第66話 後輩

【去年の8月下旬】


マリア 登録者数 368000 平均同接 6800


ネオ 登録者数 559000 平均同接 9000


オオカミン 登録者数 726000

平均同接 13000




【今年の4月中旬】


マリア 登録者数 540000 平均同接 8000


ネオ 登録者数 691000 平均同接 10000


オオカミン 登録者数 902000

平均同接 15000


目まぐるしく変化していく

Vtuber業界。


その中でもレインボー、ドリガルに次ぐ

人気を集めるブイライブ。

そのメンバーはたった3人と少数だが、

同接、登録者数共に高く、彼ら三人は

Vtuber界隈の中で確固たる

地位を確立していた。


その理由としては個々の

面白さ、キャラクター、ルインの

リスナーが流れた来たことなどが

挙げられるが、最も大きな要因が

ブイライブメンバーの仲の良さだ。


それがまるで家族のようで

多くのリスナーが虜になっている。


だからこそ、その三人の中に

新メンバーが三人追加されると

なって、ブイライブを推している

リスナーたちは注目していた。


これがブイライブにとって

追い風になるか。

はたまた、ブイライブの仲の良い

雰囲気を壊してしまうか。


『待機いいいいい!!』

『見た目めっちゃ好き!!』


そんなリスナーたちが不安と

興奮の入り混じった目で見つめる中、

ブイライブ二期生一人目の

配信が始まった。


「皆さん初めまして!

ブイライブ二期生の

東雲(しののめ)アリサです!」


茶髪のショートヘアーに

赤いメッシュ。


ぱっちりお目目に、

肩口を出した今どきの

若い女子の洋服。

右耳につけたピアスがきらりと輝く。


『声可愛い!』


そのはきはきとした若そうな喋り方に

リスナーたちが盛り上がる。


「はあー緊張する~

お水飲んでもいいですか~?」


その甘えた話し方に

男どもの心が鷲掴みにされていく。


「よ~し。じゃあ早速、先輩方に

アリサの自己紹介させていただきますね」


『先輩?』


「あ! ごめんなさい……

アリサ、元々異世界のルナーノ学園って

学校の一年生だったから……

人のこと先輩って呼ぶのが癖に

なっちゃってて……

リスナーさんのことも

先輩って呼んでもいい?」


『いいよおおおおおおおおお!』

『先輩です』


そのあざとい言葉に

リスナーが発狂していく。


「えへへ。

たくさん先輩ができちゃった!」


もう多くの者が気づいているが、

アリサは後輩キャラだ。


可愛らしい声にあざとい口調。

敬語とため口を巧みに扱い、

男たちをドキマギさせる。


この後輩のような言動がブイライブの

二期生に合っていると面接官が判断し、

1000倍の倍率を突破した。


男どもの『理想の可愛い後輩女子』を

完璧に演じる東雲アリサ。


一部のリスナーたちの

「ブイライブの雰囲気が

壊れるんじゃないか」

という不安を一瞬でかき消し、

期待を軽々と越えてしまった。


「どうしてブイライブに

入ろうと思ったんですか?

それは勿論、ブイライブが

大好きだからです!」


そして、このブイライブに対する熱量。


「ネオ先輩はかっこよくて、

頼りになって、けどちょこっと

ポンコツなところもあって

凄く可愛かっこいいですよね。

マリア先輩は優しすぎる

保育士みたいな感じがして、

もう一度生まれ帰れるなら、

絶対マリア先輩の子供に

生まれたいです!

オオカミン先輩は真面目で

いじられキャラみたいなところが

あるけど、やるときにはやる人で、

たまに頭のネジが外れた行動もするから

凄く面白い人ですよね!

アリサ、本当にブイライブの先輩方が

大好きです。

だから、先輩方とコラボできる日が

凄く待ち遠しくて」


こんなにもブイライブを

愛してくれる者が二期生なら誰も

文句は言わない。

東雲アリサこと、

尾形唯は15歳という若さながら、

二期生として最高のスタートを切れた。


配信が終わった後、唯は東雲アリサ用の

トイッターで初配信の感想とお礼を

トイートした。

そのトイートに、


【ようこそブイライブへ。

今日の配信よかったわよ。

アリサとのコラボ楽しみにしてるわ】


(わあああああ!

嘘! ネオ先輩からリプ来た!!)


『ネオ先輩だ!

ありがとうございます!

コラボ誘いますね!』


【アリサちゃん見てたよ~

私でよければママになってあげる~】


(マリア先輩からも!?)


『マリア先輩……

お言葉に甘えてバブらせて

いただきます』


続々と届く憧れのブイライブ

メンバーからのリプに、

唯は興奮冷めやらない。


【初配信お疲れ様でした!

分からないことがあったら

何でも言ってください!

これから一緒に

頑張っていきましょう!】


「きゃあああああ!!

オオカミン先輩だ!」


今度は心の中ではなく

普通に叫んでしまった。


(な、何て返そう……

気持ち悪くならない程度に……

けど、冷たくならないように)


『こちらこそです、オオカミン先輩!

優しい……たくさん頼りますね』


送信。


(ああああああ

ちょっとあざとすぎかな!?

気持ち悪いって思われてないよね!?)


唯は自分で後輩キャラにしたことを

後悔しつつも、これからの

ブイライブメンバーとの絡みに

ワクワクしながら眠りについた。










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