第4話 君が遊びでも僕は愛してる×テディベア

「あぁ、おうじさま! わるいまほうつかいにつかまったわたしをたすけて〜!」


 おやおや。小さな小さな、僕だけのお姫様。どうやら楽しんでいたアニメに多大な影響を受けてしまったのですね。

 君より大きくて毛むくじゃらの僕は、どちらかといえばわるいまほうつかいの部下のほうが似合うと思うのですが、僕がおうじさまでよろしいのでしょうか。

 ああ、僕だけのお姫様、僕のお腹で飛び跳ねないで。




「あのね、学校でいじわるしてくる男の子がいるの。ほんっとうムカつくー」


 おやおや。久しぶりですね、小さな僕のお姫様。

 また知らないうちに大きくなって……もしかして僕より背は高くなっているかもしれませんね。でも君の手足は僕と違って細くて長いから、まだまだ小さなお姫様に変わりありません。

 学校で嫌なことがあったのは残念でしたね。

 でも、久しぶりに君に抱き締められて、僕はとても嬉しいです。また泣きたくなったら、抱き締めてください。いつでも、いくらでも君の涙を受け止めますから。





「キス、キスってどんな感じなのかな……こう、ひゃー!」


 おやおや。どうやら僕のお姫様は誰かに恋をしているらしい。

 嬉しいことも悲しいことも、聞いてくれる万能な板のおかげで僕は部屋の隅っこでお姫様の声に耳を傾けるだけ。まぁ、飾りではありますが。

 キスの練習相手も僕ではなく枕でやっているのは、少しばかり寂しいですね。








「――……うーん、まぁ、確かにお気に入りだったけど、持っていくにはさすがにね。大きすぎるし、埃もすごいし」


 ああ、僕のお姫様。

 しばらく見ない間に立派なレディになられましたね。まるで君のお母様のようです。お隣の男性は、君の王子様でしょうか。

 ふふ、どうやらお役御免の時のご様子。

 いやいや、こんなずんぐりむっくりした熊のぬいぐるみに、最初から王子様なんて大役は不適任でしたからね。


 僕は、君のよき遊び相手であったでしょうか。

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