第3話 初めて履いたハイヒール×ショッピング
ヒールの高い靴は苦手だ。
普通に歩きにくそうだし、足を痛める様子も見てきた。ビジネススーツに合わせる靴は低い電子レンジの足みたいなヒール一択、普段もスニーカー、夏に大活躍のサンダルも靴底がぺたんこした物を愛用している。
ああいうものは、おしゃれな人たちが気合を入れるために履くものだ。すらりとした足元を見るたびに憧れと共に見送ったものだ。
「やはり7センチが一番綺麗に見えますね」
そんな私が今、少しいい靴屋でいつもより値の張るハイヒールを試着していた。
清潔感のある綺麗な店員さんに、こういった買い物は初めてで……と恥を忍んで助力を求めれば、あれよあれよと上品な靴を薦めてくれた。
もちろん、ローヒールが良いと先に言った。出来れば、と低姿勢ではあるが。
日頃から地面と水平に歩いている身からすれば、3センチでも角度がつくと地面から浮いたような不安感を覚える。しかし、そんな低い靴は安定性よりデザイン性を優先される店には多くない。むしろ無い。
「いいじゃん、似合うよ似合う」
同じ目的で一緒に来店した友人の言葉に私は少しだけ浮かれてしまう。一目惚れした靴が合うと言われてしまって、じゃあやめとく、となるのはほとんど無いだろう。
予算より少し高め、ヒールも高めのシャンパンゴールドのハイヒールパンプス。
「途中でこけたら笑っとくいて」
「笑っとくわ」
学生の頃からの友の結婚、私にとって成人してから初めての結婚式。
全く同じ状況で共に参列する友人達と、一から当日の装備を揃えていた日が、私にとって初めてハイヒールを手に取った日。
7センチが一番綺麗に見える、というのが本当なのか定番の営業トークなのか未だにわからないけれど。
成人してもハイヒールに尻込みしてた私を一押ししてくれた。今もなんとなく忘れられない勇気の言葉。
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