第2話お母さん

まだ、現役で働いている。70手前だが、介護職歴40年なので、今は指導者の様な立場にある。

また、若い頃、ヒアノを弾いていたので、レクリエーションではピアノを弾き入居者の耳を楽しませている。

そのお母さんは苦労している。

農家で負った借金を未だに返済している。月5万円ずつ。

僕は高校時代、父親があんな性格だったから、母親に八つ当たりしていた。

直ぐに母親に手を出した。肩を殴ったり、太ももを蹴ったり。

ある日、母親が風呂に入ろうとして、ズボンとTシャツを脱いだ身体を見た。

すると、肩や太ももに青アザがあった。

それを見た僕はいたたまれなくなり、それから手をあげることは辞めた。僕は最低な息子であった。


それから、母親は平日は仕事、夜勤明け、休みは農業をしていた。父がお母さんを休ませる日はなかった。

疲れが溜まった母親は、居眠り運転で単独事故を起こした。

幸いケガはなく、車だけ廃車になった。

そういう母親は、たまにパチンコを打つのが趣味である。

1万円負けた自分をせめていた。ならば、始めから打たなきゃいいのだが、たまに大勝ちする事があるので辞められない。

僕が帰郷し、また名古屋に戻る日に午前中パチンコを母と打った。僕は1万円勝ったが母の姿が見えない。

探すと車の中にいた。

母親は泣いていた。3万円負けたらしい。

僕は、3万円負けただけで犯罪を犯したの如く自分を責めていたので、かわいそうだから2万円渡した。

それで、収まったがあの時の母の姿は忘れられない。


時が過ぎ、現在母は僕と同じマンションに住んでいる。夜ご飯はほぼ毎晩、母の家で食べる事になっている。

安否確認のようなもの。

お互いの身の確認である。母の1日の話を聴くのが専ら。

僕は酒を飲みながら聴いている。

母は、マグロの刺し身を白ご飯で食べるのが大好きだから、たまにスーパーで刺し身を買って帰る。

父親の分、長生きしてもらいたい。

早く、転職して母を金銭面で楽させてあげたいのだが。

後、1年頑張って欲しい。それまでには、転職するので。

僕は母の苦労を知っている。だから、母親孝行しなければバチが当たるだろう。仮にも昔、青アザを作ったバカ息子だ。

元気な今、借りを返さなくてはいけない。まずは、転職して母の借金返済の手伝いんをしたい。それから、暖かくなれば近場でいいから、旅行に連れて行きたいものである。

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