第6話 夢でも会いたい×恋人は夢魔
「やっほー、会いに来たよー☆」
「いやいやいやいや、まるで意味が分からんぞ!!」
私は夢を見ている時、「あ、これは夢だな」とわかるタイプだ。何故かというと、全部モノクロだから。灰色の空と白い太陽の下、現実の視界とあまり差異はなく、現実よりも少しだけ身軽に歩き回れる。それが、私が眠る時に見る夢だ。
そんな夢の中、目が痛くなるような鮮やかさで現れたのが、私の恋人。
年下で、人当たりが良く、爽やかな笑顔が似合う、可愛い後輩であり、自慢の恋人。
頭には羊のような立派な角、背中からは蝙蝠のような羽、腰あたりから伸びる細長い尻尾、ぴったりと体のラインが出る服……否、もはやインナーしかつけていない状態で、現れてしまったらもう絶叫するしかない。
いかん。どう見てもアレだ。アレすぎるコスプレだ。
夢の中とは言えアウトすぎる! 何故カラフルなんだ! まるで本当にそこにいるみたいじゃないか! おのれ私の想像力、いい仕事しやがって!
「付き合って二週間でこんな妄想をするなんて、私はそんな欲求不満なのか……?」
「……なんか思った反応と違うなー」
自己嫌悪で蹲る私の目線に合わせるように、後輩も体を縮める。
小首を傾げながら「夢でも会いたいって、嘘だったの?」と拗ねた声音でなじってきたので、一応首は横に振る。
「断じて嘘ではないが、そういうのは『こういう夢見た!』っていちゃつくための口実なんだ! こんな形で会ったとか口が裂けても言えん! もうちょっと深めの仲じゃないと無理だ! くそっえろい恰好しやがって! ありがとう!」
「どいたまー☆ 別に起きてる時に言っても引いたりしないのに。まっ、お堅い先輩の劣情を煽れたなら、僕としては安心したというか、」
とってもやる気がみなぎってきたよ。
そう言って後輩は蠱惑的に微笑みながら舌なめずりする。何故か悪寒が走った。
「あはっ、心配しないで。僕はちゃんと本番は現実でしたいタイプだから、寝てる間に気付いたら終わってたとか、そういうのはしないよ」
でも会いたいって言ったのは先輩だから。
獲物を捕らえた紅い目が妖しく愉しそうに細められ、毒を流し込むように甘い声が耳に流し込まれる。
「これから毎晩、先輩の現実がめちゃくちゃになるくらいの、最高に幸せな夢を見せてあげるね」
――――
はたして先輩は男なのか女なのか、後輩夢魔は男なのか女なのか。
どちらだったでしょう!
正解はお好みなほうで!
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