第11話 ウザイけどかわいい×勧誘マスコット

「うっうっ、魔法少女になっておくれよ~君が魔法少女になってくれないと、世界がパンチでポンチなんだよ~」


「ボケが雑だしセンスがねぇし俺は少女じゃねぇ」


「えっ、そんな事を心配してたの!? なら大丈夫だよ~そのあたりはボクの魔法できゃるるんプリティーガールに変貌させるからぁ~」


「嫌だ」


 俺の周りをふわふわうろちょろしているのは、近年異世界からの侵略者としてやってきたジャアクと名乗る怪物たちと戦う使命を持った妖精『イレブン』の一員、らしい。

 らしい、としか言いようがない。ジャアクという怪物たちが暴れているのは東京で、俺が住む北の大地には全くといって良いほど影響がなく、テレビのニュースの出来事でしかない。

 クマとネコを掛け合わせたようなスクイーズ触感のそいつは、不満そうに口をへの字にしている。


「むぅ、なんでそんなにいやいやなの。魔法少女ってみんなのあこがれなんでしょ? それともあこがれはヒーロースーツのほうだった? 君のお腹じゃ似合わな……ぴゃぐ! やめて! 揉まないでぇ~!」


 俺は普通に会社員としての生活もあるのに、東京の外側ですら平穏である現状から世界を救うため(笑)に何もかも捨てて上京するメリットなど一切ない。

 何故かこのイレブンの一員は、俺に力を与えるから戦ってほしいと、ずっと勧誘をし続けている。かれこれ一年ほど。


「こんなにも一生懸命おねがいしているのに。うっうっ、どうしたら君は魔法少女になってくれるの?」


「俺は今の生活で満足してるし、世界を守る理由もないの」


「そんなぁ……」


「そんなに魔法少女になってほしいなら、俺以外の奴に当たればいいだろ。東京のほうに行けば、本業の合間でやってくれるやつも見つかるだろ」


 白い耳をしゅんと垂らして、そいつは俺の方にしがみつく。


「でも、ボクが離れている間に君にもしもの事があったら、ボクは何にもしてあげられないじゃないか。君がたたかわないといけなくなる時、ボクは君の力になりたいんだよ」


「だから、そういうことしねぇって」


「ううん、きっとする。たたかわないといけなくなったら、君は逃げない」


「ばーか、俺はそういう時は真っ先に逃げるタイプだよ」


「むごー!」


 人差し指と親指でそいつの顔を挟むとおもちゃみたいな悲鳴を上げる。

 今日も俺は魔法少女にならないし、このうざったくも可愛い生物と共に、変わらない日常を過ごすのである。

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