第69話 可愛い後輩

今日のリアルは最悪の一日だった。

だが、そんなことどうでも

よくなるくらいに

東雲アリサさんが可愛い。


今回は初のコラボということで

雑談配信を選んだのだが、開始早々で

東雲さんのあざとさに俺は

振り回されていた。


「アリサって呼んでください。

せ・ん・ぱ・い」


あああああああああ!

な、何だ!? 

なんでこんなに可愛いんだ!?

ただでさえ、初の後輩だから

可愛がりたいのに、こんなにもあざといと

コロッと騙されそうになる。


お、落ち着け……


「い、いや……俺は騙されないぞ!

他の人にもそうやって

言ってるんでしょ!?」


「バレちゃいましたか~」


そうやって素直に

認めるとこもなんかあざとい。


「俺はそういうの分かっちゃうからね」


だから、そう簡単には落とされ


「なら、次はバレないように、

先輩のこと落としちゃいますね」


直後、ヘッドホン越しに甘い吐息が

聴覚を襲う。


「……」


あまりの衝撃に言葉を失う。


ま、マジか。


今……

ほんとで落とされそうになったぞ。


「オオカミン先輩どうしたんですか?」


「あ、い、いや」


やばい。

配信中なのにドキドキする。

言葉が上手く出てこない。


「アハハ! 先輩きょどってる!」


く、くそ……初手舐められた……


「べ、別にきょどって」


「そういう可愛いとこ。

全部暴いちゃいます」


「あ、落とされました」


「え?」


「もうギブです。

東雲さんに落とされました」


「やった!!

オオカミン先輩攻略ですね!」


やっべええ……

この後輩……本当に可愛すぎる。


「じゃあ私に落とされた罰として

私のことアリサって呼んでください」


「……アリサ」


「オオカミンせ・ん・ぱ・い」


もうあの平手打ちしてきた

後輩なんてどうでもいいや。


この可愛すぎる後輩がいるからね。



────────────────────


翌日の放課後。


いつもなら速攻帰宅している時間だが、

俺は未だに学校の校庭にいた。

体育用のジャージ姿で。


これから地域の人と学校の生徒合同で

町内のごみ拾いがあるのだ。


完全に自主参加のイベントなのだが、

年々参加者が減少しているのもあって

帰宅部である俺に教師から命令が下った。


時間があればと言われたが、

その言葉に拒否権はない。

絶対参加の圧がある。


「はあ……めんどくさい」


周りを見ても生徒会と

野球部、サッカー部、あと俺のような

帰宅部しかいない。


自主参加の人など誰もいない。


故に、ぼっち。


こうなったらボッチーズ招集するか。

皆元気にしてるかな……


にしても辛いな……

巨大な三つのグループに

その輪に入れない帰宅部たち。


「よーし、皆集まれ」


教師のその号令にカチンとくる。


集まっていただけませんかだろうが。

こちとらボランティアだぞ。


卒業したらこの高校の口コミ

評価0にしてやる。


いら立ちを感じつつも、

俺は大人しく集合した。


「げ……」


そのとき、隣に並んでいた

サッカー部の女子生徒が絶句した。

ちらっと見ると唯だった。


なんだお前かと俺はすっと目を外す。


何やら一歩下がって

気持ち悪がっているが、

もうどうでもいい。


この女子生徒が気持ち悪がっていようが、

なぜここにいるのか。


こんな後輩がいなくても、

俺には可愛い後輩がいるからな。


「えーではこれから四人の班になって

ゴミ拾いをしてもらう。

班はこっちで決めた。

名前を呼んでいくぞ。

えー1班。

南、武田、健児、尾形」


うわもう最悪。
















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