった。

 表面に着いた埃は定期的に掃除して清潔を保っていたが、引き出しの中は時を止めたように学生時代の思い出が雑多に放り込まれていた。当時は高級品に思えた五百円のシャープペンシル、大好きだったキャラクターものの文具、くたくたになった教科書、遠い昔のように感じる数年前の日付が印字されたプリント。

 思ったより真面目に勉強をしていたのだなと思いを馳せている中で見つけた、丸められたティッシュ。一見ゴミに見えたけれど、ふとその感性に違和感を覚えた時、遠い記憶が蘇る。


 かさかさになったティッシュを広げ、中に隠されていたものを取り出す。

 何の変哲もない、ただのビーズだ。

 宝石のようなカットを施されていてキラキラと光るそれは、アクセサリーのトップとして使われても遜色ないまぁまぁな大きさはある。ただのガラスだ。


 思い出してしまった手前なんだか捨てるのはもったいない。だからといって、ビーズの有効活用など思いつきもしない。

 せっかくなので、綺麗に片付け終わった引き出しの奥に再び隠すことに決めた。

 甥っ子があの頃の自分のように、何かが始まるような高揚感を持ってくれたなら、そんなに悪くはないだろう。

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